遺産の話し合いができない

遺産分割の話し合いができない時
どうすれば?

 

遺産について、相続手続きをする際、
法定相続人が何人かいる場合は、

それら全員の間で、
誰が何を相続するのか、しないのか
について、話し合いをする必要があります

話し合いをしなくてもよいですが、
故人の財産を自分(たち)の名義にしたり
処分したりするためには、

話し合い(遺産分割協議)がどうしても必要です

その話し合いの手間を省いて、
最初から交渉を弁護士に任せてしまう人もいますが、それはそれで、
他の相続人の不興を買うことにもなり
本当の争いごとに発展する確率が高いような気がします

 

 

話し合いができないとき?

 

・相続人の内に認知症等で
意思能力がない人がいる

意思能力がない人は遺産分割協議に参加できません
成年後見人を選任して、成年後見人が
本人の代わりに分割協議に参加します

・相続人の内に行方不明で
連絡がつかない人
がいる

行方がわからない人がいるときは
不在者財産管理人を選任して、その人が
裁判所の許可を得て、分割協議に参加します

・何かの事情で、話し合いに応じない人
または意見が対立している人がいる

つまり、現実的に、
話し合いそのものができないときです。

相続人が未確定
(相続人となるべき人が胎児・・まだ生まれていない)とき

この時は、出産を待つほか手立てはありません

その胎児の出生によって、
相続人が一人増えるだけのこともありますが
状況によっては相続関係が大幅に変わる可能性があるからです。

たとえば、

被相続人の配偶者と被相続人の兄弟たちが
相続人となるとき
子が生まれたとしたら、その被相続人の兄弟たちは
一気に相続権を失うことになります。

不謹慎ですが、このあたりはミステリー小説になりそうなスリリングな感じです

 

 

ではどうするか

 

・意思能力がない、とか、
行方不明とかの場合は、
それぞれ方策があります。

ですが、

長年の確執のために電話にも出てもらえない家を訪ねてもドアさえ開けてもらえない、
つまりは話そのものができないという状況のことがあります

 

そうなってしまうと出来ることは限られてきます

・誰かに(共通の知人、仲の良い親戚のおじさん等)代わりに話をしてもらう

・弁護士に依頼して、交渉を委ねる

これらがダメな時は、

・家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

 

調停で、相手方が出席しないときは、
原則として調停は不成立になります。

でも、話し合いを拒んでいても
裁判所の呼び出しには応じる人はいるので
電話に出てもらえないだけで諦めるのは早いです。

まずは、調停を申し立ててみましょう

 

しかし、絶対に出席しない人も当然いるので
そのときは、裁判所は
申立てが取り下げられない限り
遺産分割審判をすることになり、
そうすれば一応何とか、結論だけは出ることになります

 

その審判の結果が、
本来の希望と乖離したものであったとしても
異議を申し立てることはできます
とりあえず遺産分割については、
結論が出されます

未分割の遺産があることにストレスを感じていた人には大きな救いとなります

ただ、
結論が出ればよいというものでもありません
もちろん。

 

たとえば、

遺産は自宅だけ。
どうしてもそこに住み続けたいけど
他の相続人に対して代償金を支払う資力がない
何とか無償で相続分を譲ってもらいたい
というような事情があるときに、
審判ではその希望が通る望みは薄いです。

相続人の一人が100パーセントを取得して
残りの相続人が0パーセントというような分け方は
通常の遺産分割協議であれば全然問題ありません。

自分の意思でゼロパーセントを選択するのはもちろんアリです。

ですが、審判で、
おそらくそうした分割がされることは期待できません
理由は、
あまりにも不公平だからとされています

裁判所は、相続人間の公平性にとても重きをおいている印象です。

遺産分割協議が不要の場合

 

・相続人が一人の場合はその方がすべてを相続します。

たとえ異議を唱える口うるさい親戚や隣人!がいたとしても、相手にする必要はありません

独り占めするなんて欲張りだ!と権利のない人から中傷されたとしても、
遺産を相続できるのは、相続人だけです。

・また、遺言書が残されていれば、
それに従って粛々と分割するだけなので、
こちらも、原則として話し合いの必要は
ありません

ただし、
遺言で財産を遺された人や遺されなかった人が、
その内容が気に入らないので全員で協議をしたいと思った時や

遺留分を侵害された人が、
のちのち面倒だから、この際、遺言は無視して遺産分割協議で話をつけよう、と言ってきたときは、別です。

このときは、相続人全員さらに遺言執行者(指定されている場合)の同意があれば、遺産分割協議によって遺産をわけることが可能となります

 

 

遺産分割協議は全員でする

 

全員でするのが基本です。

なので全員が一堂に会して話し合いをするのがベストですが、
なかなか皆さん多忙だったり遠方にお住まいだったり、お仕事休めなかったりなどしてそうもいかないため、
簡便な方法がとられることが多いです

具体的には、
それぞれに事前に話をしておいて、誰かがそれを文書にまとめたもの(遺産分割協議書)を、
持ち回りで順次署名捺印していって完成させる、というものです

ただ、これだと人数が多い場合など、
書類の紛失や損傷の危険や時間がかかり過ぎなどの欠点があります

そこで、一人一枚で、全員が同じ文書
(遺産分割協議証明書)にそれぞれ署名捺印をする形で作成する方法がとられることもあります

それらを合綴したものを
遺産分割協議書として扱います

効果はどちらも全く一緒です

このように全員の合意ができさえすれば
遺産相続手続きは順調に進みます

なお、

字が書けないとか、印鑑登録をしていない
とかというのは、
合意の有無に比べたら、問題ではありません

字が書けない(怪我をしているとか、手が動かせないなど)ときは、代筆という手段が
あります

本人の意思を無視して勝手に書くのは
私文書偽造という犯罪行為です。
偽造と代筆は全く違うものです

 

印鑑登録をしていないとしたら、登録に適した印鑑を役所に持参して登録すれば良いだけです。

写真付きの本人確認書類を所持していれば、その場で登録ができます。
さらにその場で印鑑証明書の交付まで可能です
写真付きのものがない時などは、
郵送での手続きが加わるため、
日数がかかります 

なお、これらの扱いは、
自治体によって異なるので
事前に確認をした方がよいです

 

 

債務はどうなるのか

 

債務については、相続放棄をしない限り
原則として相続人全員で相続することになります。

分割協議でやってしまえ、ということで
5人いる相続人の中で、
財産も債務もすべて長女が相続をし、
他の4人に求償しないものとする。
という協議が整ったとしても、

相続人間では有効ですが、

債権者の承諾がない以上、
この協議はそれら債権者に対しては無効です

 

ではどうする

 

話し合いができない

会ってもらえない

どのような経緯があってそんな状況が生まれたのか、
当事者にもまるで心当たりがなく、どうにもこうにも理由さえわからないことがあります

自分たちには、全く落ち度がないのに、
たまたま先代同士が仲が悪かったとか、

あの家には一切関わりをもつな、という
先祖の遺言を守っているだけという人たちもいます

不毛ですね。

 

話し合いに応じない人の気持ちは
想像するに余りありますが、ただ、
そのようなことを言っても始まりません。
解決への道とは言い難いです。
問題の先送りでしかありません。

自分がひどいことをされて、その相手方に対して腹を立てるのは、当たり前だと思いますし、実にお気の毒だと思います。

でも、

先祖の恨みを訳も分からず引き継ぐのは
不毛です

 

若い時ならいざ知らず、多くの場合は、
ある程度の年齢になれば、
悪いものは次世代には引き継がせたくない、と思うようになるものです。

終活というムーブメントがありますが
悪い因縁や債務をできるだけきれいに清算して
いわゆる禍根を残さない状態で
次の次元へ移行したいという思いは、
誰しもが持っているものではないでしょうか

永代申し送りとして恨みを遺した本人も
今頃は忘れているに決まっています

遺された、今を生きている人も、
そのような恨みは忘れてあげましょう。

自分の恨みだけを言い募っても解決することは困難です。

 

 

恨みをお払いすることはできませんが、

遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)の作成は承ります

ただし、
相続税のご心配がおありの時は、
当方でお作りするものには
税金を考慮にいれることができないため
税理士に依頼なさった方がよいかと思います

そのあたりも含めて、
どうぞ、お気軽にご相談ください