遺産を分けてもらえない!

遺産分割協議の通りに分けなくても許されるものなのですか?
私にも取り分があるはずなのに一向にもらえませんけど?

・・・え?・・・??

分けるって書いてないですか?

 

遺産分割協議書はこんな感じ

 

おそらく、

「相続人Aは不動産を取得しその代償金としてAは、BとCに対して金750万円を支払う」

 

または、

「現金および預貯金については、AとBとCがそれぞれ750万円ずつ相続する」

というような内容の分割協議が成立したと思われます

 

 

AとBとCは、この内容で合意して、
遺産分割協議は成立したわけです

 

だったら、お互いに権利義務を果たすのは当然のことです

 

でもたまに、残念なことに
こうした義務を果たさない人がいるわけです

 

 

約束を守らない人がいる

 

よって、例えば上記の場合

Aがこの中の主導的立場で押しが強く
B、Cが気の弱いタイプだったりすると、
こうしたことは起こりえます。

 

Aは遺産分割協議書にハンコさえもらえばそれでよし。

ハンコさえもらってしまえばあとは野となれ山となれとばかりに、
自分の都合ばかりをいろいろ言い立てて、
B、Cに支払うべきお金をすんなりと支払わなかったりすることがあります。

実際に定期預金の満期が間もなくなので少し待ってということもあるのかもしれないし、亡くなった人のもろもろの後始末で時間が作れないということも、介護で疲れ果てていて体調を崩したまま、というのもいずれも本当かもしれません。

ですが、
何ヶ月たってもそのままだとしたら、少し
積極的な働きかけを考えたほうがよいかもしれません。

Aはそのまま払わないで済ませてしまえと
邪悪な考えを持ってないとも限りません

分割協議をした時点では早く払おうと思っていたとしても、
数ヶ月たち、1年がたち、いつになっても
BやCからは何も催促されない日々が続いたとしたら、
正直者のAであっても悪魔の囁きに耳を傾けることがないとは言えません。

善は急げ、とはこのようなときに使うべき言葉でしょう。

 

法律は守ってくれないの?

 

この協議書は個人間で成立したものなので
もちろん互いに履行義務はありますが、
強制力はありません。

この分割協議書を持参しても
裁判所とか銀行が750万円を
B、Cに支給してくれるわけではないのです。

 

不動産の名義変更については、Aはこの遺産分割協議書(もちろん印鑑証明書や戸籍等は必要)があれば、
名義を被相続人からA自身の名前に変えることは簡単です
B、Cの協力はもはや不要で、Aだけの委任状で相続の登記はできます。

 

しかし、

協議書上で750万を取得することになったBとCは、
この分割協議書があっても、
Aに対して請求できるだけ、です。

たとえば、

Aの銀行口座を知っていたとしても、
この協議書を持参して750万円を払い出すことは不可能です

あくまで、

AからB、Cへ
自由意志によって
支払われるべきものです

 

そして、驚くべきことですが、
これをチェックしてくれる機関はありません

 

 

どうしても払ってもらえないとき

 

何度か催促をしたにも関わらず
その都度理由をつけて払ってもらえないとしたら、
Aに対して
「750万円をB及びCに支払え」という
訴えを起こすことができます。

裁判に勝てば、勝訴判決が出れば、
強制執行をすることが可能になります

 

裁判に勝つということ

ところで、裁判というものを
どっちが正しいか調べてくれる所だとお思いの方がいますが、
これは、ほとんど間違いです

裁判官は神様ではないので、
時を遡って事実を確認して
判決を下してくれるのではありません。

裁判官に、
こちらが正しいのかも。と
思わせた方が勝ちです

 

その結果、
白黒(しろくろ)つけてくれる所、です

残念なことに、正義が勝つわけではありません。

 

よく、
私は何も間違ったことはしていないのだから弁護士をわざわざつける必要はない。神さまはどこかで見ていてくださる

などというセリフを聞くことがありますが

神さまは見ていたかもしれないですが
裁判官は見ていないです。
証拠に基づいて判断しているだけです。

 

なので、
本当に正しいことを言っている人と
嘘をついている人がいたとしたら、

正しいことを言ってる人が勝つのが裁判

ではありません

 

・・・怖いですね。

正しい人ではなく、
上手に裁判制度を使った人が勝ちます

優秀な弁護士とか、

適切な証拠など。

 

強制執行(きょうせいしっこう)?

強制執行、つまり、
払おうとしない相手の財産から
無理矢理に払わせてしまうことです

たとえば
Aの財産(不動産や預貯金・給料債権など)に対して、
750万円の満足が得られるまで
不動産であれば競売にかける、
預貯金であればその金額まで請求することができます。

ただ、もしも、Aにそれだけの財産がなければB、Cは泣き寝入りをするしかありません。いわゆる無い袖はふれない、ということです。

 

いずれにしても、
Aが自ら払ってくれないときは
少なくとも裁判をしないことには
750万は分割協議書の中にしか存在しません。

 

この悲劇を未然に防ぐ

 

1年たっても私のところには現金が来ません
これはどういうことなの?兄に催促しても税金がどうだとか、何がどうだとか、ごちゃごちゃいうだけで、いつになったらもらえるものか。このご時勢、兄にもし何かあったら、私の750万はどうなってしまうのでしょうか

実際にこのようなご相談はときどきですが、あります

ですが、

このような感じで時間だけがたっていくと
いつの間にかうやむやにされてしまいます。

本人(750万を請求してる側)は忘れることはありませんが、お金もいつまでもあるわけではないでしょうし、
相手の方がそれこそ急死でもしたら、その750万円は絵に描いた餅のままで終わりかねません。
死亡した場合はさらにその相続人に対して訴えを起こせばよいわけですが、
まあいろいろと面倒なことになるわけです。

 

もしも、遺産分割したのに、
半年たっても約束のお金がもらえなければ
早く回収することを考えたほうがよいです。

10年もたってしまったら、
遺産分割協議書は残っていても、
お金の支払いついては

「払った」✕「もらってない」の
水掛け論に終始することさえあります。

 

「あそこで現金で渡したじゃないの」
VS
「もらってないわよ」

ということです。泥沼。。。

念の為ですが、支払いは
銀行振り込みがいいです。
証拠を残したいので。

現金授受だとしたら、きっちり、自筆の
領収書をもらいましょう。

 

未だにお金を受け取れていないとしたら
本当に受け取れなくなる前に
躊躇せず、弁護士に相談しましょう。