休眠抵当の抹消をする

 

質問

古い、明治時代の「休眠抵当」というのが土地につけられていて

「このままじゃあ売れないよ~」と業者さんに言われたのだけど、

 

休眠抵当って何?どうしたらいいの?

 

「それに、聞いたことのない人に知らない人がお金を貸してる っていう登記が

どうしてまた私の土地にされてるのか納得できないし。」

 

というご相談です

 

 

ご説明します。

 

まず、抵当権とは何なのか

 

  • 抵当権は、「お金をこんな条件で貸したのだから、必ず約束通り返してね」という約束を登記したものです。
  • 何のために約束を登記するのか、というと、返してもらえないときのために、です。
  • 返せないときは、裁判所に競売を申し立てて、売れたお金の中から、
    貸したお金を優先的に返してもらう、という権利です。
  • この登記をしなくてもお金の貸し借りはもちろん有効ですが、登記がないと、
    返済してもらえない時に、「裁判所に裁判を起こして、勝ってからでないと」、競売手続き等をすることができません。
  • なので、返してもらえないときに即、競売を申し立てることができる抵当権の登記は、金融機関等で重宝されています。

 

具体的に言うと、100万円貸して、土地に100万円の抵当権を設定して、弁済期を過ぎても一円も返してもらえないので、競売にかけた。

 

その結果、その土地は120万円で競落されたので、貸主は100万円と利息を受取り、余りは、土地の所有者に返還される、といった感じです。

 

いわゆる休眠抵当

 

そのような権利なのですが、何十年も前に登記されたまま、見かけ上(おそらく実際にも)放置されてるかのような抵当権があります。

一言で言うと、今も抹消されずに登記記録上に残っている古い抵当権のことを、いわゆる休眠抵当権と言っています

 

例えば、明治時代に20円を借りたという登記をしたまま、競売にもかけられず、抹消登記もされず、現在も登記上だけ残っている抵当権のことです

 

抹消の登記とは、登記簿上で、消すこと。かつては朱線でバツで消されました。現在は、下線がひかれます

 

時々、休眠抵当が発見されることがあって、

(昭和30年以前にされた抵当権等の登記は全体の2%が残っている、と推定されているそうです)

不動産の安心安全な取引を妨げるとして、簡単に抹消するための特例が創設されています。

 

 

また、相談者の方が言われるのは、ご自分の知らない間に古い抵当権がついてるのが納得できない、ということだと思います。全くそのとおり、と思います。

 

でも、抵当権がついたままで所有権は移転することが可能なのですね。

 

つまり、何代も前の所有者の方が、当時の知り合いからお金を借りた、ということです。

 

そして、そのあと、現在の所有者の名義になるまでに何度も相続されたり、売買があったり、または、贈与があったりしているのです。

このため、「見も知らぬ人たちの抵当権の登記が残っている」、という事態になってしまったわけですね。

 

さあ、休眠抵当権を抹消しましょうか。

 

いわゆる休眠抵当を抹消するには、いくつか方法がありますが、一番簡単なのが供託による方法なので、それを、ご紹介します。

(ただし、そのためには幾つかの条件があります)

 

供託をする

 

  • 抵当権者が行方不明であるという証明書が必要です。
  • 弁済期から20年を経過してること。
  • その人に弁済しようとしても行方がわからないので弁済に代えて供託をします。
  • 供託するのは、借りた元金と利息そして供託日までの遅延損害金の合計です

 

ここで、心配なこと

 

当時の20円は、今の貨幣価値に換算すると大変な金額になるのでは?

というものがあります

 

大丈夫。

 

20円は、20円として計算します。

利息や遅延損害金も、もしも利息制限法を超えていたら制限の範囲内に引き直して計算します。だから、途方もない金額になることはありません。

 

私が経験したのは、ほとんどのケースで、合計額が1000円未満でした。

一番多かったときで、3000円台というのがありましたが、この位であればおそれるような金額ではありませんね。

 

一番大変なのはこの部分

 

この手続きができるかどうかは、行方不明であるという証明がとれるかどうか、にかかっています。

 

・よく使われるのが、配達証明付きの書留を郵送して、「あて所に尋ねあたりません」というスタンプが押されて返ってきたら、それを行方不明証明書として使う方法です。「受取拒否」とかでは、駄目です。

 

・役場の住民課で、「どこの誰さんはその住所には住んでいません」という証明書がもらえたら、これも大丈夫です。

(住民登録がないことの証明ではなくて、居住してないという証明なので、出してくれない自治体が多いです)

 

・あとは、民生委員に頼んで、「その住所にその人が住んでいないという証明書」

を作成してもらう。とか。

 

このあたりが、代表的なものです。

 

どう考えても150歳くらい

 

ただし、登記されたのが、明治20年だとすると、その時お金を貸した人はおそらく20歳以上ではあったことから考えると、

生きていれば150歳を超えている計算です。

 

こんな人の行方不明の証明書がとれるのでしょうか。おそらく亡くなっている確率100%なのに! そして、それを使って登記ができるのでしょうか。

 

というご心配は当然にあると思いますが。これも大丈夫。

 

そもそも、この、いわゆる休眠抵当の抹消の特例は、

 

  • 休眠抵当の存在が、不動産の円滑な取引を阻害し、
  • 登記のオンライン化のための大きな障害とみなされていたため、
  • 実効性のある簡単な手続き、として創設されたものです。

 

なので、そのあたりのことで、登記の際にクレームがついたことはありません。

 

供託金の計算の仕方

 

これは、かなり、ややこしいです。

どういうことかというと、

 

  • (実際は弁済したのかもしれませんが、その事実が証明できないので)債務不履行により生じた遅延損害金の計算期間が長期に渡り(100年分とか)、
  • 登記の利息の表示のされ方も、年利・月利・または、日歩、あるいは、金〇〇円に付き○円など、と記載されていて、
  • 旧利息制限法に抵触する利息の登記などもあり
  • そのような訳で、画一的に適用することが困難だから、

 

です。

要するに、いろいろあるので、一概には説明するのが難しいということですね。

 

ご相談いただければお手伝いいたしますが、

 

供託所とは具体的に?

 

ご自分で手続きをする際は、実際に供託なさる供託所へご相談ください。

 

ですが、そんな名前のお役所はありません。

法務局、地方法務局または、それらの支局(いわゆる登記所といわれている役所)が、供託所、として供託事務を取り扱っているのです。

供託用紙などもそこでもらえます

(法務省の供託サイトから印刷することもできます)

では、具体的には一体どこへ

 

  • 供託するのは、債務の履行地の供託所です。
  • 債務の履行地に供託所がないときは、債務の履行地の属する行政区画内における最寄りの供託所
  • 具体的には、この休眠抵当抹消のために供託するのは、被供託者の最後の住所を管轄する供託所です。
  • それが不明の場合は債務者の住所地を管轄する供託所

 

に供託することになります。なので、実際に供託を予定している供託所で

具体的なご相談をなさることをおすすめします。

 

供託手続きができないとき

 

ですが、行方不明の証明書が準備できない場合は、この簡便な方法は使えません。

次のような正攻法で行います

 

  • 債権者と所有者による共同申請
    債権者(明治の人であれば、たぶん、亡くなっているので、その相続人の全員)から、普通の抵当権抹消用の書類を集めて、普通に所有者との共同で抹消登記をします。
  • これが困難であることが多いのは、相続権者が多数になっていることが多く、その全員から書類をもらわないと手続きができないこと、によります。
  • その一族の元気度(繁殖能力)にもよりますが、30人から50人くらいの規模になっていることも珍しくはありません。その全員の協力が必要なのですが、
    いまや、外国に住所があったり、実際に行方がわからなかったり、何十年も音信不通だったり、果ては、協力を拒まれたりすることもあったりします。
  • 債権者(の相続人全員)からの協力が得られない場合は、裁判です。
    抵当権設定登記抹消登記請求という裁判、を債権者(の相続人全員)相手に起こして、
    勝てば(勝ちますが)所有者が単独で抹消手続きができます
  • 公示催告の申立をして除権判決をもらう など、です。

 

 

いざ、「土地を売ってしまおう」、と思ったときに、思わぬ足かせになるのが、
何と言っても、この、いわゆる休眠抵当です。

なので、時間の余裕をもって、早めに抹消手続きをしておくことを
強くおすすめするものです。