登記書類を断捨離する

登記の書類を断捨離するぞ!!!

 

書類というものは気づいた時には大きな山になりがちです
重要書類・いらない書類・判断に迷う書類・何だかわからない書類・・・・

いっそ全部まとめて捨ててしまえ、と思いがちですが(思いませんか?)だからといって廃棄してしまったら再発行が困難なものもある
その時になって泣くのは避けたい、というようなことを考えると
書類の断捨離は非常に悩ましいものではあります

 

不動産関係の書類はこのように増殖する

 

たとえば、これからマイホームを買う方であれば、

 

・業者さんとの媒介契約書物件の公図所在図建物図面配置図土地の登記簿謄本契約書重要事項説明書固定資産税の日割計算書登記の見積書

・そして売買の残金決済が終了すれば、建物に付属する電化製品そのほかについての説明書もろもろの領収書類引渡書の写し決済立会書類の写しなど、自治会入会の案内からごみの捨て方防災関連の地図一式

・登記が終われば権利証(登記識別情報通知)新しい登記簿謄本評価額通知書家屋の軽減証明書などが加わります

・さらに隣地との境界確認作業などが入ると土地家屋調査士さんから分厚い境界確認立会証書的なものも渡されます

家1軒でこんな感じです

 

土地を何カ所も購入したり、
先祖からの土地が大量にあるという場合は
さらに悲惨かもしれません。

それらの売買や、贈与や相続やらの権利証やそのたびに増える登記簿謄本
念のために自作したそれぞれのコピーなど。

または銀行からの借金などあれば、
その契約書弁済証書抵当権の書類抹消しましたという書類新たな登記簿謄本さらに念のため自作したそれぞれのコピーなど。

小さな鞄ひとつには収まらないくらいの登記書類の小山ができあがります

 

ここから、「このほど売却が決まったので権利証を探しだす。」という行為は砂漠の砂粒をさがすほどではないにしろ、あまり心躍る作業ではないでしょう

 

数代前の所有者から引き続いて保存されたという上記のような書類の中から
必要な権利証1冊を探すという作業をしたことがあります。それだけのものをどこに保存なさっていたかはわかりませんが

全部を重ねて広げるのに(完全に平面上に置くことは部数が多すぎて不可能なので倒れない程度に重ねて広げたもの)畳1畳の広さをもってしても収まりません。

このような探索に駆り出されたことは何度かあります
どれを捨ててよいのかわからないから全部捨てずにとってあるという方は実はけっこう多いのです

収納場所さえ潤沢にあるのであれば、まあ、それもひとつの選択肢ではあると思います

 

領収書は保存年限が法定されているので、それに従って保存するのが一般的です

登記簿謄本は必要な時に取得できるので、古いものは基本、不要だと思います

公図も同様です

ただし、登記の書類の再取得に関しては、取得時の最新のものしか入手することはできません。

閉鎖謄本であれば、最後の状態のものがいつでも取得できますが、それ以降の現在の謄本については、1年前の記載状況のものがほしい、といってもそれは不可能です

しかし、よほど特異な状況でなければそのような登記簿が必要になることはないので、こちらも断捨離の対象としてよいかと思います

 

やはり一番悩ましいのが権利証
これは、再発行再取得ができないとされている代表格です

 

所有権等の権利証(登記識別情報通知)

 

これは大事なものですが、この大事さ、というのは、なんというか、微妙なものです。

金銀財宝・お金・貴金属とか

免許証とか、家族のアルバム、思い出の手紙とか

これらのような大事さとは全く異なります

 

権利証(登記識別情報)は、

誰かに権利を譲るとき、
抵当権をつけるとき、
その権利を抹消するときに登記手続き上必要とされるものです。

必要とされるのですが、なければ手続きができないものではありません

それなりの別途の手続きが必要とされることになるし、費用も新たに発生することになることもあります。
が、ないからといって、それらの登記ができなくなることは絶対にありません。

たとえば運転免許なしで車を運転するとか
医師免許なしで、外科手術をするとか
そのようなときのそれがなければ致命的な欠落につながる重要さとは、全く異なります。

そのような意味では権利証は大事なものではないです。
代替手段があるので。

そして、現在の不動産登記法のもとでは、
記識別情報を通知しない(登記識別情報通知の不発行)選択も普通にできるのです

 


(登記識別情報の通知)
不動産登記法第21条
登記官は(中略)その登記を完了したときは速やかにその申請人に対し、登記にかかる登記識別情報を通知しなければならない。ただしその申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合は、この限りでない。


 

なので、将来必要になったときにそれなりの不利益を受け入れる覚悟があるのであれば、断捨離もやむないかもと考えます(特にお勧めしているわけではありません。お止めもしませんが。)

 

ここでひとつ、終活する方へ。

 

権利証を断捨離してしまうと、所有する不動産を子孫に対して明らかにしておかない限り
将来その土地は所有者不明土地になります。
その情報は子孫と共有しておいた方がよいです。

役所から名寄せ帳を取り寄せることもできますが
日本中の役所からそれをすることは現実的ではありません。

ある程度の課税がされている土地であれば、固定資産税の納付書が届けられますが、
評価の安い非課税土地だとそれさえも届かないため、
情報もなく、権利証もない状態だとどうにもならないかもしれないです。

 

所有不動産記録証明制度

 

しかしながら、朗報です

改正された不動産登記法において、
所有不動産記録証明制度という法律が新設されました。
新不動産登記法第119条の2(まだ施行されていません)

亡くなった人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化して登記所が証明してくれる制度です
(相続人から交付請求が可能。詳細は未定です。)

 

分筆・合筆の完了証など

 

・分筆(ぶんぴつ)登記や建物の表題部の登記は成果物としては
図面の他は、完了しましたというものだけなので
特段、大事なものではありません

 

・一方、分筆と異なり、
合筆(ごうひつ)登記の方は、何しろ登記識別情報が通知される登記なので、
通常の所有権等の登記識別情報と全く同等に大事なものです

以前は、
申請書副本に大きめの法務局の印判が押されるだけだったために、うっかり分筆登記と似たようなものだと思って、
よく紛失というか、廃棄処分などされた方がいました。
しかし現在では、この合筆登記によって必ず登記識別情報通知が発行されるため、こうした勘違いは激減したと思われます

 

合筆登記は、つまり、所有権の登記です
種類は異なるものの、
売買とか贈与でできた権利証~登記識別情報通知と同じようなものです

 

登記簿謄本

 

これは手数料を支払えば、最新のものがいつでも取得できます

登記が完了すると、司法書士や土地家屋調査士は、一応、依頼をうけた全部の筆の登記簿謄本を取得することが多いです
(コンピュータ処理となった現在はそうでもない印象があります)

なので、適切に処理をしないと何かの登記をするたびにどんどん増えていきます。

謄本を証明書として求められる時は、通常、3か月以内に発行されたもの、と指定されるので、
結局はその必要なときに取得することになります。
古いものは、特殊な用途に使用するのでもなければ、断捨離対象です

 

隣地との境界に関する書類

 

この中には、将来のトラブルに備えて、
保存しておいた方がよい書類が含まれています。
(たぶん。)

 

売買契約書

 

むしろ、権利証よりも、こちらの方が重要かと個人的には思います

特に、現在住んでいる住居の売買契約書

 

万が一、何かの訴訟に巻き込まれたときに、所有権を証明するのは、権利証ではありません。
(その時に、そのような登記をした、というしるしに過ぎません)

証明するには登記簿を取得すれば用が足ります。ただ、権利証があっても、登記簿を取得しても、売買当時の契約内容について証明することは不可能です

なので、できれば契約書類は、保管することをおすすめします

 

・似ていますが、住宅ローンを借りたときの金銭消費貸借証書や保証委託契約書などは、
ローン返済が終われば、基本的にいらないものです

 

領収書

 

将来、お金を支払ったことが問題になるかもしれないという危惧があれば、捨ててはいけません。
税務関係書類としての保存年限にかかわらず、支払ったことを証明する証拠として必要になるかもです

なので、6年7年たっていたとしても、もしもその売買で契約書等をきちんと作成してなかったという事情があればなおのこと、もうしばらく保管した方がよいかもしれません

 

まとめる

 

断捨離は、楽しいです。
山積みされた書類が一掃された時の爽快感は
まさに長雨の後の快晴の空、のようです。

結果、油断をすると暴走することがあります

弾みがつくと、なかなか止まれません
トホホ、、という事態になりませんように

 

ご健闘をお祈りします