共有地は登記しなくてもよいのか

共有地は登記しなくてもよいのか

 

私道の共有

私道の共有は、宅地への進入路(いわゆる私道)をその私道を通行する数戸で共有するという登記のことです。

私道の持分の相続登記については、たとえばその持分がないと建物までの道路がないことになってしまい家の再築ができなかったりするので、この登記は重要であり、必要です。

 

ところで持分(もちぶん)とは?

持分というのは、たとえば、5人が等分で持っていたらそれぞれ「5分の1」が持分です。

登記簿の記載は

 持分5分の1 共有者片山りえ

と記載されます。

また、分譲地を販売する際に地主の好みによって

「持分4312分の243」とか、

桁数の多い、しかも約分のできない持分が設定されてることもあります。

このような進入路としての私道の持分については、持分が僅少であっても持ってさえいればよいと思われるので、100分の1くらいでも家の再築に問題はないと考えます。

 

しかし本日、話題にする共有地というのは、

入会地(いりあいち)的な共有地

のことです。

田舎などで例えば、筍(たけのこ)キノコ、などや伐木、採草のために、村落の全員が共同で利用できるものと考えられている山林や原野などのこと。

それらの土地に各戸の世帯主名(かつては戸主)で共有登記がされているもののことです。

 

このような共有地でも登記が必要ですか

とお尋ねがありました

 

共有地だから登記をしても無駄?

 

村落共同体全戸で持っている、山林、原野などの共有地については、相続による名義変更の登記をしたからといって、言ってみればどうということもないわけです。

(権利証というか、登記識別情報通知はできます)

「高額で売ることができるわけでもなく、

自分の資産になるわけでもないし、また、

名義を変更しないからといってさしあたって不利益があるわけでもなく、さらに、

他の共有者50人いてもほぼ全員、昭和初期になされた登記のままで、相続登記などしている人はいない。

以上を考えると、登記をやるだけ損なのではないか。」

というご相談です。

 

ちなみにこのような共有地は20人から50人くらいの共有であり、さらに、そのような形態で微妙に内容が異なっている土地が30筆とか40筆とか大量にあるのです。(土地によって、同じ人でも微妙に持分が異なる。土地によって所有していたり、しなかったりすることもある)

 

登記簿の記載はどのように?

 

さらにいうならば、現在は全部事項証明書(登記簿)はコンピュータ化されていてたとえ100人の共有であってもさらっと出てきます。

しかし、以前のブック式の手書きと和文タイプの混じった明治大正時代からの登記事項が延々と書き連ねてあるバインダータイプの登記簿だと、登記内容を確定するだけで一苦労です。

結果、未だ、改製不適合(かいせいふてきごう)ということで、コンピュータ化されていない登記簿に遭遇することもままあります

 

共有持分を全員分足していけば1(100%)になるはずなのに、なぜか、そうはならない。1より多かったり、少なかったりする。諸般の事情により。

 

このような土地にあたったときは、どうにもなりません。コンピュータ化されていないがゆえに司法書士の得意なインターネットで登記情報を調べるという技(ワザ)が使えません。

 

しばらく前にもこのような共有土地の案件があり、その区域一体が改製不適合のため、登記所窓口で大量に登記簿謄本を申請し、翌日受領のため再度赴き、事務所スタッフは登記所からカゴにいっぱいの謄本(このような登記簿謄本は、1筆が何十枚にもなる)を抱えて帰ってきたことがありました。スタッフは大丈夫でしたが、カゴがこわれそうでしたね。

 

村全体で登記の推進をすることも。

ある地域では、このような共有土地について、代々の自治会役員の主導で、所有者が亡くなったら相続の登記をするように促し、実家を手放して都会へ出ていく家に対しては自治会の費用でその持分を買い上げる、といった風で、見事な管理がされていました。

曰く、「先祖から営々と使ってきて恩義のある共有地だから、部落全員で責任をもって対処すべきだし、総意である」と。

常に登記簿は現状と一致しており、大したものだという他ありません。

本当に見事というか、頭が下がります。

 

結局は、登記は自分の権利

あるいは、自治会の指導や支持、あるいは応援がなくても、自分の責任において自らの信念に基づいて共有地の登記をする方がいます。

こちらはわりと多いです。やはり、どうせ自宅や自宅敷地の名義を変える必要があるのだから、一緒に済ませてしまおう、というのは、後日、別件で登記をするよりも実際上の費用としても割安に済むのです。

 

登記の費用は

登記をするにはそれなりの費用がかかります。

司法書士に依頼せずにご自分でなさるのであっても、登記の際に、国に対して登録免許税という税金を収めなければなりません。さらに、たとえば3代前の先祖の名前から現在の人の名義にするには、それなりに戸籍等を集めたり、相続権ある人達から書類をもらったり、するための費用がかかります。戸籍だけで数万円かかることもよくあります。相続をしない法定相続人から印鑑代を請求されることもあるようです。

 

相続登記の減税があるのか

 

ちなみに、現在のところ、相続について登録免許税の優遇措置が受けられます。

2021年3月31日まで。

 

現在の登録免許税の免税措置

土地について、法務大臣の指定する土地のうち評価額10万円以下のものについては、非課税とされました。

(租税特別措置法第84条の2の3第2項)

 

都市部では、節税効果としては大したことがないのかもしれません。

しかし、当方のような農村地帯だと、例えば、相続する筆50筆のうち、自宅以外はほぼ全部農地、そして、全ての評価額が10万円以下、などというケースだと、数万円以上の節税となります。

(これは筆数が多いからです。農地1筆で、評価額100000円の土地の相続だと、節税額は1000円にとどまります。)。

 

共有持分については、その持分の価格が10万円以下のときには、登録免許税が非課税となります。

(100万円の土地の持分を「10分の1」所有していたら、この場合は

登録免許税が非課税になります)

 

ご自分の土地が該当するかどうかについては、最寄りの法務局または、司法書士までおたずねください。

 

つまり、登記は自分の選択の結果である

特殊な事情がある場合は仕方ないとしても、自分の得にならないから、という理由で登記をしないのは、何だかな、という気がします、まあ、費用のかかることなので、強いておすすめはしませんが。

 

おそらく、ご自分が生まれた郷土の野原や山や森に、

お世話になった、またはお世話になっている、

という思いのある方ではないのでしょうね。