抵当権を抹消しないでいると。。。

まだ抹消されていない抵当権、といったときに大きく二つに分かれます

 

A 自分の先祖か誰かの先祖がつけていた明治大正昭和初期時代に設定された抵当権
債権額5円とか

B ずっと前に返済し終わったのに、そのままにしてあった20~30年くらい前の抵当権
住宅ローンなど

 

Aの、明治時代の古い抵当権

このときは、

a  抵当権者が個人の場合と
b 昔の銀行風(?)の茂原商業無尽組合などの、法人の場合とで

 

手続きが多少変わってきます

 

いずれにしても、供託手続きによってカンタンに抹消できる場合があるので、
そのときは、非常にラクな手続きで済みます

 

a個人名の場合

 

明治大正の古い抵当権は、
抵当権者が行方不明であるという証明書があれば、

つまり、

お金を返したいのに受け取ってもらえないという受領不能を理由にして、
供託することができます(供託所に必要な供託金を納付する)

 

供託金額は、元本に利息、延滞金を合計した額で、この供託によって弁済の効果があります
現在の貨幣価値に換算して供託をするわけではないのでご安心ください

元金5円であれば、それをもとに計算するので
せいぜい供託すべきは、500円位でしょうか

抵当権の抹消手続きには、その供託書正本を付けることになります

 

b抵当権者が、法人名義

 

・現在の会社に引き継がれているとき

多くの銀行系の場合は、何度も合併や名称変更を繰り返して
あ~らびっくり、すぐそこの○○銀行が引き継いでいる、ということが多いです

 

この時は、

その○○銀行へ、登記記録を持参して、
この抵当権を抹消したいです、と相談すれば
抹消登記ができる書類一式を発行してもらえることが多いようです

このあたり、微妙というかデリケートな手続きとなることが多いので、
セルフで登記をキメルぞ、と意気込んでいても
司法書士の介入が必要だと言われることがあります。

・わからないとき

ですが、
どんなに探してもその法人の行先がわからないこともあります

このときは

調査したけど発見できなかったという上申書(印鑑証明書付き)を添付して、
個人の抵当権者が行方不明のときと同様に
供託をすることで抹消できます

 

令和3年の不動産登記法改正によって

施行日は令和5年4月1日です

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)
改正不動産登記法第70条の2
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、
法務省令で定める相当の調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないため
その法人と共同して先取特権、質権または抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、
被担保債権の弁済期から30年を経過し、
かつその法人の解散の日から30年を経過したときは、単独で当該登記の抹消を申請することができる

 

ということで、つまり、

  • 弁済期から30年経過
  • かつ、法人解散して30年経過
  • かつ、清算人の所在が不明

 

のときは、

所有者が単独で
抵当権の抹消登記を申請できる、
ということです

このときは、供託手続きは不要です

施行日は令和5年4月1日なので今しばらくお待ちください

 

このように古い形骸化した抵当権等を抹消できるための法律がいろいろあるのですが
これほどに古いわけではないからまだまだ
大丈夫、と思っているとひどい目にあいます

 

Bの、昭和30~40年代につけられた抵当権

 

お手元に抹消登記用として渡された書類一式が
まだそのまま残っているのなら、ことは非常にカンタンに進みます
(でも、微妙なときもあります)

ですが、

書類を預かった覚えもないし、
抵当権はそのまま残っているし。。。

という場合は、確かに心配になります

が、ほとんどの場合は、大丈夫です

抵当権がつけられたまま、その後差し押さえや競売手続きもされず現在も抹消されることなく残っているとしたら
その抵当権は、おそらく、
弁済は終わったものの抹消登記がされていないだけか、

弁済はともかく、
少なくとも時効消滅している公算が大きいです

 

もしも債権が弁済されないときは、
その抵当権に基づいて競売が行われて
所有権が競落した人に移ります

 

 

a 抵当権者が個人名のとき

 

その方がお元気であれば普通に手続きの協力依頼をすることになります。

拒まれたら、これも裁判にするほかありません。

また、
すでに死亡していたり、
行方不明だったりすると、またまた面倒なことになります

 

相続が開始していれば、相続人を捜し出し、
その方たち全員から同意を得る必要があります

全員です。

40人相続人がいれば、その全員です

2人しかいなくても、その全員です

なかには、

まだ返済してもらってないのでは?とか
当然、現在の貨幣価値に換算して弁済すべきなのでは?
と言い出す相続人がいたりします

いずれにしても全員の同意が得られないとき
その時点で時効が完成してさえいれば、
その相続人全員に対して、
時効を主張した裁判をおこすことになります

ほとんど、そこで争ってくる人はいません

時効の更新事由や完成猶予事由がないときは
つまり 時効が完成してしまっていたら
その人たちに勝ち目はないからです。

勝ち目はないのですが、それでも裁判が必要です

このような時に抹消登記をするためには
抵当権の抹消登記手続きをせよ、という判決をもらう他には手立てがないからです。

 

行方不明であれば、前述したように供託をして抹消、という手が使えるのですが、
これは、弁済期から20年経過していることが要件です。
さほど古くない抵当権の場合は、そこも微妙です。

また、そちらがOKだとしても
供託金額がけっこうな金額になります

明治時代のように、元金も
5円とか10円とかでは済まないので、
かなりの金額になります

そうすると、こちらも裁判をした方が早いということになります

b抵当権者が銀行などのとき

 

すでに消滅している法人であっても
その変遷をたどることが可能で、おそらく、
承継会社・銀行を探し当てることができます

そうしたときは、運がよければ、
抹消可能な書類の交付がされることがあります

運が悪いと、
弁済した証拠を示さなければ抹消書類交付はできない、と拒まれることもあります

弁済した証拠がないとしたら、これもまた裁判にするほかありません。

 

どうして抹消しなかったのか

 

明治時代の抵当権にしても、
昭和40年50年代の抵当権にしても、

まだ差し押さえ等がされてないということは
おそらく、弁済は終えているのでしょう。

そのときに、
借金は返し終わった、うれしいぞ
そのままにしてしまったわけですね。

 

もしも債権が弁済されないときは、
その抵当権に基づいて競売が行われて
所有権が競落した人に移ります

 

抵当権を設定する時は、
債権者も担保を確保するために真剣に登記をすることを考えますし、当然
債務者(所有者)の側もお金を借りるという喫緊の要請があったわけですから、
いわば死に物狂いで登記手続きに協力したわけです。

でも。

返済が終われば。

もう、いろいろな意味で
すっかり安心してしまうのは、当然ではあります。

うっかり忘れた。ということです。

そして、もう、過去に戻ってやり直すことはできません。

 

または、近頃は滅多に聞かない意見ですが、
30年ほど前はこのように主張する業者の方がけっこうな割合でおいででしたよ

後順位で抵当権がつけられることを防ぐために、
実体のない抵当権をつけたり、または、
弁済が終わった抵当権を抹消しないでわざとそのままにする、という裏技があったようです。

特に、個人名での抵当権はこれを目的としたものがけっこうあったようで、
いわば安全パイとして抹消せずに意図的に放置しておいたものが、

いまや、抹消しようにも

相続人が協力しない、とか、
相続人が何人も行方不明とか、

どうにもならずに惨憺たる様相を呈している事案もあります

 

 

ではどうするか

 

抹消していない古い抵当権については、
自動的に抹消されるとか、
いわば登記官が職権で抹消というような有難い法改正は
今のところなされる見込みはありません。

今できることは、
今まさに抹消できる抵当権を放置しない、ということにつきます

用の済んだ抵当権を
そのままにしておいても良いことは一つもありません。

 

住宅ローンの返済が終わって
銀行から書類一式が届いたら
その足で司法書士を訪ねましょう。

ご自身で手続きができる人は(やってみたい人は)
その足で、法務局へ行きましょう

 

貰ったばかりの書類一式があれば、
ほとんどはそのまま抹消登記が可能です。

が、数か月経過すると、

銀行の代表者が変わったり、
今の時代ですから、他の銀行に吸収合併されてしまったり、
想定外のいろいろなことが勃発しかねません

 

だからといって、抹消登記ができなくなるわけではありませんが、
ひと手間増えたり、面倒になったりするだけです

だけ、などというレベルではないですね。
そのように放置している間にとんでもなくさらに面倒になって、
しまいには弁護士に依頼したり、
裁判を起こしたりしなければ抹消手続きができなくなることもあります

カンタンにできる内に、今すぐに。

善は急げといいます。
抹消登記はできるだけ速やかに片づけてしまいましょう

 

 

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