相続登記に不要となった書類

相続登記にいらなくなった書類

朗報です。

今回平成30年8月の相続法の改正に
よるものではないですが、

絶対に必要で、
これがないと
どうにもならなかった書類でしたが、
しばらく前から添付不要となりました

 

それは、

 

「他に相続人がないことの証明書」
(印鑑証明書付き)

 

 

これは、戸籍を全部つなげて
そろえることができない
(火災などで物理的に戸籍が消失して
交付がうけられない)ときに
救済措置的に、
便宜認められていたものです。

この証明書がないと、相続登記は完了することができませんでした。

 

この証明書(上申書)の添付が
不要になったというお話です。

 

戸籍をつなげるとは?

被相続人の戸籍は、出生時または、
12歳あたりから、
死亡事項の記載された戸籍まで
つながるように、
取りよせする必要があるのです。

 

例えば。

  1. 千葉県白子町で生まれた男性。
  2. 北海道に養子に行き
  3. 東京で結婚し
  4. 静岡に移住し
  5. 離婚して宮崎に引っ越し
  6. 横浜の別荘で死亡。

このようなときに住所が変わるたびに本籍地を移していたとしたら、

 

  • 全部の本籍地での
  • 入籍した記載と
  • そこから除籍になる記載
  • その年月日
  • 各本籍地の記載が

連続している必要があります。

 

要は、すべての本籍地において

子供をつくったり、
養子縁組をしたりしていないかどうか、

を確認証明するためです。

 

東京で生まれてすぐに養子に出された子は
静岡に移った戸籍には、載ってきません。

静岡で生まれた子は離婚して妻の戸籍に
入ったとしたら宮崎の戸籍には記載されません。

なので、すべての相続権ある人を
網羅するためには、
戸籍が連続していることが求められます。

出生時または12歳頃からの戸籍
が必要、

とされているのは、
少なくとも生殖年齢とされる12歳くらい
からの戸籍がそろえば
相続人探索のためには必要にして十分と
思われるためです。

 

戸籍謄(抄)本が交付されないということ

 

役所に保管されていたこれらの戸籍原本が
火事などで焼けたとして、
請求しても発行してもらえないことが
あります

火災による焼失証明的なもの
しかもらえません。(無料です)

 

「戸籍謄抄本の公布できない旨の市町村長の証明書」(告知書)
というものです。

 

このような感じです。

 


 告 知 書

除籍謄本の交付ができないことについて

 

本籍〇〇

筆頭者〇〇

の除籍簿および〇〇法務局に保管中の副本は

昭和20年3月10日に戦災で焼失しました
このために再製することができないので、
除籍の謄(抄)本は交付できません。


 

このような文書を発行してもらえるだけです

 

しかし、火災があったことがわかっても
相続登記の書類としてこれでは
どうにもならないので
便法として、
「ほかに相続人がいないことの証明書」
を添付することで
相続登記をすることができたわけです。

 

ほかに相続人がいないことの証明書とは

役所の書類が焼失または滅失していて
添付することができないので、
それに代えて、
知れたる相続人全員から次のような証明書を
提出してもらいます。

 


「他に相続人がないことの証明書」

亡くなった被相続人〇〇の相続人は私達だけであり、

他に相続人がないことを証明します。


相続人全員の署名捺印(実印)
印鑑証明書付き

 

(遺産分割協議書の末尾にこの部分を追記するような形に作って一枚で両者を兼ねられるように作成することが多いです)

 

 

で、さらっと書いていますが、

 

自分たち以外に他に相続人がいないこと
を証明する

って、どう考えても理不尽な証明では
ないですか。

 

できますか。

 

まだ被相続人本人であれば、
他に子供を作ったことも
養子をもらったこともないことを
宣誓することもできましょう。

しかし、

 

ここで証明することを求められているのは
法定相続権のある人全員です。

 

そんな証明書を書くのですか?!

 

例えば50年以上前に亡くなった大叔母

この相続人が58人いたとしたら、
この58人以外に相続権ある人がいない
という証明を要求されていたわけです。

 

もちろん面識もない。
(まだ、こちらは生まれてないから)
そもそもそのような人がいたのかさえも
よく覚えていない。
相続説明図(家系図)を見せられても
言われてみれば自分に相続権があるのは
理解できるにしても、
他に相続人がいるのかどうかはわかりません
というのが本音だと思います。

 

それなのに、できますか。

 

という葛藤を経て
証明書に署名捺印をした人は
かなり多いのではないでしょうか。

 

戦争の時代に少年青年期を送った人は
火災で戸籍が焼失してしまっていることが
あります。
よって、その方たちの相続人は、
相続登記をするために
この証明書を作成することを求められて
いました。

 

真面目な人は、この上申書に署名捺印することができません。
ほとんど一緒に育って近所付き合いを絶やさずそのまま死亡した兄弟だとしても、24時間一緒にいたわけではないから知らないうちにどこで何をしていたかわからない、という言い方は故人に対して非礼ではありましょうが、
要求されていたのは、そういうことです。

 

そんな訳のわからない証明はできない
意に反したことをしたくない
そんな無責任な証明書にハンコは押せない
何世代か前の大叔母の相続人が誰であるか
とても責任もてない、持てるわけがない

と署名を拒否した人もいます。

 

ただし、そうしなければ、相続登記が
できませんでした。
かなり苦しいことが要求されていたわけ
ですね。

 

結局、そのことのために登記が
できないままになった事案も
あったかもしれません。

 

でも、もう大丈夫。

不要とされました。平成28年3月から。

ただし、

滅失焼失した旨の市町村の証明書告知書は
依然として必要
なので、
念のため。

 

相続登記がお済みでない方は
どうぞご相談ください。