どうして契約書をつくらないのか?

どうして契約書を作らないのか

 

特に不動産の売買においては、

ものが大きいこともあり、ほとんどは
価格が高いこともあり、
消耗品ではなく、数十年単位で存在し続けるものであるので

売買契約書の作成は必須ではないか、と思うものです

 

近年は、
不動産売買登記について
仲介者なしで当事者からのご依頼というのが増えています

こうした場合は、お客様の方から契約書を作るように依頼をいただくこともありますが、
こちらから作成を提案しても、必要ない!と拒否されることもあります

 

どうして、契約書を作らないのでしょう?

 

契約書は作らない

 

当方で作成する場合は、
その費用もいただくことになるので無理強いはしませんが、
どう考えても作った方がよいです。

けっこう強力におすすめするのですが、
頑としていうことを聞いてくれない人がいます。何かしら事情を抱えているのかもしれません。

百歩譲って、それでもどうしても作りたくない、(理由は不明)というときは、
せめて領収書だけでも詳細に作成して欲しいと思います

 


領 収 書

宛先○○様(買主の名前)

金額○○円

発行者(地主)住所氏名 印

日付(2022年9月19日)

ただし、千葉県茂原市中林1841番地33の土地建物の売買代金の全額として


このような感じで書いておけば最低限の情報は証拠として残ります

つまり、

  • 当事者の氏名
  • 売買がなされたこと(代金の授受がされたこと)
  • 日付
  • 売買代金

 

このように、ほとんどの場合は詳細に領収書を書きさえすれば、最低限の用は足ります
これだけでも何もないより、全然よいです。

ちなみに、

普通のコピー用紙にボールペンで(鉛筆は不可)さらさらと手書きで大丈夫です
領収書専用の用紙でなくても全然大丈夫です
訂正したときは、そこに訂正印を押しましょう。
金額の訂正は後日争いになったときに不利なので、書き直した方がよいかと思います

収入印紙は営業に関するものでないときはいりません。(発行する人が個人で、不動産業とかをしていなければ不要)
また、もしも収入印紙を貼るべき時に貼ってなかったとしても、領収書が無効になるわけではありません。

印紙税法上の責任は生じます

 

せめて領収書は作る

 

しかし、契約書を作りたくない人たちはどうしたことか、
領収書の作成にも消極的であることが多いです

個人間売買で仲介業者がいないときは、
領収書をご用意されていることは少ないので当方でご用意いたします。

が、無料でお作りしているにも関わらず、
いらない、そんな(親しい仲で)水臭い、
作成に同意しない人たちもいます。

どうしたことなのでしょうね。

特に、このように仲介者がいない取引のときは
登記を受託する身としては、
売買契約書のコピーと領収書のコピーはぜひにでも頂戴したいものです

まあ、一言で言ってしまえば
後日の証(あかし)のためです。
売買契約書がなくても、せめて領収書だけでも欲しいです。

 

なお、
目の前で売買代金(と称されるもの)のやりとりがあった時は代金授受については納得できますが、
それさえも、今、銀行で渡してきた、と主張されたときは、お手上げです。

代金授受について追及すると、
そこまで司法書士が取引に介入するのか失礼じゃないか、と激昂する方も中にはいますが
今は伝家の宝刀「新しい法律でそのコピーを保存するように決められています」の一言で納得してもらえることが多いです。

ここで納得してくれない人は、おそらく、何か公にしたくない事情がおありなのでしょう

 

領収書は、既に作成してあるときは、その
コピーを戴きます

日付が書かれていないのは日常茶飯事なので今や驚きませんが、
肝心の但し書きが入ってないこともまた多いです。
何の対価としての金銭受領なのか、そこがわからなければ証拠になりません。 

但し書きに土地の代金としか書かれていない
まあ、それでもないよりは幾分ましではありますが。

途中で介入して、不足した部分を追完します

せめて
日付と、どこの土地なのかは、書いてもらいたいところです

 

中には、振り込みだから領収書はナシね、と言いくるめられている人もいます

言いくるめるなどと穏やかではない表現をしましたが、これはもう言いくるめるとしか言えない状況です

法律的には支払った買主が納得すればそれでもよいのかもしれませんが、たしか、買主の求めがあれば、銀行振込時であっても領収書の発行義務があるのではなかったでしょうか

特に多額の領収書には、多額の収入印紙が必要となるため、日常的に決済をしている法人等は、領収書を発行しないのがデフォルト、というところもあります
何度かそのような決済に立ち会ったことがありますが、ほとんどの場合は、買主さんは、領収書を要求します。
が、
振込だから必要ないんですよ、法律的にも認められていることだから、などと業者さんに言われると、そのまま諦めてしまう印象です
納得したのではなく、言いくるめられたという感じ。
買主が要求しているのだから、領収書の発行義務があるのですが。。。。

このような場合
契約書がなかったとしたら、そしてさらに領収書もないとしたら、不動産売買がなされたこと、そしてその代金の額を後日どのように証明するのでしょうか

売買契約書があって、登記がされてれば、
その日に所有権が移転されたことがわかります。
その日付で、振込がなされていれば、
それが決済時の残高ということも反証がない限りほぼわかります

確かに、振込の証明、登記事項の確認等によって、おそらくその日(登記には売買日付の記載がされる)にその振り込みの額を支払ったのでしょう。で、それは代金全額なの?一部なの?

ということになるかもしれません

 

万が一、将来、何かの不具合が生じて、
訴訟などの万が一の事態に遭遇した時に、

  • この日に
  • この不動産について
  • 売買がなされた、ことをどのようにして証明するのでしょうか。

売買契約書と領収書、このセットが重要だと思います

 

ないよりマシ!カンタン契約書

 

40年近くも前から不動産業者で働いていたので、売買契約書は売買(決済)に先行して作成されるのが当たり前、という感覚はあります

同時に、業者が間に入らないときの、
ある意味ずさん(!)なやりとりもよく見聞きしてきたところです。

 

特に、俗に地上げ屋と称する個人が、
あまり権利関係等にこだわらない主に高齢の地主から地上げをする際の売買契約書は、非常に簡単なものです

ただ、カンタンでもないよりは全然よいです

誰が誰にどこの土地をいくらで売ったの記載は必ずあります

日付は書き忘れられていることが多いです

かわりに仲介人立会人の署名があることも多いです

かつて市販されていた土地売買契約書をそのまま訂正なしで使用することが多いためなのか、その文言に注意を払う人はほとんどいない印象です

所有権の移転時期、とか、売買代金の支払い時期、いざというときの責任の取り方、などおそらく、印字はされていますが、当事者はそこに注意を払うことはないと思われます(よって、そのあたりは、実体とかけ離れていたりします)

ですが、そんなカンタンな契約書であっても口約束よりも全然よいです。

言葉巧みに(騙されたとも言う)売買代金の一部を前渡しと言って支払い同時に権利書白紙委任状(実印で、捨て印もある)さらに印鑑証明書と引き換えに渡してしまいそのまま売買の登記されてしまう地主は一部金のつもりなので残りの支払いを待っていてもいっこうに支払われる様子もなくそうこうするうちに権利証は返却されてくるがそれっきり。音沙汰なし。

突っ込みどころ満載の事例ではありますが、

どんなに簡単でもきちんと作られた契約書があれば、いろんな意味で状況は一変します

 

ちなみに、カンタンな契約書と一言で言っても、

必要十分なことが簡潔に書かれたもの、という意味のカンタン、と

市販の契約書をそのまま流用してしまうというカンタン、とでは、
まるで意味合いが異なります

どんなに文字数が少なくても、
その取引に必要ではないことが書かれていれば冗長なものだし、
必要なことさえ書かれていればそれで充分ともいえます

ただ、何が起こるかわからない以上、
万が一に備えて現在は関係なさそうに思えても将来的に可能性がないわけではない、ことは書いておいた方がよいかもしれません。

 

まとめる

 

契約書は作りましょう

相手方に頼んでも作ってもらえなかったとしたら、その理由をきちんと納得できるまで追求しましょう

ちなみに、
これまで契約書の作成を迫って断られた当事者で、
納得できる理由を挙げた方はほとんどいません

 

代表的な作らない(作りたくない)理由は、

1 面倒(自分で作るにしても人に作らせるにしても契約と署名捺印の手間がかかるし余分な時間もかかる)

2 費用がかかる(誰かに頼めば当然そうなる)

3 信用して取引に至ったのだからそんな他人行儀なものはいらない(そもそも他人だし他人じゃないとしても親しき中にこそ礼儀ありでは?)

このような感じです。

 

面倒なのはわかります。でもそれは、
契約締結上のリスクと比較してもそれでも面倒なのでしょうか。

裁判になったりすることの方がよほど面倒なのでは?

費用がかかるのは、仕方ないです
それだけの価値あるものと引き換えるわけですから

一番問題なのが、
信用しているからいらない、というものです

これは、当事者の片方が主張し、もう片方は
しぶしぶという感じで従っていることが多いです。

1か月前に初めて会って、
何の仕事が本業なのかも知らない相手を信用するというのは、ないとは言いませんが、
あまり真実味がありません。

これもまた、力関係によって、
弱い方がそのように言いくるめられていることが多い印象です。

弱い方であっても、
ここまで司法書士が言うのだから形だけでも作りましょうかとおっしゃってくださる方もおいでなので、
その一言に飛びつくように、
契約書と領収書はざっくりですけどお作りします、と言いつつ、いそいそと、お作りしてしまいます

作ってしまったら、もうこっちのもので、
そこまできて文句を言う人はほぼいません。

将来、問題になりそうなところはできるだけ盛り込むようにはしていますが
そこは宅建業者ではない悲しさ、というか、
役所にでかけて、法令上の細かい規制等を調査するわけではないので、自ずと限界があります

 

ではどうするか

 

できれば、きちんとした仲介業者に介入してもらった方がよいのです。

そうすれば、きちんとした重要事項証明書、売買契約書、領収書等を作ってもらえます。
売買登記まで面倒をみてもらえます(知り合いの司法書士を推薦してくれる)
その土地に法令上の制限等がされているときは、それも調査対象なので、重要事項の中に盛り込まれます

ですが、たとえば、
売買金額が30万円の農地を売買するのに、
仲介料を払うのがもったいない、とお思いになる気持ちは、確かにわかります

ですが、

最悪の場合、妙な土地を買ってしまったのは仕方ないとしても、
その売買の事実くらいは、きちんと証明できる書類が必要なのではないでしょうか

お金は支払った、でも
どうしたことか登記名義は変更されてない
、でも確かにあの時お金は支払った

その取引から数年たったのちに、これは変だと思った時に、
売買契約書がなければ、どうにもならないと覚悟してください

 

登記名義があなたに変わっていたとしても、あの登記は間違ってされたものだから名義を戻してほしい、返してほしい、と言われたときに、
きちんと反論できますか

反論の材料である売買契約書も領収書もないとしたら、
そのときはもうどうにもならないと覚悟してください

 

売買契約書はカンタンなものですが、
お作りできます

ご相談はどうぞお気軽に。