調停に弁護士は必要か

調停に弁護士は必要か?

 

結論としては、
調停手続きでは、弁護士がいなくても特段、
問題はありません。

刑事裁判などと異なり、
代理人をつけるもつけないも本人の自由です

ちなみに、調停で、代理人になれるのは、
弁護士だけです

言うまでもありませんが、
司法書士や税理士、行政書士は代理人にはなれません

 

ただ、弁護士は必要的ではないですが、

片方だけが弁護士をつけたら、
もう一方は不利なのではないかという疑問は当然わきます

(そうではない、そのためにこそ調停委員がいるのだ、という意見はあります)

 

弁護士なしで調停を申し立てる

 

そもそも、家事調停は
本人が申し立てられるような簡単なシステムです

手続きについて何もわからなくても、
家庭裁判所の窓口で
離婚の調停をしたいんですけどどうすれば?
と尋ねさえすれば、
裁判所書記官が、丁寧に教えてくれます

そのあたりについては、
弁護士なしで、特段、問題があるということはないでしょう。

ですが、

相手側に弁護士がついていて、
こちらが本人ひとりだけということだと
寂しいですよね。

気分だけではなく、
実際、少々きびしいかもしれないです

それでも、一概に
弁護士がついてないから不利とばかりは言えません。

 

一つ言えるのは、
法的な論点がいくつもあるような難事件だと
法律にさほど詳しくない方が本人だけで乗り切るのは少し難度が高いことになります

(そうではない、そのためにこそ調停委員がいるのだ、という意見はあります)

 

 

弁護士は、
高額な弁護士費用を払ってまでしても
自分の主張を通したいと望む人に雇われる
その道の専門家です

雇い主のために持てる力
(法律知識・弁論術・駆け引きなどなど)の
すべてを使って有利な解決を求めます

翻って、一般人は、

このような知識や弁論術や駆け引きに長けているわけではないので、
本やインターネットで調べた、即席の、
木を見て森を見ない知識によって戦うことになるわけです

そうなるとそもそも勝負にならないので、
(そうではない、そのためにこそ調停委員がいるのだ、という意見はあります)

1対1でやりあったら、おそらく、
弁護士が勝ちます
(当たり前ですが最初から無理筋の事件は除いて)

 

 

しかし、調停手続きにおいては、
強い味方(!)であるところの調停委員が必ず存在します

そこが1対1の争いとは決定的に違うところです。

 

調停委員の役割は

 

ちなみに、調停委員は
公平中立な立場で双方が合意をする手助けをするとされています
どちらの味方でもありません

強いて言えば双方の味方であって、
当事者両方にとって納得のいく解決を目指すためのお手伝いをする役目です

ひとつの事件につき、
2人の調停委員がつきます

その人たちとの相性的なものも
帰趨を左右しかねないと言ってはオーバーかもですが
無視できない、決して少なくはない影響があるわけです(可能性として)

ちなみに初回で担当した調停委員が
最後までずっと担当となります(なんと!)

 

調停委員の変更を申し立てる

 

調停委員制度は、ここがスリリングなのですが
相性が悪いからといってチェンジしてもらう手立てがありません

なので、その調停手続き(初回1回だけで終わるか、何年も続くことになるかはいろいろ)においては、
相性が悪くても、どんなに気に入らなくても
ずっと終わりまでその同じ調停委員のままなのです。

裁判官は人事異動で変わることがあります。
が、
調停委員は変わりません。

自己都合で彼らが調停委員そのものをやめることはあっても、それ以外は、
担当の調停委員を変えて、という申し出
原則認められていないものです

どんな調停委員に当たるかはです。
多少の問題があると思っても、与えられたカードの中で最善を探すしかないです。

 

ただ、どうしても、というのであれば、
方法はないわけではありません。

相手方が複数いるときしか使えない手段です。

調停は相手方の住所地に申し立てるので、
もしも他の家裁管轄内に別の相手方が住んでいれば、
そちらに対して、再度申し立てることもできます。

ですがこれは、申立人側しか使えない手です。

 

家事調停委員どんな人?

 

調停委員は民間人ですが、

現職の弁護士や税理士、司法書士もいます

そうした法律職と関係ない職業だった人もいます
市役所にいた方、とか、
学校の先生をしていた方とか。

 

いろいろですが、
大事なのはそうした専門性というよりも
常に公平中立であろうとしているかです

以前だと、

・旧弊な価値観を押し付けてくる

このパターンがけっこうあったと聞いています

 

たとえば離婚調停の場で、
妻が我慢しなけりゃ駄目でしょう?子供はどうすんの?的な。

または、
男なんだから、もっとしっかり働いて妻子を食べさせないといけないでしょう?などという感じ。

今となっては信じられないですが、
少し前まで実際にこのような発言をする調停委員がいたそうです。

 

弁護士がついていても、こうしたハラスメントまがいの発言がされるという話は耳にします

また、弁護士によれば、

・その条件は呑めないと何度も告げているにも関わらず調停委員が自説を曲げない

・不成立にしたいと言っているのに、調停委員が話し合いでの解決を迫る

などの不満も聞かれるところです

 

一般人だけだと、裁判所側に立っているというわけではないのだが、実務上、調停手続きの一端を担ってる関係上そのように見える調停委員から

このように無理難題を突き付けられたら、
返す言葉がないのではないでしょうか。

熱意にほだされるというよりも、
その勢いに押し切られてしまうということがあります
たぶん。

しかし、弁護士であれば、このあたりは
おそらく巧妙に立ち回ることができます。

 

あとは、これが一番よく聞く意見かもしれません

・どう考えても調停委員は相手側の味方をしているようで、こちらの話は満足に聞いてもらえない

 

ただこれは、

お互いに、限りある時間の中での手続きです

ひょっとしたら、どちらの側も

同様の感想を持っているかもしれないです

 

調停委員会というもの

 

また、調停手続きは原則として
調停委員会が行うものです

ここには、必ず裁判官1名が入っています

裁判官が単独でする単独調停というものはありますが、

調停委員だけでする調停というものはありません。

調停委員は、裁判官の指揮下にあって、
必ず、3人で打ち合わせをしたり、
話し合いが妙な隘路に入り込まないように
常に裁判官のチェックを受けています

 

なので、
多少、調停委員に問題があるかも、という気がしても、
裁判官も控えているので、そのあたりはそれほど心配しなくてもよいかな、という気はします

 

 

また、

家事調停には、
夫婦関係調整(離婚、円満) 養育費
面会交流 財産分与 遺留分請求
遺産分割などがありますが、
いずれにしても、それぞれの状況によって難易度が大きく異なります

 

やっぱり難しい調停

 

それら状況によって法律的論点がいくつもあるようなケースだと、
これは、一般素人だけでは、絶対に不利だと思います

(そうではない、そのためにこそ調停委員がいるのだ、という意見はあります)

ですが、
弁護士さえ頼めばよいのか、といったら、
必ずしもそういうわけでもないので
人生は面白いと言っては不謹慎かもしれないですが、やっぱり、面白いものなのです。

弁護士も人間ですから。

 

弁護士いろいろ

 

いろいろな価値観の弁護士がいます

単に争いを紛糾させる目的、長引かせる意図で発言しているのではないかというような人もいるわけです
(ほどよい条件で合意ができそうなのに、もっと争うべき、とはっぱをかけるなど)

 

作戦なのかもしれないですが妙な駆け引きをする弁護士もいます

奇襲攻撃ばかりやらかしてきて、
おそらく数回でまとまるような調停をわざと長引かせているようにしか見えません

これではとうてい依頼人の利益を考えているとは言い難いです。

本当に依頼人のことを考えての発言なのか
自分のことしか考えていないのか、傍からは判断できませんが、まあ、人それぞれ弁護士いろいろということです。

 

調停委員からのアドバイスは

 

弁護士がついていない側に対して
調停委員から、法律的なアドバイスをしてくれるのかという期待はもちろんあるのですが
実際は、それはないようです

調停委員が教えてくれるのは、
条文を読めばわかるようなこと(法定相続持分はどのくらいかとか、時効は何年かとか何年以内に請求すべきかなど)だけです

 

調停委員は、
このような主張をすれば、有利であるとか、
この論点は不利なのであまり踏み込まない方がよいなどというような

法的判断がからむようなことや、
要するに弁護士がするような法的アドバイスは原則しません。

おそらく、調停委員の、
公平中立であるべし、の建前に反することになるからだと思います

 

ただ、
双方納得できる解決案が示されないときは
調停委員から一定の提案をすることはあるようです。

しかし、

それを受け入れるも受け入れないもまた
当事者にその自由があります

 

 

 

ではどうするか

 

ひとつだけ確かなことは、

弁護士がいてもいなくても、
結果としてどちらに有利な決着になるかは
何より、時の運が大きいということです

 

同じような条件で調停を申し立てても、

悔し涙にくれる人もあり
歓喜の笑みをこぼす人もあり

弁護士がいてもいなくても、
それは「あるある」なのです

 

ご健闘を!