それでも遺言書をかく

再び、自分で遺言を書く

 

自筆遺言の問題点 ベスト3

 

保管する場所

 

どこに預けますか

誰に預けますか。いつ?

遺産を遺す予定の人と同居していれば、
その場ですぐに預けてしまうことも
できますが。

別居してるとか、
月に1度しか帰省しないとか、
会ったら預けようなどと思っているうちに
雑事に取り紛れて忘れてしまったりするものです。

同居してる人には見つけられたくない、でも
死後には無事に発見してもらって
遺志を実現してほしい、などと
虫のいいことを考えているときも同様です

本当に、遺言書の保管場所は気をつかうものです。

この金庫に大事なものを全部しまっておくから何かあったらよろしくねというのが一番よいかもです。
心配する事情があるのなら鍵だけでも
相続する人に渡しておくとか。

肌見放さず持っていても
望ましくない人の手に
渡ってしまうことがあったら
せっかくの遺言が闇に葬られてしまうかも
しれません。

 

このほど、遺言の保管場所に関する法律ができたので、法務局(すべての法務局ではありません)に預けることができるようになります。
2020年7月10日からです。
詳細はまだ未定です。

正式名は、法務局における遺言書の保管等に関する法律

 

 

もう少し詳しく

 

「遺言書は法務局にあずけてあります。」
これを生前、公言しておきさえすれば、
保管問題は解決したようなものです。

こうすれば、
しまい込んだ遺言を発見してもらえない
という悲しい遺言となる心配がありません。
しかし、そもそも相続人が相続について無関心であるとかだとどうにもならないですが

 

ただ法務局保管制度も、
必ず本人が出頭しなければならないとか
本人確認が厳格にされたり、
遺言書以外にもいろいろ書類をそろえたり
面倒といえば面倒です。

しかし預け入れのときに、
遺言の形式が整っているかの確認をして
もらえるようです。いわば、
遺言の形式にはお墨付きをもらえる
ということなのでその意味では安心です

もちろん
遺言書の中身について判断するわけでは
ないので、あくまでも確認されるのは
形式が整っているか、だけです。

 

検認手続

 

これもなかなか面倒です。

自筆遺言書は
(法務局で保管するものをのぞいて)
家庭裁判所に提出して、
その検認を請求しなければならない、と
定められています(民法1004条1項)

どんなに素晴らしく書かれていたとしても
自筆遺言書はそれだけでは執行することが
できません。
不動産の名義を変えたり、
預貯金をおろしたり。
全て家庭裁判所での検認手続きが
済まないうちはどうにもなりません。

 

検認手続きには戸籍が必要です

 

この手続で一番面倒なのは、戸籍の収集
かもしれません。

検認手続には、
被相続人(遺言を残した人)の戸籍と
法定相続人全員の戸籍が必要です。
父が亡くなって、
相続権あるのが母と未婚の私だけ。
というのなら、戸籍は数通ですみますが

被相続人に子どもがいなかった場合は、
第一順位の相続人はその親(達)です。
その親たちが亡くなっている場合は、
被相続人の兄弟(全員)が法定相続人となります。
なので、
兄弟が多かったり、さらにまた、
その兄弟がどこぞに養子に行ってたりすると
一挙に人数が増えます。

 

現代では兄弟の数が減っていますが、昭和の前半くらいまでは、兄弟は6、7人いることも珍しくはありませんでした。
また、さらに兄弟の方が死亡していたら、
こんどは、
相続権はその子供達に移りますから
その人達全員についても戸籍が必要です。

 

ところが、単なる相続人にとっては、そのような直系ではない方たち(いわば遠い親戚)の戸籍を取得するのはなかなか大変です。

そこで、司法書士などに遺言検認手続のための戸籍の収集を依頼する必要があります。

 

中に何が書いてあるのか知りたい

 

また、封をしたままの遺言書を
勝手に開封すると罰金です。

 

民法1004条

3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会がなければ、開封することができない

1005条 遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外においてその開封をした者は5万円以下の過料に処する

 

ですが、これも、特に封をしたままでは中身がまるでわからない場合などは、事前に何とかしたほうがよいかもしれません。

 

それまで楽しみにしておくのもいいですが
ひょっとして骨折り損になるかも、です。

遺言の中身が財産のことではなく、

みんな仲良くね。お父さんは幸せでした。
ありがとう

これだけだったら、どうですか。

たとえば、戸籍の収集に2,3ヶ月かかり10万以上の費用もかけて(現在戸籍は1通450円それ以外の戸籍は1通750円)、の挙げ句がこれだったら、
少し、残念かもしれません。

しかし、ものは考えよう。
このときまでこの父親はものすごい暴君で
ありがとう、のあの字も
家族に言ったことがなかった、
というような事情があったなら、
充分に報われる遺言だと思いますが。

でも一般的ではありません。

なお法務局で保管をした遺言書には、
検認は不要です

 

遺言内容

 

せっかく大変な思いをして検認が終わっても
肝心の遺言の内容が
実現できないような内容だと、
財産を取得することができません。

 

はっきり誰が見てもわかるように書かれて
いることが望ましいですが、
体調の良くないときに書かれた遺言などは
字数も少なく、
意思ははっきりしてるのでしょうが
運動機能が追いつかない、と思われる遺言も
珍しくはありません。

 

では、どのあたりまで明確に具体的に書いてあれば大丈夫なのでしょうか。

断言することはできませんが、たぶん
多少、表現に問題があったとしても

遺言の趣旨を合理的に最大限
有効となるように解釈する、という判例

あるようなので、少々のことは、
遺言執行の障害にならない可能性が大です。

 

たとえば、ボールペンで次のように
かろうじて判読できるかどうかの筆跡で


いごん

りえにすべてをゆずる

れいわ1、12、2、

片山りえぞう 拇印


という遺言が発見されたとしましょう。

これは3人いる娘のうちの一人片山理恵に
全財産を遺すという意味の遺言です

固有名詞が自分の名前を含めて漢字表記が
されていませんが、

遺言者の意思は明確
にわかります。
全文自署 日付 押印の形式的要件
満たしています

あとは、検認後、金融機関(預貯金をおろす)なり、法務局(不動産の名義をかえる)陸運局(車の名義をかえる)などの個々の現場の判断ということになるのでしょうが、遺言の趣旨を合理的に解釈し、最大限、有効となるように解釈するという判例に従えば、遺言が実現される可能性は大だと思います

ただ、もしもこの場合、妻リエ(後妻)もいる、となったら、まずいでしょうが。

 

では、どう書けばよいのか

 

元気があるうちに書くのであれば、
誰にも文句を言わせないような
遺言書を書きましょう

 


遺言書

私は遺産のすべてを次女である片山理恵に相続させる

令和1年12月2日

片山理恵蔵  押印


 

元気があるうちに書きましょう。

あまりの簡単さに
「これではまずいのでは?」という
お問い合わせをいただくことがあります

お近くの方には実際に面談の上、
ご指導(というほどのものではない!)
させていただくのですが、
ちょっと心配という方も何割かは。。。

大丈夫ですってば。

 

 

ただし、この書き方は

遺留分については何も考慮していません

相続税対策は、何もしていません

 

 

これでも問題なければ、
元気があるうちに書きましょう

元気なうちは書きたくないかもしれません

でも

書きたいときには書けないのが
遺言書ですよ

今年のクリスマスプレゼントに
いかがでしょうか。

ご健闘を!