相続法改正ベスト7!(私選)

相続法改正ベスト7(私選)

 

民法が改正になりましたが、未だ施行前の
ものもある中、そして
他にも重要な改正ポイントはありますが
とりあえずのベスト7。

 

1 自筆遺言書の方式緩和

民法968条 
2019年(平成31年)1月13日から施行

 

かつては、遺言書の全文について
自書することが要求されていました

→ 改正後は →

遺言の本文についてはいままでどおり
自筆が必要です。しかし、
一番分量の多いと思われる
物件明細や
預金通帳(預貯金の口座情報)については
ワープロで作成したものや、
コピーなどでOK
とされました(万歳!)

 

遺言書はたとえばこのように書きますが

本文の一部~
長女Aには後記物件1から5を相続させる
長男Bには後記物件6から9を相続させる

このあとの本文以外の後記物件の部分
(自書部分ではなくても大丈夫な箇所)
については、
各ページに本人の自筆での
署名押印が必要なので、お忘れなく。

この部分が10枚も20枚もあったら面倒ですが従来のように全文自書が求められていたことを思えば非常に楽なものです

 

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2 相続の効力等(対抗要件)の見直し

民法899条の2
2019年(令和元年)7月1日から施行

 

「相続させる旨の遺言による権利の承継」は登記なくして第三者に対抗できるという判例がありました。

→ この改正によって →

これも対抗関係(登記の先後で)
ということに変更
されました。要注意です

★なお、遺産分割や遺贈による権利の承継は従前と変わらず対抗関係(変更なし)

 

3 遺産分割前の預貯金の払い戻し

民法909条の2 
2019年(令和元年)7月1日から施行

→ この改正によって →

 

各銀行につき
預金額× 1/3 × 法定相続分 まで
相続人それぞれが遺産分割協議なしで
おろせることになりました。

この改正法施行時点(2019年7月1日)で
既に相続が発生していても、
この日付以降であれば銀行で手続きさえすればこの払い戻しが受けられます
ただし、ひとつの銀行につき、
1人150万円まで

 

たとえば、
竹の子銀行に
1200万の預金があった場合。
親と子供2人が相続人だった場合は
法定相続分は、親が2分の1
子供はそれぞれ4分の1ずつです

なので、

親は、
1200万円×1/3×1/2
=200万円→150万円までOK

子供は、
1200万円×1/3×1/4
=100万円→100万円までOK

それぞれ、単独で下ろすことが可能です

詳細は金融機関まで。

戸籍などが必要です。手ぶらでいきなり行ってもだめです

 

さらに、もう少し大きな額が
必要とされるような場合は、

保全処分の要件が緩和に
家事事件手続法200条3項
2019年(令和元年)7月1日から施行

家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件緩和が行われたため他の共同相続人の利益を害しない限り家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。
払い戻し額に上限はありません

家庭裁判所に
遺産分割調停・審判を申し立てた上で
預貯金の仮払いの申立をします

相続債務弁済のためなど、
仮払いの必要性があることの疎明(そめい)
証明ほど厳格ではないが一応確からしいという程度の証明
が必要とされています。


家事事件手続法200条3項

3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判または調停の申立があった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第466条の5第1項に規定する預貯金債権・・普通に考える預金貯金のこと・・をいう)を当該申立をした者または相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立により、遺産に属する特定の預貯金債権の全部または一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

 

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4 遺留分(いりゅうぶん)制度の見直し

民法1046条 
2019年(令和元年)7月1日から施行

従前は、
遺留分減殺(げんさい)請求することにより
遺留分相当額で
不動産の持分を移転する登記が行われたり
しました
現物返還が原則だったためです。
選択肢として金銭での返還も可能でした

→ 改正後は →

遺留分を侵害された場合は、
請求できるのは
侵害額に相当する金銭のみ
されました

 

5 相続人以外の者の貢献の見直し

民法1050条
(特別寄与者 特別寄与料の創設)
2019(令和元年)7月1日から施行

 

以前は、
たとえば相続権のないお嫁さんが
どんなに義父の介護をしても、
それが相続、遺産分割の際に
考慮されることはありませんでした
請求することもできませんでした
(法的根拠がなかったため)

→ 改正後は →

相続開始後、相続人に対し、
特別寄与者の寄与に応じた額の
金銭の支払いを請求できることに
なりました

相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月経過または相続開始から1年間経過したときはできなくなります

請求できるのは、被相続人の親族
限ります

よって、
内縁の配偶者の連れ子などは、
該当しません(請求できないということ)

各相続人は、法定相続分に応じて
特別寄与料を負担することになります

協議が調わないときは、
家庭裁判所に協議に代わる処分を
請求することによって
特別寄与料をうけることが可能です

 

遺産分割協議自体は、これまでと同様
共同相続人間で行います。その上で、
特別寄与者からの
相続人に対する金銭請求を
認めることにしたものです

 

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 配偶者居住権

民法1028条 
2020年(令和2年)4月1日から施行

配偶者の死後、
死亡時に居住していた建物
被相続人名義または被相続人と配偶者の共有名義に限る
を無償で使用収益できる権利のことです

 

遺産分割協議または、遺贈によって
取得することができます

 

 

上記の配偶者居住権(長期)と異なる、
短期居住権も創設されました↓

配偶者短期居住権 民法1037条

遺産分割協議によりその建物の帰属が確定した日または相続開始のときから6ヶ月を経過する日のどちらか遅い日まで無償で使用する権利を有する。

条件被相続人名義の建物に相続開始の時に無償で居住していたことを満たす限り当然に発生します。
民法1028条の配偶者居住権(長期)と異なり登記は必要ないです(できない)

 

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7 自筆遺言保管制度

法務局における遺言書の保管等に関する法律(←これが法律の名前)
2020年(令和2年)7月10日から

 

手数料額が公表されました
2020.03.23公布

遺言書の保管申請  1件 3900円

遺言書の閲覧請求  1回 1700円

遺言書情報証明書  1通 1400円

遺言書保管事実証明書1通  800円

 

自筆遺言証書(自筆遺言書の要件を満たしていること。封をしないこと)を遺言書保管所で本人が出頭の上で保管してもらうという制度です

本人が出頭することになるので
(本人確認書類の提出が必要)
・法務局まで行けない、という場合は
この制度は使えません

・郵送や代理人による申請もできません

・保管申し出の際に、
戸籍や住民票などの書類がいろいろ
必要です

・未成年者(15歳以上)からの申し出も可能

 

本人(遺言を書いた人)死亡後に
できること

 

相続人、受遺者は、

 全国(どこでも)の遺言書保管所で
遺言書保管事実証明書の交付請求ができる

1通につき800円

ひょっとしてアタシは受遺者かも、という人からも請求ができる

2 全国(どこでも)の遺言書保管所で
遺言書の写し(遺言書情報証明書
の交付請求ができる

1通につき1400円

これを用いて不動産の名義の変更をします

なお、
遺言書原本は何人に対しても返還されません

 保管している遺言書保管所において
遺言書の閲覧ができる

1回につき1700円

1,2,3,のいずれかがされると
遺言書保管官から他の相続人に対し、
遺言書を保管している旨が通知されます

 

最大のメリット

家庭裁判所での検認が不要

公証証書遺言と同様に、
そのまま遺言の執行、たとえば、
不動産の名義を換えるなどが可能です

 

保管にあたっては手数料が必要ですが。
(収入印紙で納付)
1件につき3900円

 

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まとめとして

配偶者居住権と遺言書保管法については
いろいろとお問い合わせをいただきます

ですが、

まだ施行されていないため情報が不十分だったり詳細が明らかではなかったりして申し訳ありませんが現在のところ明快なお答えは難しいです

 

新しい法律。それがうまく機能して
私達の暮らしに
よりいっそうの
安心・平安を与えてくれますように、と
願うばかりです