本人の確認に出向く

本人の確認に出向く司法書士
失敗もあり。
本人の意思確認に出張する
決済当日は立ち会えないので
前もって書類を預かりに来てほしい
と頼まれることがあります。
このようなご依頼はコロナ渦あたりから
一気に増えました。
おそらく
「そんなわがままは言ってはいけない」
と思っていた人たちが
「こっちが行けないなら、向こうに
来てもらえばいいじゃないの」
と気付いたものと思われます。
そうなると
ご本人が入院入所している高齢者施設や
病院やサービス付き高齢者住宅などまで
出向くことになります。司法書士がそこで
書類の預かりと本人の意思確認を
行います。
代理の方か、仲介業者さんから
「判断力はしっかりしてるから絶対大丈夫
会って確認してください」と言われて
出張します。
かなり遠くでもご依頼があれば
(出張手当を頂戴します)出向きます
湯治中の温泉宿(!)まで足を運んだことも
あります。
ところが、せっかく遠方まで出かけても
肝心の意思確認ができなかったことが
少なくはないのです。→(失敗の巻)
特に、開業して間もない頃は
依頼人の言葉を鵜呑みにしていたので
意思確認できる前提で
面談に行ったものでした。(これが敗因)
ところが
意思確認どころではない状況の人も
一定数おいでで
帰り道で空しく空を仰ぐ、という
悲しい思いをしたことも二度三度では
ききません。
そうしたことが何度か続いたので
今ではすっかり学習しました
かなりしつこく状況を問いただしてから
でないと
事前面談(意思確認のため)には
伺わないことにしたのです。
事前の情報収集の限界
というわけで、事前に本人の状況について
詳しくしつこく聞き取りを
するのですが、ここでもどうやら
勘違いがあります
中には、
本人に判断力がないことを確認するために
司法書士が面談する、と思っている方も
おいででした。
何かの認定(介護とか?)と
混同なさっていたようですが
ともかく、そういうことではありません
それどころか
判断力がないことを確認したら
そこで取引の話は終了です。
「本人は話がわかって会話ができる」との
事前情報があったとしてもそれだけでは
充分ではありません。
これにはトラップがあって
話がわかって会話ができるのは実は
その人(いつも面倒をみている娘とか、妻とか
いわゆる以心伝心系)だけ
だったりするからです。
決して気は抜けません。
「私(司法書士)でも話ができますか
わかりますか」
これですね。
このようにお尋ねすると
「よその人だと言ってることが
わからないかも。。でも、わたし(娘・妻)
にはわかりますから。大丈夫です」
これは悪い印(しるし)です。
お断りするのも非常に心苦しいのですが
「一度会ってくれるだけでいいから!」と
懇願されて出向いたところ、やはり、
私(司法書士)には心を開いてくれず
意思確認はとうていできなかったという
事例もままあります。。。。
「私(娘・妻)にはわかります」
という言葉を疑うわけではありません。
真実だと思います。
ですが職責上、直接ご本人から
「この土地を売る」という一言を
伺いたいのです。
それができないとしたら、残念ですが
その取引はできません。
少なくとも司法書士は
お引き受けできません
そもそも売買契約は可能?
残金決済だけでなく、その前に
売買契約の締結という一番大事なのに
蔑ろにされがちなイベントがあります
司法書士が意思確認に出向くのは
通常は
売買契約後決済前のタイミング
であることが多いです。
代理人による契約締結をするにあたって
委任状等なしでも可としている仲介業者も
中にはあるようですが
ですが本来
売買契約も本人が立ち会うべきですし
(きちんとした代理権のある代理人であれば
契約締結は可能です)
さらに登記をするに至っては
司法書士が介在する限りは
絶対に本人の意思確認が必要です。
そして本人以外を相手に
本人確認はできません。
もしも司法書士が
所有者本人の意思確認をしないで登記に
及んだとしたら、それは懲戒対象に
なり得ます。
懲戒は、軽いものだと厳重注意(戒告)
くらいで済みますが、重いものだと
無期限の業務の禁止というようなものまで
あります 量刑は、被害の状況や
悪質さの程度によって判断されるようです。
本人確認の黒歴史
なので、もともと司法書士には
本人確認義務があったところ、
法律の適用により(代表的なのが、
犯罪による収益移転防止法の施行)日本中で
本人確認という言葉が一般的になりました。
本当にありがたいことです。
一昔前は
たとえば銀行で口座をつくる際にも
原則として
身分証明書の提示を求められることは
ありませんでした。
今となっては信じられないことですが
そういう時代があったのです。
(その時代を覚えていますか)
その当時は、現在の諸状況を考えると
信じられないくらいに
こうした意思確認はされたとしても
ゆる~いもので、
ゆるいというか、確認などは
されなかったことの方が
多かったようです
そのため当時は、司法書士が
本人確認させていただきたい、と
おそるおそる切り出しても
気持ちよく応じてくれる人はむしろ
少数でした。
俺が詐欺師だとでも言うのか(怒)
そんなに信用できないならこの取引は
打ち切りだ!とか半ば脅されて
新米司法書士(三十代・・)は泣きました
ところが時代もすっかり変わって今や
何も言わなくても
スッと
免許証や個人番号カードが出てくる!
という、うれしすぎる状況です
本当にありがたいことです。
が、一方では
売買や贈与などについての
本人の意思の確認、ということを
真剣に考えてくれている人は少ないです。
本人というのは
その件における当事者のことで
不動産売買の場合は、ずばり、
登記記録上の所有者等のことです。
窓口になっている人、のことでは
ありません。
老いた親を代理していると称する息子や
たまには隣の人だったり、、、
いずれも本人ではありません。
本人確認が必要な意味
不動産の売買において、本人の意思確認は
非常に重要なものです。
本人の意思に基づかない売買は無効です。
なので、本人と称する第三者(無権利者)
から買った(と思っている)人は
所有権を取得できません。
書類がそろっていれば登記はできますが
法務局には実体上の審査権限はないので
登記が無事に完了したからといって
実は、安心できないかも
しれないのです。
怖いです。
売買や贈与登記のご依頼を頂くと同時に
「ご本人の意思確認はできますか」
これをまず、うかがいます。
売主本人というのは
登記簿に所有者として載っている人
だけです。
買主本人とは
その不動産を購入して
登記簿に所有者として載る予定の人、
だけです
こちらの説明がいまいち
足りていないのでしょうが
本人確認の意味というか意義を
理解してもらうのは難しいです
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時には
「本人?寝たっきりで右も左もわからない
代わりに私が段取りして売ってあげてるのよ」
というような爆弾発言がなされることもあり
この場合は、この時点で
決済はストップです。
司法書士も引き受けることはできないですし
宅建業者であってもおそらく同様です。
無権利者からの売買を
容認する法律はありません

千葉県茂原市の司法書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験30年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。