知らないうちに登記がされている?

知らない間に登記がされている?!

 

そんなことが時々あります

 

そんなバカな!と思いますが、登記事項証明書(登記簿謄本)をつらつら見ていると、結構、あります。

 

いくつかの事情でそんなようなことがあるわけですが、おそらく一番ショックなのは、たぶん、これですね。

 

遺産について話し合ったこともないのに、いつの間にか自分の名前に相続登記がされている

 

これでしょうか。

 

 

顔色を変えた相続人の方が事務所に飛び込んで来られます。

 

きちんとご説明はするのですが。

半信半疑というか。
おそらく納得はしてもらえません。

 

不動産登記法で、そのようにできることが決められている。それだけなのです。

 

法定相続人の1人から申請できる

 

このように数人の共有で、法定相続分で登記がされた場合。

登記を依頼した人(たとえば、5人法定相続人がいたとして、その中のひとりが委任状を書いて登記を司法書士に依頼したとき)については、権利証(登記識別情報のこと)が交付されるのですが、他の4人については、交付されません。ちょっと、待って、と言いたくなりますね。

 

差押をするために、勝手に相続登記ができる

 

同様のケースで、誰か(大抵は銀行か、債権管理会社など)が差押をするために、相続人達の代わりに勝手に相続登記をしてしまうこともあります。

 

法定相続人が5人だとすると、5人の共有で法定の共有持分で登記がされます。

妻と子ども4人だとすると、法定持分は、妻2分の1、子どもはそれぞれ8分の1ずつです。

そして、この場合は、なんと権利証(登記識別情報のこと)は1通も発行されません。

 

相続人たちに代わって登記をした人(銀行とか、債権管理会社など)の名前も登記されます。なので、一言でも苦情を言いたいと思ったときは、その会社を訪ねることも可能ではあります。

 

ですが、だからといって、どうにかなるわけではありません。

争うことが可能なのであれば、裁判を起こす必要があります。

 

それでも、覚えのない登記はびっくり

 

権利証のことはさておき、頼んだ覚えもないのに、勝手に登記がされている、というのは、その仕組を説明されたからといって衝撃が和らぐものではありません。

 

差押のために相続登記がされてしまうのは、ある意味、仕方がないと諦めることもできそうです。

しかし、相続権のある人達の間で相談もなしに、いきなり法定相続分で登記をされてしまったら、これは、気持ち的に面白くないのではないでしょうか。

 

こじれた挙げ句に、それなら法定相続分で相続登記をしてしまう、という選択をされたのなら仕方がないことだし、当事者もそこの経緯をわかっているので、いきなり登記がされてしまった、というショックはないだろうと思います。

 

あとは、頼んでないのに登記がされるのは、

 

共有で建物の保存登記をする

 

これは、共有者のうちの1人から、登記ができます。

登記識別情報(権利証)が、登記手続きをした1人分しかできないのは、相続登記と同じです

 

共有不動産の抵当権を抹消する

 

これも、共有者のうちの誰か1人の委任状があれば登記ができます

5人で持っている不動産を、そのうちの1人と債権者(銀行など)との共同の申請で抹消することができます。

しかし、これなどは、知らない間に抵当権が消えていた、ということなので、ラッキーと思いこそすれ、不愉快になるようなハナシではありません。登記識別情報の交付も関係ないですし。(抵当権抹消をしても登記識別情報は通知されません)

 

抵当権は手続きをしないと、勝手には抹消されない

 

そもそも抵当権の抹消手続きに所有者が関与しなければならない、という認識をもってる一般人は少ないです。

 

ほとんどの方は、担保は銀行が勝手に消してくれる、と思っています。

 

なぜならば、銀行が勝手に担保をつけたのだから、という理論なのですが、いくら銀行でも、勝手に担保はつけられません。

 

所有者全員と、必要な金銭消費貸借契約を交わして、

担保設定用の委任状と印鑑証明書を全員分預かっているはずなのです。

 

ただし、ほとんどの場合、抵当権を抹消するタイミングは、借入後、10年とか、20年あるいは、25年くらいたってからなのですね。

 

こうなってしまうと、四半世紀も前の抵当権設定時の経緯を憶えている方のほうがむしろ稀だと思います。

 

先日も、建物を売買したいというお客様が、身に憶えのない抵当権がついてる、と驚いていました。いえいえ、それでも、お金を借りたことと返したことは憶えているのですね。まあ、そんなものです。

 

身に覚えがない登記を発見したら、まずは、ご相談ください。お電話だけで済んでしまうことがほとんどですが。

 

ひょっとしたら取り返しのつかない事態になっているかもしれません。