登記の書類を処分したい

登記に使った書類だが、どう考えても重要ではない書類を捨てたい
似たような古い登記の書類が山のようにあるが実際に必要な書類は一体どれなのかわからない

 

さっぱりしたい

いわゆる、だん・しゃ・りをしたい

 

世の中には登記済証(まだ効力のあるもの)いわば権利証ですが、これさえも意図的に廃棄してしまう人もいますが。
権利証とは違って明らかにいらなそうに見えても本当にいらないものなのか、いざ処分するとなると、けっこう、心配になるものです

意図的に権利証を廃棄する人は不動産登記のことをよく知っていてそのことがどのようなメリット・デメリットがあるかをわかっている人に限られると思います
通常たとえば今住んでる自分の家の権利証を火中に投じるなどということは気持ち的にしにくいものでしょうから

 

それはともかく。

 

登記に関わる司法書士や土地家屋調査士は
登記が完了すると、権利証登記識別情報はもちろんのこと
権利証等が作成されない登記所有権移転登記相続登記抵当権設定登記以外は権利証は作成されないも多いため、それに付随関連した書類一式をいわば登記の成果物として依頼人に返却交付します

預かったものをそのまま返却する場合と登記に関連して生成された書類が含まれることもあります

 

登記完了証だけ。

 

登記が完了すると、どのような登記でも登記完了証が交付されます

それだけだと、ちょっと、寂しいかも。
と我々は案じるわけです。

 

寂しいというのは、見た目もそうですが
登記をしたという証(あかし)が登記完了証(簡単なものだと、A4の紙1枚だけ)だけでは、心もとないと言うか、達成感がないというか。

まあ、人によっていろいろですが。

ともかく、本来ならばなくても良いかも知れない書類をいわば母心(ははごころ)からいろいろとお返ししてしまうことになります

不動産業者さんであれば、いらない、とはっきり意思表示してくれます。

ところが、

一般のお客さまだと、その書類が必要なものなのかそれほどではないのか実はもう不要なのかわかりません。
よって、お返ししたものが拒まれることはないのです。つまり、お客様の手元には膨大な必要性の不明な書類が堆積していくことになります

 

登記が完了すると

 

登記には、いろいろな種類があって、それぞれが完了するたびにその関連書類が依頼人に返却されます

これも、本人申請で自分でやった登記ならば必要に応じて保存するなり廃棄するなり判断できるかと思いますが、司法書士や土地家屋調査士に頼んでやってもらった登記となると成果物がけっこう手元に残ります

広~い所有地を売却しようとして、分筆して地目変更して所有権移転の登記をする。また別の区画を売って分筆して地目変更して所有権移転をする、などとしていると、あっという間に登記の書類(申請書の控え~副本、登記完了証、登記前後の各登記簿謄本、登記前後の公図測量図等等の成果物)の山ができます

たまに、権利証がどれなのか見てほしいということで書類かばんを1,2個お持ちになる方がいらっしゃいます。しかし全てが単なる登記成果物という名の書類。特に多いのが登記前の登記簿謄本・そのコピー、登記後の登記簿謄本・そのコピー。公図地図のコピー。これだけあるのに権利証だけは無いということもあります

 

でも大事なことは

 

本当は、登記簿の記載さえできていれば、
あとは、おまけのようなものです
登記記録が明確に正確にされていればよいわけです。
ほとんどの成果物附属書類は、いわば、付け足しと言っても過言ではないでしょう。いや、過言かもしれないです。。。。

ちょっと登記をするといろいろと書類が出来たり、控えをとったりしているうちに、たちどころに書類の山がひとつふたつ出来上がります

 

 

たとえば、

 

こんな登記にこんな書類

 

・土地を2つに分ける分筆登記

完了後は、登記完了証のほかに、測量図面、地図、公図、登記簿謄本(登記事項証明書)必要があれば、境界確定に関する調査書、立ち会い記録など、けっこうな厚みになることもあります この登記によっていろいろと書類ができますが権利証(登記識別情報通知)は作成されません。

 

・複数の土地を一つにする合筆登記

完了後は、登記完了証のほかに、権利証・登記識別情報新しくできたものと、権利が空(カラ)になったもの 測量図面、地図、公図、登記簿謄本(登記事項証明書)必要があれば、境界確定に関する調査書、立ち会い記録

分筆登記と異なるのは、権利証・登記識別情報が生成されることです

 

・分筆と合筆

土地家屋調査士が関わる登記でこの2つ(分筆・合筆)は我々一般人から見たら似たようなものと思いますが。

合筆登記では、権利証(登記識別情報)が作成されることになります

なお土地家屋調査士が申請する登記で、権利証(登記識別情報)が作成されるのは、この登記(合筆)だけです。

分筆登記、地目変更登記、表題登記では、権利証はできません

 

・抵当権を抹消する抹消登記

完了後は、登記完了証のほかに、弁済証書、原契約書、火災保険に関する書類、利率に関する覚書、など。

 

・住所や、氏名を変更する表示変更登記

完了後に返却されるのは、基本的に登記完了証だけ。

原本を還付してもらう手続きをとれば、このほかに、その登記に使用した住民票、戸籍、戸籍附票、不在籍不在住証明書、町名地番変更証明書など。

 

・売買や贈与による所有権移転登記

完了後は、完了証のほかに、権利証(登記識別情報)買った人には権利が生きている権利証・売った人は権利が空っぽの権利証 売買契約書 重要事項説明書 売買代金の領収書(またはその控え) 登記費用の領収書 公図 地積測量図 地図

仲介料の領収書 固定資産税の清算金の領収書(またはその控え)

 

抵当権設定

完了後は、完了証のほかに、設定証書(または写し)登記簿謄本、権利証(登記識別情報)借用証書など

 

相続登記

完了証のほかに、権利証(登記識別情報)遺産分割協議書 戸籍等一式 登記簿謄本(登記事項証明書)

 

権利者・義務者の構造をとる登記においては、権利者と義務者では、返却される書類が異なります

概ね、権利者側に、保存すべき重要書類が返却されます

 

実は、捨てても問題ない登記書類

 

登記内容が申請したとおりに登記簿に記録されさえすれば、実は、書類としてはあとは大して重要なものはありません

この登記簿の記録が何よりも重要なものです

 

たとえば、

地目変更申請した通りに、
地目が変更されているか

相続登記申請した通りに、
相続登記がなされているか

 

それらが、確認できれば、権利証でさえも
まあ、二の次のことです

どんなに立派な表紙のついた権利証(的なもの)が作成されていたとしても、登記簿に記載記録がなされていなければ、それは、権利証ではありません。
一文の値打ちもないものです(かつては、このような手口での詐欺がされたこともあったらしい)

 

 

 

では権利証はなんのために

 

権利証・登記識別情報通知は、
その権利を誰かに譲ったり、
担保をつけたりの際に必要となる書類ですが
モノである以上、当然ですが
紛失したり焼失したりすることがあります

なので、

権利証なしでも問題なくそれらの手続きは
可能です。ご心配は無用です
別途、費用がかかったり、その他面倒なことはありますが

 

なお、持っていると盗難の危険があるということで、権利証・登記識別情報をあえて廃棄したり、失効措置をとる人もいます。

廃棄や失効したからといって、特段、
問題は生じません。

ただひとつ困るかなと思うのは、その所有者亡き後、その物件を所有している事実がわからなくなる可能性があるということです

 

役所からの連絡を待っていても

 

課税されていれば、毎年、固定資産税納税通知が住所地に送られてくるのでどこにどんな不動産を所有しているか概ね把握できます
共有物件については、全員に通知されるわけではありません。特に道路等非課税物件は文字通り非課税なので通知されないのでご注意を

ただし、評価額の低い山林とか雑種地で課税標準額が免税点を下回っているときは、納税通知自体がされません。

北海道に広い原野を所有していたとしても
その土地が免税点以下であったとしたら
納税通知は送付されないということです。

そんなときに、

権利証もないし固定資産税も請求されない
となったら、家族がそのことを知らなければ
どうにもならないことになります。

所有者不明土地はこのようにしてできあがります

権利証がないことで被る最大の不利益はこれかな、と個人的には思っています

 

 

では、捨ててはいけない書類は?

 

それ以外で将来的に問題になることがあるかな、と思うのは、

所有権移転の際の附属書類です

 

権利証は、前述したような理由で、
無くなっても特に困ることはありませんが

将来、たとえば、
売買について、
契約不履行だと訴えられた

とか。

代金をもらってないと二重に請求をされた

とか。

 

こうなってくると、ここで権利証が
あってもなくてもさほどの問題にはなりません。

ですが、

契約書がない、とか、領収書(その控え)
がないとか。。。

相手方の勘違い等によって、
二重に請求をされたり、
余計な費用を求められたりしたときに
つまり、裁判になったときに、
証拠書類の類がすべてない状態だと
こちらの正当性を主張することができません

契約書や領収書(またはその控)は
争いが生じたときは大事な証拠です

当事者の証言や立会人の証言も大事な
証拠ですが、なにより、
書証(書類の証拠)は強いです。

 

まあ、登記をした司法書士が関係書類を保存していたり、同じく、仲介業者が全ての書類をコピーして保管していたり、そのようなことでもあればなんとかなるかも知れませんが
何年もの間それを期待するのは、少々無理があるし、そもそも完了した取引・事件の記録を保存しておくのは、法律上要求されていても保存しない人もいるのであまり期待しないほうがよいかもしれません。
当方でも、契約書や領収書のコピー等の事件記録は法律上の要請期間は保存しますが、それ以上は期待されても。。。。困ります


困りますが、裁判というものは、忘れた頃にやってくるものです。

 

当事者にしてもたとえば、やっかいな物件が売れてよかったとホッとしてはや数年。その頃になって、買受人(物件の現在の所有者)からクレームを言われてもその書類一切が処分済みだったとしたら、お手上げではないでしょうか。

また、税金の申告時に売買契約書、領収書は必要になることがあります

 

まとめると

 

登記書類は、いつまで残しておくか

 

全くの私見ですが。

 

いずれも登記申請が登記記録に正確に
反映されていることが前提です

 

  • 抵当権抹消関係     不要
  • 地目変更等表題変更関係  不要
  • 住所変更 氏名変更関係
    附属書類は保管
    再度必要になったときに保存年限経過等により再取得できないものがあるため
  • 所有権移転(売買 贈与)
    附属書類は保管
    何かを立証するために必要となる可能性があるため
  • 相続登記
    戸籍等・遺産分割協議書等は保管
    将来、遺産分割等の合意を証明するため
    後日、登記もれが発見された場合に備える

    いずれも登記申請が登記記録に正確に
    反映されていることが前提です

 

まとめると、

その登記が申請した通りに
記録されていることを確認できれば
その登記の申請書附属書類関係は不要

 

ただし、

将来争いが起こる可能性を
否定できないもの(売買とか相続とか)
附属書類を半永久的に保管
(50年くらい?)

 

こうした書類の保存は、転ばぬ先の杖では
ありますが、
まわり中を杖にかこまれてしまうと
前に進めません。

さっぱりしたいですよね。

書類の処分について、
ご自身で判断が難しいとお思いでしたら
どうぞお気軽にご相談ください