法定相続をする、とは?

法定相続をするとは?

 

法定相続とは、法によって定められた相続分によって相続するということです。

 

 

我が国は法治国家なので、相続は必ず法定相続によってなされなければならない、それは法によって定められているので、必ず法定相続ですべきなのだ、という勘違いをしている方の話を聞きました。勘違いです、完全に

 

 

その方は、そのようにはしたくないのに法定相続でやらなければならないものだと思いこんでいたようなのです。ですから、そのようにご説明したところ、非常に驚き、かつ喜んでいただけました。

 

それって何?

法定相続というのは、法によって定められた相続人、そして相続分のことです。

 

 

もっとわかりやすく

簡単な家族構成で説明します

 

Aさんがなくなり、

残されたのは、奥さんのB子さんと子供がCとD

 

 

法定相続人は、
妻であるB子と
子供C、Dの
合計3人

 

それぞれの法定相続分は、
妻B子 2分の1
子供C 4分の1
子供D 4分の1

 

で、例えば、不動産なり、預貯金なりのAさんの遺した相続財産をこの相続分でわけることを法定相続する、といいます

 

そういえば相続財産とは何?

Aさんが死亡したときにAさんが所有する(所有した)財産のすべてのことです。

預貯金や、現金、不動産、壺とか絵画、株・有価証券、すべてです。靴下とか。

腹筋用ベンチとか。

また、銀行から住宅ローンを借りていたとしたら、あと、街金から高利の借金をしていたとしたら、それらも皆マイナスではありますが、相続財産です。連帯保証債務とか。

 

民法896条 
相続人は、相続開始のとき(この場合Aさん死亡の時のこと)から被相続人(Aさん)の財産に属した一切の権利義務(プラスもマイナスも)を承継する。
ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

相続されない権利義務は、

委任者受任者たる地位
代理人たる地位
組合員たる地位
身元保証人の地位
財産分与請求権
扶養の権利義務 など。

 

ちなみに、妻の法定相続分が2分の1になったのは、昭和56年からです
それまでは、妻の法定相続分は、3分の1でした。

この法改正があってからすでに40年近くたっていますが、先日、この時代の法定相続分を計算する仕事があったもので。念のため。

これは、夫が亡くなった日付が昭和55年12月31日までであれば、その妻の法定相続分は3分の1、ということです。

手続きをするのが今年だとしても、相続開始日(亡くなった日)が基準となるので、お気をつけください。

 

 

 

法定相続・具体的に言うと?

 

1000万の貯金があったとして、

妻B子 500万円

子供CとDはそれぞれ250万円ずつ

ということです。

 

他の分け方もできるのでは?!

ですが、これとはまるで異なった分け方をすることもできます。

 

遺言がある

Aさんは、その遺言で、例えば妻に全額を遺したり、お気に入りの長男だけにすべてを譲ったり、はたまたどこかの慈善団体に全額寄付をすることもできます

 

(ですが、自分の法定相続分を侵害された妻や子供はそれに対して遺留分侵害額の請求をすることができます。この相続関係の場合は、Aさんの自由に処分できるのは、全体の2分の1まで。遺留分侵害額の請求をされなかったとしたら、100%)

 

遺産分割協議をする

法定相続人の全員(B子、C、D)の相談で、法定相続分と異なる分割をすることができます
家はB子に、土地は長男Cに、預貯金はB子と次男Dが2分の1ずつ、というように。

分割という言葉がはいるので、必ず全員で分けなければいけないとお思いの方もおいでですが、そうではありません。

全員で協議をする必要はありますが、その結果は、たった一人がすべてを取得するという内容であっても全く問題ありません。

実際、当事務所においでになる方は
「すべてを〇〇が取得する(他の相続人は何も相続しない)」という内容の協議をなさっていることが多いです。

 

相続放棄をする

他の相続人に譲るのもイマイチ面倒でいやだ、と思えば、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内ならば、裁判所で、相続放棄をすることもできます。

遡って被相続人が亡くなったときから、相続人ではなかったことになります。

 

裁判所で放棄をするということは、すべての義務権利について、相続権を放棄するということです。
ですが、
一度、裁判所で放棄をしてしまったら、取り消すことはできません。
なので、よくよく考えたいところですが、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内にしなければなりません。
例外はありますが、原則として3ヶ月なので、あれやこれやばたばたしているうちに、3ヶ月はあっという間です。

 

 

というわけで、必ずしも法定相続分で相続しなければいけないということではありません。

事情があって、どうしても家の財産は継ぎたくない、とご心配だった人は、

他の相続人にすべてを任せることもできます。

 

 

登記を法定相続でするとき

法定相続人が5人くらいいるとして、相談がまとまらないと、いつまでたっても不動産の相続登記ができないことになります。

 

夫が死亡し、残された妻は自宅を単独で取得することを主張。現金預貯金はほとんどない状況。しかし、子供2人および前妻の子供2人はそれぞれ、法定相続持分に応じた金額との引き換えでなければ納得できない、ハンコは押せないという。このままでは支払うべき現金の持ち合わせがないため、妻の一人名義にすることができません。

 

このように話し合いがまとまらないときは、
単独所有にすることはできませんが、
法定相続人全員の共有名義に登記することはできます

法定相続分は妻8分の4
子供はそれぞれ8分の1ずつです。

 

この登記をするにあたって、子どもたちの協力が得られないとしても、妻だけの登記委任状があれば、法定相続による登記は可能です。

ただし、妻の分しか登記識別情報(権利証)は通知されません。

登記識別情報が妻の分しかない、といっても、登記自体は、この5人の共同相続という形でされます。

 

ちなみに、登記識別情報が発行されないからといって、特段、不利益はありません。そもそも登記の際に申出ることによって、不発行の措置を取ることも可能なので、ないからといって、将来それが問題になることはありません。

ですが、不発行にすると、あとで気が変わってやっぱり欲しくなったときには、もうどうにもなりません。後日の新規発行とか、紛失(失念)したからといって再発行は、制度上ありません。

 

ただ、売却するとか、抵当権をつけるとか、登記識別情報の提供を求められる登記をする際には、登記識別情報の代わりになる措置が必要になってきます。(そこで、別途、費用が発生することがあるので、不利益といえば、不利益ではあります)

 

法定相続は知らないうちにされてしまうこともある

 

共同相続人の誰も相続登記を頼んだ覚えがないのに、法定相続登記がされてしまうことがあります。
代表的なのが、差押えの前段階としての相続登記。
差押え権者は相続人に代わって法定相続登記をすることができます。
この場合は、登記識別情報は通知されません。
あとで、差押が取下げられて差押の登記が抹消された場合でも、法定相続登記はそのまま残ります。
「誰も頼んでないのに不思議ね~権利証も見たことないわ」と数十年の後に、相続人の間で話題になることがあります。

 

人生の総決算のような、相続手続きですが、ですが、

相続税のご心配は、税理士までご相談ください

当方でお手伝いできるのは、相続の登記だけです。

どうか、ご理解いただけますよう、お願いいたします。