任意後見人にできること

任意後見人にできること

 

公証役場で任意後見契約を交わして
その登記がされても
それだけでは
任意後見人にはなりません。

その段階では、まだ
任意後見受任者に過ぎません

 

こののち、本人に
判断能力の低下等があり

任意後見監督人が選任されて初めて
任意後見契約は発効し、受任者は
任意後見人となります

 

さて
後見人というからには
なんでもできるだろうと感じるのはもっともです

しかし、あくまで
本人が任意で契約した後見人なので
残念ながらおのずとその権利義務には限界があります

 

受任者のときにできること

 

・任意後見監督人の選任請求
選任請求ができるのは、あとは
本人・配偶者・四親等内の親族のみ

・本人の死亡届け

・任意後見契約の解除

 

つまり、受任者のうちは、満足なことは何もできません。

もしも本人に、この段階でも受任者に
何かしてもらいたいという希望があるならば
別途、財産管理契約等を交わしておく必要があります

 

任意後見人にできること(任意後見監督人が選任されたあと)

 

・任意後見契約書にかかれた法律行為の
すべてについて、可能です

たとえば

  • 預金の出し入れ
    ただし、法律的には可能でも
    金融機関が理解していないために窓口で四苦八苦奮闘する話をよく聞きます
  • 所有不動産の売却
  • 居住用不動産の売却
    (裁判所の許可は不要)
  • 個別委任された事実行為
  • 介護行為 外出時の付き添いなど
  • 後見人が弁護士であれば、訴訟行為

 

できるかどうか微妙

 

・入院の際の身元保証

任意後見人が本人の親族であれば
身元保証をすることに問題はありません

しかし

弁護士等第三者が身元保証を
することについては、
費用等の支払いに際して
利益相反が生じること等が考えられるため
慎重に考慮すべきこととされています

 

任意後見人にできないこと

 

本人生存中

  • 同意権・取消権はありません
  • 医療行為等の同意はできません
    たとえば
    手術・延命治療の開始・中止
  • 施設・病院の入所時の身元保証
    親族であれば可能
    第三者であってもやり方次第では
    可能(かも)
  • 一身専属権の代理
    たとえば
    ・離婚請求
    ・認知請求
    ・扶養請求
    ・身元保証人

いずれも代理になじまないため、と
されています

 

本人死亡後

・死後事務管理の一切
(死亡届け出は可)

死亡後は、委任契約が存在しないため
死後の事務はできません

たとえば

遺体の引き取り
施設利用料や入院費用の支払い
居室の明け渡し
遺品の整理等 いずれもできません。

それらを希望する場合は
おそらく本人はそれらを希望することでしょうが

別途、事前に本人との間で
死後事務委任契約を結んでおく必要が
あります

親族が任意後見人である場合は
死後事務委任契約がなくても
死後の事務は可能です

そもそも親族は任意後見人でなくても
死後の事務をおこなうことができます、
というか、期待されています

ですが、

司法書士等が任意後見人の時は
死後事務委任契約が締結されていないと
本人の死亡と同時に何もできなくなります
代理権限がないので。

 

任意後見監督人の選任を求める

 

本人の判断力が低下してきたら
任意後見監督人の選任申し立てをすることになります

この選任審判がなされてはじめて
単なる受任者に過ぎなかったものが
任意後見人ということになります

 

申立は

 

・家庭裁判所に対して行います

・請求できるのは

  • 任意後見受任者
  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等以内の親族(甥とか姪とか、
    いとこ)

・なってほしい人を候補者として申し立てることができます
ただし、候補者が選任されるとは限りません

・本人以外の請求によるときは、
本人の同意がいります
意思表示できないときは不要

・医師等の意見を聞いたうえで審判するとされているので医師の診断書が必要です

 

また

選任審判までの期間は
家裁調査官の調査や
本人の意思の確認が必要なので

申立てから数か月かかるとされています

 

任意後見監督人になれない人

 

  • 受任者本人
  • 受任者の配偶者
  • 直系血族
  • 兄弟姉妹

 

まとめると

 

悩ましい問題、つまり
これらだけではカバーしきれていない問題がまだまだありそうです

特に、親族がいない時の
入院時の身元保証、身元引受人の問題とか
あるいは
医療行為の同意など
本人ひとりだけではどうにもならないことがあります

じっくり考えれば
何かしら方策はあるものですが、おそらく
入院、手術といった緊急事態にあっては
本人も平常心ではいられないでしょうし
時間的にも切迫していることが
ほとんどでしょう。

ゆっくり考えている暇などあるわけが
ありません。

そのような時に
慈愛深い姉とか
親身に寄り添ってくれる息子が身近に
いない人は

どんなにか心細いでしょう

 

どうか、残された人生を
平和に安心して送れますように