不動産共有持分の売買

不動産の持分の売買

 

土地でも建物でも、数人または数十人の共有で登記されていることがあります

共有のパターン

 

多くは、次のようなパターンです

・相続の際に、一人に決められなかったので
法定持分でとりあえず登記しておこうということで、たとえば
A持分8分の4 B持分8分の1
C持分8分の1・・・というような感じで登記されているものです

または

・夫婦または、家族で、お金を出し合って
買ったからその割合で共有にしておくなど。

わかりやすい、
A持分2分の1 B持分2分の1
というようなものから
A持分2350分の1185
B持分2350分の1165というように几帳面なものまでいろいろです

 

あとは、山村や田舎で見かけることのある
いわゆる共有地というものです

・その地域でみんなが使う山や原野を地域の人全員(各世帯の代表者全員の名義)で共有している(100人超えとか。わりとあります)とか

また、近頃は少ない印象ですが、

・宅地に進入するために必要な私道を、その分譲地の全員で共有で所有する(10人くらいであることが多いです)など。

 

 

このような時に、
自分の持分だけ売却することが可能なのか
というご相談を受けることがあります

 

自分の共有持分だけ売却する

 

Q. それは可能でしょうか?

A. 買ってくれる人がいるならOK

です

 

3人で、土地建物を所有しているときは
3人が合意しないとその土地建物全体を売却することはできません。

しかし、いろいろな事情で、

自分の分の3分の1だけでも売却して
納税義務その他草刈り義務等から逃れたい。
終活を進めたい、と思っているのに、

あとの共有者の二人が

まだそんなに先走らなくてもよいのでは
とか、
いま、景気が悪いから、もう少し回復して
高値で売れるようになってから売りましょう

などと言うなどして、
共有者間で話がまとまらないことがあります

 

このとき、買ってくれる人がいるのであれば
自分の分だけたとえば、持分3分の1を
売却することは可能です

登記の際の書類も、
通常の所有権移転のときと全く同じです。

よくご心配なさる方がおいでですが、
残りの共有者の同意書または承諾書のようなものは全く必要ありません。

登記手続き的には、どんなに他の共有者が
反対したとしても持分移転の登記は可能です

 

この場合、
買った人も、以前からの共有者とともに所有することになるだけなので、
売却といってもやはりほかの共有者の同意や協力がなければ、その所有権全体を売却することはできず、
自分の持っている持分だけしか処分することはできません。

するとどうしても、低廉な価格での売買と
ならざるを得ません。

 

その土地全体の市場価格が通常1500万
だとして、3分の1だと500万円という
計算ですが、

売却部分が3分の1、だけだとすると
不動産として価値が低いため、
せいぜい100万とか、いいように
買いたたかれます
たぶん。しかし、事情によってはそうでないこともあり得ます

 

ですが、
持分を売却したいとお考えの方にとっては
ともかく共有といえども、不動産を所有していることが何かしら負担となっているわけなので、
価格の安さは問題ではないのかもしれません

ともかくも共有状態から逃れたいということでしょうから。

 

共有状態から抜け出せさえすれば、
そうすれば、等分に責任のある固定資産税や
管理(草取りとか、落ち葉の始末とか壊れた屋根瓦の処置等々、等々、等々)の義務からも逃れることができるわけです。

多少、
売却価格がお安いものであったとしても
メリットの方がはるかに大きい、と
判断される場合も少なくはないと思われます

 

共有者に買ってもらう、とか?

 

土地をABC3人で共有しているときに、
このたび、Aが自分の持分3分の1を
処分したいと思った時に、やり方は3つです

 

  1. どこかの誰かに買ってもらうまたは、
    貰ってもらう
  2. 共有仲間のBかCに買ってもらうまたは
    貰ってもらう
  3. 共有仲間BおよびCの二人に対して
    「A持分放棄」というかたちで
    6分の1ずつ共有持分を移転する
    この持分放棄だと、BCに譲る持分を
    勝手に決めることはできず、同じ割合で移転することしかできません。
    (6分の1ずつです)

(持分の放棄)
民法255条
共有者の一人がその持分を放棄したとき、その持分はほかの共有者に帰属する

 

この方法は、
ほかの共有者に対してしか放棄はできない
のが難点ですが、これには大きなメリットがあり、それは
農地でも許可証なしで登記が可能だという
ことです

 

農地の所有権移転の登記

 

農地の所有権を移転するときは、
売買であろうと、贈与であろうと、また今回のように1筆の土地の共有持分だけを
譲渡する場合であろうと、
原則として、農業委員会の許可を得る必要があります。

通常の所有権移転登記の必要書類に加えて、
農業委員会の許可証がないと登記はできないということになります。

登記どころか、許可なしで売買する
(代金を支払う・引き渡しをする)ことは
農地法違反に問われます

ですが、「共有持分の放棄」では、
例えばAからB、Cへ6分の1ずつの登記をする
農地であっても農業委員会の許可が
いりません
これは、共有状態から抜けたい人にとっては大きなメリットです

 

農業委員会の許可

 

農地法3条(農地のままで名義を移す)
農地法5条(用途変更のために名義を移す)で
許可を取ることが多いかと思いますが、
名義が変わるのは、3条か5条。
4条の許可は名義が変わらず、用途変更だけ

どちらも申請すれば許可がでるというもの
ではなく、一般人には、かなりハードルが
高いものです。

 

たとえば、
3条の許可を得るには、

譲り受ける人に農業者資格が求められます
かなり広い面積の農地を所有等していることが要件

 

5条の許可については、

たとえば家を建てるとしたら、
その図面や資金計画などを明らかにして申請する必要があるなどして、3条よりもかなり面倒です

細かいところは、自治体によって異なりますが
農地の所有権移転に際して許可が必要であるという部分は全国共通変わりません。

いずれにしてもかなり手間のかかる作業です

 

道路の持分を売却する

 

分譲地などで、
8人で使っている私道の持分8分の1を
持っているとき、
この持分だけを売却するということは
基本的にあり得ません。

ただし、登記手続きは、可能です。

 

その道路持分は、
その宅地に進入するために必要なものなので
宅地の処分と同時でなければ、
道路持分だけを処分(売るとか上げるとか)するのはどう考えても好ましいことではありません。

こうした時に、
私道持分があることに気付かず、宅地のみを
売買してしまうことがありますが、(仲介の不動産業者が入らない個人間売買でよくあります)
これだと、法的にはその道路を通行することはできないことになります。

 

以前、
騙されて持分全部を他人にとられてしまって
その家まで入る権利がないのだから立ち退けと朝に晩に罵詈雑言を浴びせかけられる!
という散々な目にあった人からのご相談を
受けたことがありましたが、

そのようにならないように、
宅地とセットで購入した私道持分は、常に
セットで処分するようにご注意ください。
(銀行が宅地を担保にお金を貸すときも、
必ず私道持分もセットで担保にとります)

 

ほかの共有者から譲ってもらう

 

このご相談の方には、
他の道路持分所有者の方からいくらかを
分けてもらうことで解決の道が開けました

つまり、
道路持分というものは、宅地の面積割合に
応じて所有すべき、というような決まりはないので、
たとえ100分の1、であっても、所有
(共有)してさえいればそれでよいのです。

結局、持分8分の1を所有している隣人から
その10分の1(つまり、80分の1)を
贈与してもらうことで事なきを得ました。

(こうすると、その隣人の残りの共有持分は80分の9となります)

この両者は、
80分の9、と
80分の1をそれぞれ道路持分として
所有しているわけです。

そしてその差は9倍もありますが、
どちらも同じように道路を通行する権利が
あるということになります

ただし、

(共有物の使用)
民法249条
各共有者は、共有物の全部について、
その持分に応じた使用をすることができる

 

という法律はあるのですが、
自分の家への私道を通行するに際して、この法律は問題にはなりません。

 

まとめ

 

3人共有の自分の持分を第三者に売却するのは
その方の自由だし、
他の共有者にお伺いをたてなければならないというようなものではありません。
勝手に売却できます。

しかし、あとの2人にとっては、
まるで知らない他人が共有者として登場することになるので、そのあたりの事前の相談等が必要になるかもしれません。
(法的に必要ということではなく人情として
ということです)

共有となったら、それぞれがその不動産を
使用する権利があるということなので、
あるアパートを3人で共有していたとして
そのうちの一人がまるっきり知らない人、
となるとしたらかなりの抵抗感は出てくると
思います

勝手に自分の持分だけを売却しても登記手続は可能であるし、法的に問題はないはず。
確かにそれはそうなのですが、
そのレベルだけで判断をするのではなく、
共有者の心情にも配慮した方が将来的に
良いかも、と思います

 

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