代金支払いはちょっと待って!

代金をお支払いになるのは、ちょっと
待ってほしいです。
不動産の売買においては
契約しただけで登記もまだなのに
お金を全額支払ってしまうのは
少し問題があるかもです。
ランチ代とか、本を買うとか、せいぜい
車検費用とかを前払いしたところで
大した問題は生じないかもしれません。
ところが、不動産の売買代金は、
どんなに低廉だとしても数十万。
多くの場合は
数百万円という金額になるのですが
これを
気前よくポンと支払ってしまう方が
おいでなのです。
登記書類も受け取らず、へたをすると
売買契約書も作ってないのに
銀行振込だから領収書はもらってないとか
驚くような発言を耳にします。
契約書があれば、振込がされれば
不動産の代金だということを推測できますが
契約書がなければ
これはあそこの土地の代金だと主張しても
後日問題になる可能性があります。
本当に契約書がないのであれば
領収書に「どこの土地の売買代金の全額」
というような記載をしておくべきでした。
日々登記業務に携わる身としては
あり得ないことなのですが
登記用書類も預からずに
お金はもう払いましたけどそれが何か?
という方が、気のせいでしょうか 近頃
増えたような気がします。
それも
本来よりも先に支払ったという感じではなく
売買の合意=契約成立=代金支払い
という図式のようです。
あたかも
ランチ代とか本を買うとか
車検費用を支払う感じです。
それらと決定的に異なるのは
不動産を購入するということは
今だけではなく将来にわたって
所有の状態が継続するということです
食べ物と異なり
すぐに消えてしまうものではありません
しかも、所有している限り管理も必要で
税金も課せられるし、さらに
手放すときは、それなりの対価が得られる。
そもそも資産というか投資目的で
購入する人も多いものです。
それなのに
登記をしないでいるというか
登記を考えずに代金全部を
支払ってしまうのは
危険が大きすぎるような気がするのですが。
不動産売買には、登記が必要
必要というか、法律で
決まっているわけではないですが
登記をしないことの不利益があまりにも
多すぎるので
必要といっても過言ではないです
登記をしないでいることのメリットは
2つだけ。
・固定資産税が課せられない
(登記簿上の名義人に支払い義務があるので)
・その不動産を買ったことが誰にもばれない
これだけです。
登記をすることのメリットは
・所有者であることを公的書類
(登記簿)で証明できる
・同じく、課税台帳にのるので
納税の事実も証明できる
・売主に対しても、第三者に対しても
所有者であることを主張できる
・貸すときも、売却するときも
不動産を担保に借金をするときも
所有者として登記されているので
スムースにことが運ぶ
・死亡したとしても
その不動産が遺産として存在することが
明らかである。
でもしかし。
そのように
登記と代金の支払いは同時履行であるべき
という説明をしたあとで
数日後
やっぱり心配なのでお金は先に
支払いました!
という電話が来ることも
けっこうあります。
法的な安全よりも
お金を支払って一刻も早く自分のものに
したい、という気持ちの方が
勝ったのでしょう。
その気持ちはわかりますけど。
賢明な判断とは言えません。
登記は自動的にはなされない
たとえば人が生まれたら、役所の窓口で
出生届を提出することによって
戸籍に記載されます。
登記もよく似ています。
必要書類をそろえて、申請書を作成して
役所に提出する。という流れは同じです
ただ、不動産の登記の方が、少々
面倒です。
そろえる書類が多いというか。。。
どのくらい面倒かというと
出生届はおそらく当事者が作成して提出することがほとんどですが
登記については、ご本人による申請は少数です。
登記所に手続き相談に行っても多くの方があきらめて
司法書士にご依頼くださいます。
それくらい面倒な手続きです。
お金を全額支払ってしまった方の中には
それでも不幸中の幸いというか
お金と引き換えに権利証(登記識別情報通知)
だけは預かってきたとか
印鑑証明書だけは貰って来たという方が
おいでです。
まあ、ないよりは良いかもですが。
それだけでは、とうてい
所有権移転登記はできません。
他にもいろいろと書類が必要なのです。
権利証は預かりました。
また
権利証を預かったから大丈夫
安心してよい、ということは
全然ありません。
おそらくそのことで、不動産の権利を
手中にできたというお気持ちでしょうか
あるいは、これがあるだけで
所有権の移転手続きが可能とお思いなのかも
しれません。
ひょっとして権利証さえ預かってしまえば
売主が万が一悪い人であっても
他の人に売り払う恐れがなくなる、と
勘違いをなさっていませんか
1 権利証だけでは、登記は絶対に
できません。絶対に!です。
2 一方、売主(悪い人だった場合)は
権利証がなくても、その気になれば
他の人に、二重売買することが
可能なのです
ほとんどの場合は
売主さんがお金だけもらって
あとの手続きに協力をしない、ということは
まず、考えられないことです。
実際、過去30年の経験上、こうした場合に
売主が協力を拒んで裁判になった、
ということは、幸いなことに
一度もありません。
おそらく本当にご存じなかったのでしょう。
仲介業者もいなくて、さらには過去に
不動産売買の経験がなかったとしたら
登記のことに思い至らないのも
当たり前かもしれません。
裁判沙汰にはなったことはないですが
ですが
売主さんが死亡してしまったことは
あります。ご本人と話はできていて
書類のご案内等をしていた矢先の
まさに突然のことでした。
幸いなことに、相続人の方が
その不動産売買について被相続人から
聞かされていた、ということだったので
時間はかかりましたが、最終的には
無事、買主さんの名義にすることが
できました。
同じように
売主である会社が
清算結了してしまったということも
ありました。
こちらも、結了登記がされていましたが
残余財産が判明したということで
元監査役の協力を得て
買主さんの名義にすることに
成功しました。
これらは、たまたま運が良かったというか
本当にラッキーでした。
もしもこれで運が悪かったら
ひどいことになったことは必定でした。
ご先祖様の加護があったと思われます。
これとは少し違う話ですが
亡くなった親が買ってあった土地の名義が
まだ売主のままなので
こっちの名義に変えたいが
売主の方も亡くなってしまった。
相続人に話をしに行ったが協力してもらえない
どうすればよいのか?
というご相談をお受けすることがあります。
実はこのパターンのご相談は多いです。
ほとんどの場合、相手方(売主)の相続人は
売買の証拠を見せてください。
もちろん、それがあれば協力します。
と言ってくれてるわけですが
ところが、契約書も領収書も何もないのです
何もなくても、生前、そのような顛末を
聞かされていたら、ハナシは違って
くるのでしょうが、
このような状態で、
はい、そうですか。協力します
という返事がもらえないことは
残念ですが、明らかです。

千葉県茂原市の司法書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験30年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。