夫婦で遺言をする

夫婦で遺言作成するなら、ここに注意が
必要です。
子どものいないご夫婦から
妻にすべてを遺す、という遺言書を
つくっておけば、兄弟たちにハンコを
もらわなくてもよいと聞いたが本当?
というご相談を受けました。
まさに、その通り。
まだお若い方でしたが
このくらいお元気なうちから遺言書の心配を
しておけば、奥様も安心だな、と
思いました。
遺言なしで死亡したときは
複数の相続人がいる場合は
遺産分割協議を経て、その遺産の去就を
決定することになるわけですが
親たちが既に亡くなっていて
子どももいないご夫婦の場合は
ご夫婦のどちらかが亡くなった時は
相続権があるのは
配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹
とされています。
法定相続分は、配偶者が4分の3
残りの4分の1を兄弟姉妹で等分にします
兄弟が3人いたら
それぞれ12分の1ずつ。
被相続人の兄弟姉妹と連絡が取れれば
分割協議にはさほど問題はないのでは?
だとしても、たとえば
遠方に住んでいて会ったことがない
とか
実は兄弟達は昔から仲が悪かったなど。
実際には親戚関係が良好とは言えない
状況のことも多々あります。
また、被相続人がお元気なうちは
交流もあり、それなりに力関係のバランスが
とれていたりするものですが、
亡くなってしまうと
のこされた配偶者と被相続人の兄弟は
しょせんは他人ですから
生前はあんなに行き来があったのに
遺産の相談をしようとしたら
ひどい扱いをされた、というようなハナシも
聞きます。
そこまで悪い関係ではなくても、単純に
兄弟が既に亡くなっていてその子どもたちが
外国にいる、などは
近年特に多く聞かれるものです
こうしたときは
その子どもたちも相続人なので、まずは
その人達と連絡をとって
事情説明の後に
遺産分割協議をして
その協議書に
サインをしてもらい
更に役所(現地の日本領事館など)から
サイン証明書を取得して
もらう必要があります
そのようなわけで、関係性の薄い親戚から
運よく承諾をもらえたとしても
手続きが煩雑であることは間違いありません
遺言書があれば!
そうしたときに、妻にすべてを遺す
という遺言書さえあれば
その他の相続人の承諾はいらないわけです
ですが、ご注意ください
片方だけ(例えばご主人だけ)の遺言では
片手落ちというものです。
亡くなる順番は決まっていません。
奥様が先に亡くなってしまったときに
奥様がまったく財産をお持ちでなければともかく
預貯金などをお持ちであれば
子どもがいないときは
ご主人だけではなく奥様の兄弟にも
相続権があります。
その時にスムースに手続が進むように
奥様も遺言を作成しておきましょう。
夫にすべてを遺す、という遺言です。
公正証書遺言がよいです
公正証書遺言がいろいろな意味で
便利なので、お進めです。
自筆遺言書では必須の
遺言書検認手続きもいりません。
偽造では?
とか
あのときはもう認知症だったはず
などの
遺言書の成立について物言いがつくことも
非常に少ないです
遺言書の検認
相続人全員の戸籍と住所を添付して
管轄の家庭裁判所に申し立てをします。
検認のなされていない遺言書では
遺言の執行はできません
~不動産の名義を変えたり
預貯金を解約したり~
検認期日には、相続人全員が
呼び出されます
もしも全員が出席しなくても
期日は開かれます
この検認手続きが公正証書遺言には
不要なのです。
遺言書偽造が疑われることも
自筆遺言書の場合は、ままあります
公正証書遺言の偽造も
不可能ではないでしょうが
あまり聞いたことはありません。
また、
作成時の遺言能力が問題とされることも
ありますが
公正証書遺言であれば
公証人がそのあたりの確認を厳重に行うので
この遺言が無効とされることはほぼ
(100%ではないにしても)
ありません。
でも自筆遺言で!
が、でも、もしも
どうしても時間がなくて
自筆遺言をするとしたら
2人で一緒の遺言書はダメです。
すべてが無効です。
遺言の形式的要件を満たしていないからです。
(共同遺言の禁止)
民法975条
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
ただし、容易に切り離せて
それぞれ独立して形式的にも問題がなければ
OKという判例があります。
ですが、わざわざそこまでしなくても
別々に書けばよいだけです。
公正証書で作る場合は
この心配はないですが
ご自身で書くとなるとついつい
やってしまいがちなのでしょう。
自筆で全文(財産目録は除く)を
書くのは
けっこう、重労働ですから。
腱鞘炎になる人もいるくらいです。
それにしたところで、時間がないのならば
遺言がないよりは全然良いです。
自筆遺言をどうぞ。
遺言書
私は妻の理恵子に遺産のすべてを相続させる。
2025年5月29日 片山えり蔵 印
遺言書
私は夫のりえ蔵に遺産のすべてを相続させる。
2025年5月29日 片山理恵子 印
ご健闘をお祈りします。

千葉県茂原市の司法書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験30年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。