遺産分割のときにかかるお金

遺産分割のときにお金はかかるのか

 

相続~遺産分割協議の際に、たとえば、法定相続人が3人いて、その3人で相談がまとまりさえすれば、何をどのように分けてもOKなのです

ですが、ご注意!!

申し訳ありませんが、税金の多寡については考慮していません。
つまり、どのように分けるのも相続人間で自由ですが
分け方によっては高額な相続税が課せられる可能性があります

 

実際、お金が必要なのか

 

遺産分割協議で、たとえば何ももらわない
という選択をした法定相続人がいます。

この人に対して、
お金はあげるべきか、
それはかえって失礼にあたるのか、
もしもお金を上げるとしたらどのくらいが妥当なのか、という不安や疑問をお持ちの方は多いと思います。

 

不動産の名義変更のために遺産分割協議書をお作りすることがあります
その際にも、権利を放棄してもらう代わりに
いくら位用意しておいたらよいのか、と
聞かれることが多いです
聞かれても大したことはお話できません。
守秘義務というのではなく、
そもそも知らないので

遺産分割協議書の本文に
「Aが全てを相続する。その代償金として、AはBに金200万円を支払う」というものは
たまに見かけます
このような場合も、裏で、どのように解決がされたのかはわかりません。

いずれにしても、分割協議書には全員が署名捺印してるので、それぞれが納得できる条件が提示されたのか、諦めたのか、ご先祖様の加護があったのか、そこのところは、
神のみぞ知る、といったところではあります

 

結論をいえば、

 

経験と観察から言えば、いろいろです。

 

・一銭もかからないこともあるし、

・少しだけ(いわゆるハンコ代)かかるときもあるし、

・とんでもなくかかることもある

 

はっきり要求してくる相続人ばかりではなくて、
「ハンコ代で、気持ちで結構です。」とか、
「下さるなら有り難く戴きます(いくらでもいいという訳でもなさそう)」とか、
言われることもあるようなので、常に
非常に悩ましい問題です。

地域的な風習?慣習?もあるかもしれません

時代の流行というのもあります。

 

具体的には、

 

・ゼロ(かからない)

・ハンコ代というか、日当あるいは、交通費的な 具体的には、5千円から2万円から5万位

・相続財産を現金換算して、その法定持分割合

・法定割合では気が済まないので、
それを大幅に超える額

 

 

では、いくら払えばよいのか

 

さて、

では、ウチはいくら払えばよいのでしょうか

 

というお尋ねもあります

 

払う、と言っている時点でこのハナシは
まとまらないかも知れないと、内心
思いながら一般論をお話します

 

申し訳ないですが、どこまでいっても
一般論しか話せません。

 

 

遺産分割は全てオーダーメイドというか
個々人で全く違うものです

 

たとえ、分割協議の文言が

「全ての財産は長男が相続する」

の一言であったとしても
そこに至る物語は
家の数だけ存在してます

同じくらいの相続財産で同じような家族構成
というケースは無数に存在するのですが、

この人と、あの人が違うように、
全ての相続はそれぞれの個性を持ちます

 

なので、

この遺産の額だったら、これくらい
という金額は算出できません。

金額は出せませんが、
法定相続分、つまり割合を8分の1とか
それを計算することはできます。

 

特に、入り組んだ遺産分割で、相続人が20人もいたりすると法定相続持分を計算するのは多くの場合、面倒だと思います

いくら必要になるのか、という目安に使われることもあるので、この部分の計算はお任せください

 

このように決めていく

 

相続~遺産分割については、

 

・まず、話し合ってみて
同意が得られなければ、

・さらに話し合ってみて
それでもだめなら

・しばらく冷却期間を置く

 

または

 

可及的速やかにハナシを決めたければ

・弁護士に依頼するか

・調停に持ち込むか。

 

まずは、話し合ってみることが大事です

 

ですが、

たぶん、こうだろう、と頭から決めてかかって話し合いをするのは、危険です。
聞いてみなければわからないこと
山のようにあります

 

長女は留学し、いろんなお稽古ごともさせてもらい洋服もいつも一流店のものを着て嫁入り道具も非常に高価なものであった。から、
お父さんの相続については、もう何も貰えるようなものはないはずと次女、三女が思っていたとしても、
長女には長女の言い分があるものです。
そしてその言い分は、

「聞いてみなければわからない」

にも関わらず、

「姉さんはどう考えても私達より何千万も多く貰ってるんだから、ここで欲張ったって、だめよ」などと、頭ごなしに主張してしまったらまとまるハナシもまとまりません。

 

法律はこのように定めています↓

もちろん、これに反する遺産分割協議も有効です


民法903条(特別受益者の相続分)
・・・被相続人から、遺贈をうけ、または婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与をうけた者があるときは、被相続人が死亡のときに有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定持分割合で算定した相続分の中からその遺贈または贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする


この場合、法律どおりにいけば、ご長女はほかの姉妹と同等のものは相続できないかもしれません。だとしても、奪い取るようにハンコをもらうのと、機嫌よくハンコを押してもらうのでは気持ち的に天と地ほども違うのではないでしょうか。

 

絶望的な状況で

 

人の立場に立ってものを考えること。私達は皆それが苦手です

なぜなら、他人の立場を想像することはできても、他人になることはできないので、どうしても相続力の範囲は自分の知識と経験を超えることができないからです。

自分の器の中というかその大きさでしか、他人の頭の中は想像できません。

直径5センチの穴から外界を覗いたら、その5センチ分しか認識できませんし、

その視野の外に広がる風景は想像を超えています

 

しかし、ここで、
自分の視野の外に
自分の認識できない風景が広がっている
かもしれない、と思えるかどうかが
話し合いができるかどうかの肝(きも)です

念のためですが、これは、姉が広い視野を有していて、妹が5センチの視野しかないということではありません。
姉が偉くて、自分が愚かである、ということでもないです。

誰もが自分の視野、直径5センチでしか他者を見ることができないのです。
本人の視野は本人にしか体験できません。

それをわかった上で、
他の人は皆、自分にはわからない現実の中に生きている、

ということを忘れないでおくことです。

 

言い換えれば、事実は一つでも解釈は人の数だけあるということ。

あるいは、

事実は一つでも真実は人の数だけあるということです。

 

これさえ心の隅にあれば、どんなに状況が
絶望的に見えても
話し合いは可能と思われます。

 

遺産の分け方

 

さて、相続登記に際して、法定相続人が全員で相談がまとまりさえすれば、何をどのように分けるのもOKです


ここでご注意; 

債務は勝手に分けられません。

遺産分割協議において長男Bが全ての債務を引き受けると定めるのは、OKです
しかしこれは、この法定相続人の間でだけ、有効な定めです

債権者が承諾していない以上、
勝手に自分たちだけ(法定相続人全員)で
債務を相続する人を決めても結局、
債権者に対しては無効です。

 

しかしそれでも、
法定相続人間では、有効な定めです。

債権者に次男Cが債務を請求されたとき、
次男Cは長男Bに対して債務を支払うように求めることは可能です(遺産分割協議で定めているので)

しかし、

債権者に対しては、長男Bに請求してくれ
ということはできない、ということです。


 

家督相続的わけ方

 

遺産分割協議で、どのように分けるのも可能ということは、一人が全てを相続し、他の法定相続人は全てを諦めるという協議ももちろんアリです。

農家とかでは、よくあります。

相続人である長男一人がすべてを相続するとか。
随分ひどい話と思う方もおいでかも知れませんが。
農家ではひと昔前まで当然の話でした。

父が死亡し、残るは、母と子ども2人

こうした場合に

たとえば、長男が全てを嗣ぐ。

代わりに、長男は母の面倒は必ず見るし、
他家へ嫁いだ妹に対しても死ぬまで何くれと世話を焼いたりします。

これは、家父長制度の名残で、
全てを相続する代わりに、
全ての扶養義務をも負うということです

現代の民法ではこのようには決められていません。ただ、田舎というか、特に農村部では田畑を3人で分けたりしたらそれを誰かに売られてしまったとしたら、農家として立ち行かなくなります。なので、こうした感じでいわゆる家を嗣ぐ人が財産も借財も嗣ぐというのが多いようです。

 

もちろん、もっと現代的な考え方もあります

農家で、めぼしい財産は田畑しかないのに、これを「法定相続分は欲しい、私の権利だから。できれば、現金で。」と主張する人もいます。これは法が認めた権利なのでそれ自体は非難をうけるようなことではないですが。

現金が用意できずに田畑を2分の1ずつ共有で登記した結果、一人がそれを売却してしまったら、、、農業経営がきびしい局面を迎えることになるのは目に見えています。

まあ、いろいろです。

 

まとめます。

 

ともかく。まあ、いろいろです。

 

相続税のこととか、将来の二次相続に備えたりとか、どうやったら一番金銭的に有利なわけ方なのかは専門家にまかせるとして。

不動産をどのようにわけるのか、これが最も悩ましい問題かもしれません。

 

こどもが農家を継ぐのならともかく、

・誰もあとを継がない農地を
どのようにわけるのか、

・このまま荒れるに任せ、あるいは、
第三者の手に委ねるのか、

・手放すことにしたら先祖はどんなに悲しむことか、

などなど考えると、
夜も眠れないのもわかります。

 

時代は変わっていくもので、価値観も変遷していくのは仕方ないことです。

協議の結果がどのようなものであろうとも、相続人たちが、互いに知恵を絞っての相談の結果であるなら、ご先祖様は、決して文句を言うことはないと思います。
よくぞここまでがんばった、と褒めてくれるのではないでしょうか

 

 

なお、

 

相続税等、税金については、税理士
お尋ねください。あいにくですが当方では
税に関するご相談はお受けすることが
できません