借用証書の作り方

借用証書の作り方

 

お金を貸したのに返してもらえない

 

または、

 

もらったはずだったのに、
貸しただけ、早く返してと言われる

 

このようなご相談を受けることがあります

 

こうした問題は潜在的に
かなり多いのではないでしょうか
こうした相談の背景には多くの場合
きちんとした借用書がない、
ということが共通しています

(借用書があっても返さない人はいますが)

 

 

売買契約書もそうですが、
借用証書も非常に大事です

 

たまたま運が悪いとか、
悪い人にあたったとか、
それはそうかもしれませんが
どちらかといえば、

書類をきちんと作っておかないがために
おこることがほとんどです。
しかるべき書類があれば
防げることは多いです

 

どうして借用書が必要なのか

 

関係が良好なときは
なくても問題はないかもしれません

事情に変更がなければ
わざわざ手間をかける価値がないのでは
とお思いになる方も多いと思います

だからこそ、

上記の、

借用書のない金銭貸借
これほど多いのではないかと推察します

 

たとえば、

弟に10万円貸してと言われて貸したけど
返してもらえなくてもいつも何かと
お世話になってるから別にいいか、
ほとんど上げたつもり
というのであれば書類は不要かも
しれません

 

でも、

兄弟親子といえども、
貸して、と言ったからには、
返すのが当然でしょ、
絶対に返してよね!
強い気持ちで思っているときは
借用書を作った方がよいと思います

 

関係性も変わりますが、
事情も変わります

いつどのように変わるのかは、
誰にもわかりません

・天変地異によって、互いの居場所が
わからなくなることだってあり得ます

・今は元気な弟がある日認知症になるとか

・いつもは仲良しなのに、
突然、絶好を告げられるとか。

・あとは最悪、
妻子を残して、急逝してしまう、など

 

こうしたときに
金銭の貸し借りがされたという証拠が
残された当事者(貸した方)の記憶だけ
というのは、どう考えても弱いですよね

 

これが、
200万円とかいうのであれば、
預金から引き出した証拠とか、
それをどこかに支払ったとか、
自分の口座に入れたとか、
何かを買ったとか、家族に話すとか
おそらく証拠が残るかも?
と思いますが、
10万円だったら。
微妙です。

 

ちなみに、

お金の貸し借りは
お金のやりとりが実際に行われていれば
書面にするまでもなく
金銭消費貸借契約として有効です。

 

ただし、

将来に向けて〇〇円を貸しますという契約は(諾成契約)書面でしない限り無効です 本紙では諾成契約については言及しませんが一応ご参考として条文を掲げます

民法587条の2

前条(587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じものをもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる )の規定にかかわらず、

書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取ったものと種類、品質及び数量の同じものをもって返還することを約することによって、その効力を生ずる。

 

 

法律上は単純にお金の貸し借りがあれば
金銭消費貸借は有効に成立していますが
だからといって、
相手方が
その約束を守ってくれるかどうかは
別の問題です

そのために、借用証書を作ります

 

小額の貸付金であれば、とりあえず、
借用証書をていねいに作っておくことで
かなりの効果があると思います

 

  • 金銭貸借の事実の記載があること
    つまり、
  • 借り主は、
    もらったのではなく借りたという意思が
    書かれていることが大切です。
    また、
  • 金額についても、証拠となるからです

 

借用書 簡単版。

 


堀井文貴殿

本日、金10万円を借用しました。

弁済期は2020年5月22日

利息は無利息

一括にて返済します

2020年3月8日

千葉県茂原市中の森1丁目8番地4号

片桐利恵之助 印


 

・簡単な借用証書の作り方

 

絶対必要なのは、

 

  • 貸した人の名前(フルネームで)
  • 日付(西暦または年号もいれる)
  • 返済予定日(弁済期)
  • 借りた人の住所氏名
  • 金額
  • 金銭を貸し借りしたという事実

 

必要があればさらに次のことを

  • 利息を決めたら利息
  • 返せないときの損害金を決めたら損害金
  • 分割返済の場合はその方法
  • 持参するのか振込なのか
  • 振込だとしたら、振込料は借り主負担なのか
  • 銀行の支店 口座番号 名義

 

 

弁済期

なお、弁済期日が書かれていなくても
無効ではありません。

ただ、その定めがないということは、
どちらかというと借りた人にとって
不利に作用することが多いです

できれば書いておいたほうが
よいと思います。
決めてないかもしれませんが
貸した側にとっても
返してもらうのであれば、
書いておいたほうがよいです

 

民法591条

(返還の時期)

当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる

2 借り主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる

 

 

つまり、弁済期の定めがないときは、
貸主はいつでも
直ちに返還を請求することができ
借り主は、返さないといけなくなる
ということです。

直ちに、と言っても、
今!今!  ということではなくて
相当の期間を定めてということなので
この期間は
支払準備に必要な相当期間とされています

 

出世払い(しゅっせばらい)
という言葉がありますが、これは、
弁済期の定めというより、
出世という言葉の定義にもよりますが
返さなくてもよいという意思の表出だと
思います

つまり、差し上げた、という
ことですね。

 

利息の定め

また、
利息の定めについてですが、
従来は利息の定めが無い時は、
商事法定利率である6%で計算する
ということになっていました(判例)

今回、
2020年4月1日施行の民法改正により
次のように変更されました 

 

民法589条

貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない

 

なので、利息が発生する契約なのであれば
その旨をきちんと書いておきましょう

 

つまり、
2020年4月からは、
従前のように、
利息について
明確に書いてなければ6%請求できる
ということはないので、
ご注意ください。

また、

利息を付すとしか書かれておらず
利率が約定されてない場合は、
6%ではなく、3%となります。

利息を請求しないときは「無利息」と
書くべきです

 

民法404条(法定利率)

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による

2 法定利率は、年3%とする

この利率は、3年毎に見直すことになっています

 

 

書類作成のタイミング

たとえ簡単な文書でも、ともかく作る

 

・お金の貸し借りをするときは、
借用書をつくること

それは、
将来的に貸主・借主双方のためである

・お金の授受と同時に
書面を取り交わすのがよい

どちらかが先行してしまうと、
不測の事態に対応できなくなる可能性がある

・2部つくるか、コピーをとって
債務者(お金を借りた人)も所持すること

・お金を返す時は、
受取書(領収書)をもらう

・借用書には、できれば、
弁済期、返済条件を明記する

・状況が変わったら、即、
その旨の合意書なり確約書を作って
借用書と合綴しておく

・または、その旨を明記して、
借用書を作り直す

・作り直したら、以前のものは
きちんと廃棄処分する(後日のため)

・全額返済終わった時は、
借用書を返してもらう(後日のため)

 

 

 

 

こんな手書きのなぐり書きのような代物(しろもの)ではなくてもっとちゃんとしたきちんとした借用書が欲しいとお思いの方は公証役場に行かれることをお勧めします

公正役場で借用証書を作る

 

金銭消費貸借契約公正証書を作ります
作成にあたって、
執行認諾約款 しっこうにんだくやっかん
というものを付けてもらいます
このあたりは公証人はよく知っているので
これを言いさえすればやってもらえます

 

執行認諾約款とは
もしも約束通りお金を返せなかった時は
強制執行されてもいいです
という文言のことです。

これがあれば、
不動産を競売にかけたり、
給料を差し押さえたりが簡単にできます

 

もしも、

 

この執行約款付き公正証書が
作成されてなければ、
まず、裁判所に訴えをして、
認められてその勝訴判決がでてようやく
差押等という運びになります。
なので、
この公正証書を作成することによって
その数ヶ月の手間が省けるという
メリットがあります

 

また、借主名義の不動産があるならば
貸金額で、抵当権をつけてしまう
というのもありです。
これも、返してもらえなければ
競売を申し立てることができます
そもそもの裁判から始めることを思えば
わりと簡単にできます

 

裁判に勝ったとしても

 

しかしながら、裁判で勝っても、
お金も、
お金に換える財産も、
何にもない!
ということになると、
実はもうどうすることもできません

 

給料収入があるのであれば、
その給料を差し押さえることは可能ですが
それさえもないとしたら。

無い袖はふれない
ということになります

勝訴判決だけあってもどうにもなりません

 

ちなみに、
返してもらえるのが当たり前とお思いでしょうが
お金を借りるときには貸す側が強いですが
借りてしまえば
返さないという選択ができるため
借りた側が不思議な強さを発揮
します

無い袖はふれない、という荒業の他にさらに
自己破産をして免責決定借金を返さなくてよいという
裁判所のお墨付き・ただし誰でももらえるわけではなくもろもろ
条件があります
してしまえばもはやそれで
貸主は諦めるほかありません。

 

このようになってしまったら、
公正証書があろうが、
抵当権を設定してあろうが、
もう、どうにもなりません。

 

ですが、

返済する資力があるのに言を左右にして
借りたお金を返さない、とか、
借りてないのに返せと請求されるとか
返したのにまだ返済してもらってないと
言われるとか。

 

予め書面を作成することによって
のような理不尽な場合に備えることは
ある程度可能です。

こうした不快な局面を招かずに済みます

まさに、転ばぬ先の杖、です。

 

お金の貸し借りには
必ず借用証書を作りましょう。

 

借用証書、合意書、確認書等は
行政書士がお作りします

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