意思確認後の心変わり

あるいは高齢者の意思確認その2

意思確認後の心変わり!?

 

概ね、高齢の方は、
足が不自由だったりなどして、決済場所に出向いてくれないことがほとんどです

なので、決済の何日か前にご自宅に伺うなどして書類をお預かりすると同時に
意思等の確認を済ませておくことになります

当日は、ご本人の替わりにご家族が代理として出席したり、
または仲介の人が代金授受を任されていたり
そんな感じで進められることが多いです

ここで、ふと思うに、ありがたいことに司法書士はずいぶん信頼してもらっているな、と

信頼に背くことはしませんが、たまに、
信用できない、と言われることがあって
まあそれも仕方ないかと思っているわけです

以前からの知り合いだったり、何回か取引のお手伝いをさせてもらっている等であればわかりますが、
または、仲介に入っている宅建業者さんが
当方とずっとお付き合いがあるとか
信頼材料がある程度あるならばともかく、

全く初対面というか、初の取引で、
決済前に当方に書類をお預けいただく
というのは、
立場を変えれば、すごいことではあります
ありがたくも畏れ多いことです。

かといって、預かれないと、決済ができないわけです

こうしたとき、司法書士はエスクロー的というか売主からの書類を万全に揃えた段階で決済にのぞみ、買主に状況や事情を説明して、売買代金の振込を依頼するという流れです

そのあと、売主から、代金が入金になった旨の連絡を戴いて決済終了。登記申請へと向かうことになります

 

というわけで、決済の数日前に売主から書類を預かりますが。

決済の前に、

やっぱり気が変わったので、
書類を返してほしい、と言われることがあります(めったに、ないです)

どのタイミングでその申し出があったかによって、こちらの対応は分かれます

 

契約完了している。残金決済はまだ。

 

このときは、契約解除ということになるのでそれをお伝えして、違約金等が発生することを了解してもらう必要があります

ただ、司法書士の判断でそのあたりを勝手に進めることはありません

原則として当方が契約に立ち会ってるわけではないので、
契約がからむことは仲介業者さんに全面的におまかせということになります

いずれにしても、
司法書士の独断で、いったん、預かった書類を返却することはありえません。

 

残金決済終わり。でも登記前。

 

これは、書類の返却はできません。

買主の同意があれば、登記を保留することもできないわけではないですが、基本、決済日に登記は申請したいものです。

当日登記が出せなかったばかりに
万が一、
差し押さえとか、

担保がつけられてしまうとか、
二重売買されるとか、
何かとんでもない登記が入ってしまったときに言い訳ができなくなります。

ともかく代金の授受が完了してしまったら
原則として所有権は移転してしまっているので書類を返却することはできません。それどころか、
勝手に書類返却に応じて登記ができなくなったら、司法書士がその責任を負わなければなりません。

ただし、

登記が完了してしまっても、
契約解除することによって売買登記を解除して、
所有権を売主に戻す(元通りにする)ことは可能です

これには買主の同意協力が必要となります

 

いわゆる、まだら呆けが発覚!

高齢者の意思確認で、無事に意思確認は済んだものの実は、まだら呆け状態だったらしくその意思表示に問題があったということで、後日、売買契約自体が解除されることもないとは言えません。

これは、意思確認の問題というよりは
意思能力の問題なので、そのあたり当方は関与しませんが、
その意思確認の時点で売却意思が確認できれば、義務は果たせたという認識でいます。
具体的には、状況次第かと思いますが、契約は無効という判断がされるかもしれません。そこについては不案内で申し訳ないのですが

(そもそも事前に認知症であるというような情報があれば、売買契約自体が意思の欠缺によって無効とされるので、登記の代理はお引き受けできないわけです。)

 

あとで、認知症発症。

または、その意思確認の時点ではしっかりしていたのに、決済までの数週間の間に環境の激変があって、意思能力を欠くに至った場合はどうでしょうか。

高齢者は、急病などで、緊急入院等を余儀なくされるとそのストレスで痴呆状態に陥ることがあると言われています。わりと短期間で帰宅することができたときは、回復することが多いらしいですが。

意思確認の時点では、全く問題がなかったのであれば、そのまま決済に進みたいところですが、結局は、こちらも諸々の状況次第となります。

 

気が変わった

 

これは、高齢者の認知状態の悪化とは無関係の話です

 

気まぐれ、というか。

  • あのときは、そのつもりだった。
  • やっぱり売るのはやめたい。
  • 孫にプレゼントすることにしたい等。。

契約前であれば、全く問題ないです。

契約後であれば、
契約書の解除条項に従って解約手続きを行うことになります

また、さらにその途中で気が変わって、
孫には、売ったお金を上げたほうがいいような気がする等の理由で、再契約をするというようなこともあります

 

こうなると、
仲介も買主もわりと戦々恐々として、
一刻も早く決済をしてしまおう
となるか
しばらく様子を見よう
となるか
ウチ(仲介業者)では難しいようです
と業者が降りてしまうか

いずれかの対応をされることになります

 

気が変わったものは仕方がない、と私は思いますが、
契約書を作成してしまったら、あまり暢気なことは言えなくなります

 

やっぱり難しい意思確認

 

精神的、年齢的に問題がないと思われる人の意思の確認もよく考えると難しいものがあります

「そんなつもりじゃなかった」

このひとことはおそらく司法書士が恐れる言葉のベストスリーに入るのではないでしょうか

これを聞きたくないがために、私達は、
それぞれ工夫を凝らして
人・もの・意思の確認をする責務を果たしています

 

一番カンタンなのは、
怪しい話・微妙な案件は受けない。
これにつきます

 

施設にいるとか、長患いして入院期間が長いなど。
このような人は危ないことが多いので
最初から引き受けない同職もいます
でもやりすぎると仕事がなくなる

または、初めての仲介業者さんからの案件
これも、危ない可能性があります
でもやりすぎると仕事がなくなる

紹介のない仕事は受けない、と決めている同職もいます
でもやりすぎると仕事がなくなる

 

それぞれの熟考のはてに
それぞれの結論があります