調停を申し立てられたら

調停を申し立てられたら

 

裁判所からお手紙が!

いきなり、
裁判所からの封筒が配達されたとしたら
それは多くの人はびっくりします。
地味な茶封筒の差出人欄には
千葉地方裁判所一宮支部とか、
横浜家庭裁判所とか、
それが書かれてあるだけで、およよ、と
一瞬たじろぐのではないでしょうか。

 

ひところ、裁判所からの通知は、本人に到達しなければ無効なので、読まないで放っておくというハナシがありました。
読まないと到達したことにならないという主張です。
近頃は聞きませんが昔はこのような都市伝説が巷間ささやかれておりました。
でも嘘ですよ。勘違いですよ。
そんなことを絶対にしてはいけません。

 

本当に手紙が来たら

 

裁判所から封筒が来たら、即、丁寧に
(内容物を傷つけないように)開封して
中身を確かめましょう。

大抵は、期限が書かれていることが多いです

その期限までに返事をせよ、しないと怖いぞ
というようなことが書かれてあると思います
実際どのくらい怖いのかは、何の通知かによります。

おっと!訂正です。
「しないと怖いぞ」と書いてあれば
それなりの対応を考えるものですが
そのようにはっきり書かれてないからこそ
実は本当に怖いのです。

 

民事裁判の場合は

 

裁判(慰謝料を寄こせとか、まだやってない登記をやってくれ、建物を壊して出ていってくれなど)を起こされたとしたら
しかるべき弁護士等をたてたり、
自分で手続きをするなりして
きちんと対応しないと、
大変にまずいことになります。

 

どんなにこちらに理があって、
証拠もあって負けるわけがない裁判でも
(民事訴訟の場合)
呼び出された裁判期日に
出席もせず反論もせず弁護士も頼まずに
放置したとしたら
100%敗訴します。

どんなに間違ったことをしていないと
大声で反論しても手遅れです。
もう間に合いません。
打つ手がないわけではありません。
もしもここまで来てしまったら
直ちに弁護士に相談してください
民事裁判というのはそのようなものです

戦いを挑んできた原告に対して
自分はこのように間違ったことは
していません。
ということを
証拠とともにアッピールしなければ
負けてしまいます。
負けた挙げ句に、強制執行されたのではたまりません。
こちらに非がないのに、
財産や給料を差し押さえられたりします

 

ですが、

民事裁判は刑事裁判とは違うので
負けたからと言って、
それだけで刑罰(罰金とか懲役とか)が
課せられることはありません。
刑事裁判のように、犯罪を処罰するために
行われるものではないからです

民事裁判は、あくまでも
当事者間での約束の履行を迫ったり
(貸したお金を返せとか)
紛争を解決するためのものですが、

刑罰が科せられないにしても
裁判所の手続きなので、
放っておけばそのうちどうにかなるだろう、相手の気分も変わるだろうというような甘い考えは通りません。
それこそ、怖いことになるのです

 

調停の場合は

 

調停の場合は、このようには
怖いものではありません。

調停は裁判と異なり、
当事者同士の話し合いを
裁判所という場を借りて行うものです

場所を借りるだけでなく
運よく合意に至ることができれば、
調停調書
(調停成立後に裁判所で作成される)は

確定判決と同様の効力をもつのです。

 

また、裁判のように
印紙代が高額になったり、
弁護士なしでは対等に戦えなかったり
ということがありません。
申し立てる人にとっては大変に
利用しやすい制度です。

 

で、ある日、家庭裁判所から
調停を申立てられた旨のお知らせが
届くのです。

たとえば、ずっと別居してる妻が
離婚などを申立ててきたり、
10年以上前に亡くなった
父の財産の去就を巡って
何年も音信不通だった兄からの申立だったりするわけです。

いろいろと記入する用紙が何枚か
そして、おそらく
調停申立に至る経緯のわかる資料が
入っていると思います

そこに、
ご自分の事情を簡潔に記入して返送すれば
それで、とりあえず、OK

 

調停期日の連絡があったら、
その日にその場に出向いて、
申立人と話し合うだけです。

 

ですが。

 

ずっと別居してる妻とは絶対に顔を合わせたくない。そもそも離婚する意思はないのだ。というような場合。

勝手に欠席するという選択があります

 

調停に欠席をする

 

亡き父の遺産を自分で独り占めしようとする兄にはこちらも一銭も渡す気はない。調停に応じなければ、遺産分割協議書に押印しなければ、こっちにも財産は来ない代わりに、兄貴のところへも財産は行かないはずだ。

このように考えて、調停の呼び出しに応じないという選択があります。

 

調停期日に欠席すると、たいてい、裁判所から「どうしましたか」と確認の電話がかかってきます。適当に言い抜けても、次回期日は必ず出席するように念を押されます。もちろんその場は「必ず行きます」と元気なお返事をしますが、次回も確信犯的に欠席します

そして、ふと、
欠席したら、もしかして
罪になるのではないだろうか

と心配になったあなた!

 


家事事件手続法258条による51条の援用により

欠席は5万円以下の過料と定められています


ですが、これが課されることはほとんどない、と言われています

 

しかしながら事実上、調停の際に
相手方が出てこなければ、
どうにもなりません。

1度か2度は次回に望みをつないでも
3度となったら、おそらく
調停は不成立ということで終了になります

これが民事裁判であれば、
欠席し、訴状も提出しなければほぼ自動的に
敗けることになります。

しかし、調停は話し合いの場であるので
相手方が欠席したからといって
申立側が有利になる調停調書が作られる
ということは絶対にありません。
調停調書は当事者(申立人と相手方)の
合意によってのみ作られるものであって
裁判官、または調停委員が
決めたりするものではないからです

 

調停不成立のあと

 

調停が相手方の欠席によって終了した場合は、審判に移行したり、訴訟に移行

したり、申し立てた側はその選択によって次の手を繰り出してくると思います

 

審判も訴訟も、当事者の出した証拠に基づいて裁判官が判断をするものです

裁判の法廷では、
当事者が発言する機会がなくはないですが
調停の場と異なり、
フランクに言いたいように喋る場では
ありません。
裁判官または弁護士に質問されて、
それに答える形でしか進みません

 

話し合うという選択もできる

 

調停の場合は、
訴訟等と異なり別室調停が基本なので
調停委員を間にはさんでの
ハナシのやり取りは
隔靴掻痒の感はあることでしょう

しかし法廷では言いたいこともいえず
ほぼ一方的に判決がされることを思えば
遥かに自由と希望に満ちていると思います

そして当事者双方がそれを望めば同室での調停も可能です。
同じ部屋で同時に相手方と申立人が調停委員を間にして話し合うということです。

 

調停を
気が進まないからという理由で
欠席してしまうのは、
あまりにも惜しいです

 

対話による合意の可能性
残されているのに
第三者(裁判官)に未来を委ねるのは
ご自身に対して随分と残酷な選択かも
しれません