婚外子(非嫡出子)の相続持分

婚外子(非嫡出子)の相続持分

 

このほどの民法改正に先立ち、
平成25年に、
非嫡出子の法定相続分が嫡出子と同等に
引き上げられました。

(平成25年12月11日)

 

この法律は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます

 


法律の施行日は平成25年12月11日であるが、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする当時の民法900条4項但し書きの部分が憲法違反であるという最高裁決定がなされたのが9月4日であるため、その決定のあった日の翌日である平成25年9月5日以後の相続について適用するとされた。


 

それまでは、嫡出子の2分の1、と民法で
定められており、
かなり長い間何度も最高裁まで争いがあり
そしてようやく、
非嫡出子が嫡出子と同等の権利を持つことが
法律上で認められたわけです。

 

ところで、

 

非嫡出子

と聞いて、違和感ないのは、法律を少々かじったことがある人だと思います。

字面からさえ、知らなければ何のことやら判断つきかねる熟語です。

 

婚外子

と書けば、その漢字から類推して、結婚しないでできた子どものことか、と想像することができます。

 

妾の子

という言い方もあります。あと、

 

私生児とか。

 

父無し子

という言葉もあります。

 

意味合いはそれぞれ違ってきますが
どもの立場から見れば一緒です

 

面と向かって他人に向かってこのような言葉を使うことはあまりないと思いますが、かつては、テレビドラマなどでけっこう耳にしたものです。

夫の側に愛人ができて、愛人との間に一子が生まれ、一子は成長して愛憎のドラマが展開されるという。。。

 

相続分が嫡出子と同等になったからといって、そうした子どもたちの人権が守られるようになったかというのは、また、別の問題ですが。

 

 

憲法にそもそも違反していた

最高裁は、この決定(平成25年9月4日)によって、かつての民法900条4項但し書きが憲法違反であることを認めました。

 

つまり、同じ父親の子どもが、
母親が異なることを理由に
法定相続において半人前でしかないという
差別的な扱いがなされており、
しかもそれは、
そもそも法律レベルでなされていた差別
であった、ということです。

 


憲法14条1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


 

これは遺産分割の場で
同等の権利を主張できるようになった
ということですが、
単なる財産上のメリットだけにとどまらず
文字通り一人前扱いがされるようになった、
と理解してもよいかな、
という意味で期待が持てる感じがします。

期待というか、希望です。

 

いつから適用されているのか

この法改正の適用ですが、平成25年9月5日以降に相続が開始したものについて適用される、としています。

 

その前に開始した相続では絶対に駄目なの?

 

しかし、
不動産登記等の事務取扱いにおいては、
少々ことなった運用がされることも
ありそうです。

 

最高裁決定(平成25年9月4日)によれば、

 

1 「本件規定(非嫡出子2分の1)は、
遅くとも平成13年7月当時において、
憲法14条第1項に違反していたものと
いうべきである

旨が判示されています。

 

またさらに、

先例としての事実上の拘束性についても、

 

2「憲法に違反する法律は原則として
無効であり、
その法律に基づいてされた行為の効力も
否定されるべきものである
ことからすると、」

 

3「本件規定(非嫡出子2分の1)は、
本決定により
遅くとも平成13年7月当時において
憲法14条1項に違反していたと
判断される
以上、

 

4「本決定の
先例としての事実上の拘束性により、
上記当時(平成13年7月)以降は
無効であることとなり、

 

5「また、
本件規定に基づいてされた裁判や
合意の効力等も否定されることになろう

 

とされつつも、

 

6「本件規定(非嫡出子2分の1)を
前提としてされた遺産の分割の審判
その他の裁判、遺産の分割の協議その他の
合意等により確定的なものとなった
法律関係に影響を及ぼすものではない」

 

とされています。

 

平たく言うと、

 

確定的となってしまったものについて
遺憾ではあるが、
どうにもできない。
ということだろうと思われます。

 

ただ、登記手続き的には、

 

平成25年12月11日以降の
登記申請において、
平成13年7月1日以後に開始した
相続における

(ア)法定相続

に基づいて登記をするときは、
持ち分は嫡出子も非嫡出子も
同等として事務処理をする

 

(イ)法定相続以外の
遺言、遺産分割協議等

に基づいて登記をするときは、
その遺言や遺産分割等の内容に従って
事務処理をする 

 

ポイントは、上記6の
ただし確定的なものとなった法律関係に
影響を及ぼすものではない

の部分だと思います。

 

 

登記としては、以上を踏まえて粛々と
申請書を作るだけです。

つまり、たとえば、

昭和60年に開始した相続について
非嫡出子と嫡出子の持ち分を同等として
法定相続の書類を作ることはできません。

 

ですが、

 

こうした非嫡出子が登場する相続関係図に遭遇するたびに

 

勝ち目はないようにも思える戦いを経て
ここに至った当事者たちに対して

よくぞここまで辿りついた!と

その想いのひたむきさと深さに
ただただ頭が下がります