遺産分割・具体例

遺産分割協議書の具体的な書き方

 

遺産を分けるとき、または分けないときでも亡くなった人の遺産を相続人に移すというか名義を変えるときは、
遺産分割協議書が必要です。

相続人が一人しかいない時は不要です

 

本文の作成に当たって

 

・具体的には、長期に保管することを考えて
丈夫な紙(コピー用紙で大丈夫)を用いて
パソコン等で作成します

・遺言書ではないので、全文手書きする必要はありませんが、
手書きでももちろん全然問題ありません。

・ただし鉛筆書きはダメです

・何カ所かで使うときに(法務局2カ所・銀行郵便局併せて5カ所などに)全部で7組つくらなければならないか、といったらそんなことはなく、
分割協議書・印鑑証明書の原本を返してくれるように依頼すると、返してもらうことができます
1組あれば、それを使いまわせるということです
たまに、絶対原本を預かりたい、といってくる謎の団体がありますが、登記所と金融機関は基本、原本を返してもらえます

・署名は記名(印刷)でも実際は問題ないのですが、将来、問題が起こった時のことを考えると、
本人自筆に勝るものはないです。

あたしが書いたんじゃありません(怒)と言ってくる人たまにいますから。
自筆が最強です

 

 

協議書本文が完成したら、次は、
相続人全員から
署名捺印印鑑証明書を預かります

 

  • 預かるときの注意

 

・相続権ある人全員が署名する

一人一枚で、同文のものを全員分まとめてもよいが、
全員の分が必要で、たった一人欠けても遺産の相続はできない

・実印で捺印する

押した印鑑と印鑑証明書の印影が同一であることを確認すること。
印鑑証明書が添付されていても登録印が押されたものでなければ、
それは分割協議書としては不完全なものなので遺産手続きには使えない

・印鑑証明書1通が必要

・署名か記名か

署名部分が、記名(すでに印字されている)して作成された遺産分割協議書も有効ではあるものの、
将来の書証としての効果(裁判などになってしまった時の証拠という意味で)を考えると
住所も氏名も本人の手書きを推奨。

なお、代筆だからといって無効ではない。

代筆することと、
人の署名を勝手に書くことは、
全くの別物

代筆ならばなんの問題もないが、
本人の意思を確認せずに勝手に他人の署名を書いたら、これは、
私文書の偽造という刑法上の犯罪

 

具体的かつカンタンな分割協議書

 

  • 一人で相続

 

遺産分割協議書

令和4年1月1日死亡した被相続人片桐ゆり(本籍千葉県茂原市間囃子18番41)の遺産について相続人全員で協議した結果、次のとおり決定した

財産のすべては、片桐太郎が相続する   以上

令和4年5月24日

相続人 住所

    氏名    実印押す

 

  • 2人で相続

 

遺産分割協議書

令和4年1月1日死亡した被相続人片桐ゆり(本籍千葉県茂原市間囃子18番41)の遺産について相続人全員で協議した結果、次のとおり決定した

不動産のすべては、片桐太郎が相続する   

預貯金現金のすべては、片桐次郎が相続する  以上

令和4年5月24日

相続人 住所

    氏名    実印押す

  • 3人で相続

 

遺産分割協議書

令和4年1月1日死亡した被相続人片桐ゆり(本籍千葉県茂原市間囃子18番41)の遺産について相続人全員で協議した結果、次のとおり決定した

不動産のうち下記のものは、片桐太郎が相続する   

千葉県茂原市神囃子18番41の土地

同所同番地41の建物   

上記以外の不動産は片桐次郎が相続する

預貯金のすべては片桐三郎が相続する   以上

令和4年5月24日

相続人 住所

    氏名    実印押す

  • 新たな遺産が発見されたら

 

上記の本体文に加えて、協議事項の末尾の方に

上記以外の財産が発見されたときは、片桐太郎が相続する

この一文があると、将来、
再度遺産分割をする必要がないので楽です

ただ、とんでもなく価値のある遺産が発見されたらそれは残念かも、とお思いになるならこの一文は入れない方がよいでしょう

ただ、そのようなことはまれなので、

たいていは、
原野商法的な低価格の不動産や、
少額の株式だったり、
自宅不動産に付属している私道持分だったり田舎だったら共有の入会権だったり、がほとんどなので、
将来面倒がないようにこの一文があると
とてもとても便利です

 

  • 債務について

 

上記の本体文に加えて、協議事項の最後の方に

債務については、片桐太郎がすべてを相続する

を入れることもあります

 

なお、このとりきめは、
当事者間では、有効ですが、
債権者(銀行とか、お金貸し)に対しては、効果を持ちません

 

ということは、債権者は片桐太郎だけではなく、ほかの相続人全員に対して債権を請求する権利を有します
他の相続人は、太郎が債務全部を支払ってくれると思っているわけですが、
銀行にしてみれば、そんな話は聞いてない、ということになります

 

債権者がこの条項に承諾同意したときは有効となりますが、
その同意なしでは、
この一文は、協議をした相続人間でのみ有効であることにご注意ください

 

なので、
仮に3人が請求されて3分の1ずつを債権者に弁済したとしたら、
遺産分割協議に基づいて、
債務を引き継ぐと決められた片桐太郎に対して各人から、
弁済した分をそれぞれ請求することができます

 

 

 

遺産分割協議書が必要な理由

 

例えば3人いるその内の一人しか相続をしない、というときであっても
遺産分割(ぶんかつ)協議書というタイトルの書類を作る必要があります

分けてないよ、とお思いの方、
単なる書類上の約束ごとだと思ってください

 

法定相続人がたった一人しかいない場合は不要です。
相続放棄をしない限り、
すべての遺産、権利も債務も自動的にその人が相続することになるからです

ただし、
だからといって名義の書き換えが自動的に行われるわけではないので、ご注意ください

 

でも分割協議より法定相続分が優先するのでは?
とお思いの方もおいでですが、
遺産分割協議(民法907条)が優先します

 

  • 法定相続だから不要では?

 

また、法定相続持分(民法第900条で決められている)で全部わけよう、と決まった場合は、分割協議書は作成しなくても不動産や預貯金を共有相続することは可能です。

ですが、念のために作った方がよいです後日のために。

 

わたしたちは、悲しいことに、どんなに大事なことでも、忘れてしまう生き物なのです

 

法定相続だから、遺産分割協議書は不要であるということで、何も作らなかった場合、
遠い将来というか、時間がたったあとで、
協議の当事者ではない、その当事者の子や兄弟から物言いがつくこともままあります

 

法定相続分しか相続しなかった人の配偶者または子供が、

これは正当な相続分なのか、もっと貢献してるはずなのでこんなばかな相続を認めたはずがないもっと適正な取り分を渡してもらいたいなどと言い出すことは、けっこうありがちなことです

そんな時、遺産分割協議書さえ作成してあれば、勘違いを簡単に訂正してあげることができます

なので用事が済んでも協議書一式は、捨てないでしばらくは保存しておきましょう

 

  • 分割の結果何も相続しない人がいた

 

法定相続した場合でさえ、
時間がたってしまうと???となることがあるので、さらに、
相続権があったのに何も相続しなかったときは、後日、
その関係者から何か言われることは少なくはありません

こんなふざけた相続は誰かが勝手にやっただけで、ウチは相談もされていないはず。知らないうちに誰かが偽造でもしたのでは?おかしいぞ!ということです

 

でも

不動産を例にとると、

相続人全員の共有名義(法定相続持分)にすることは、全員のハンコがなくても簡単にできますが、
もしもそれが一人の名義になってるとしたら
次のいずれかの書類があったということです

遺産分割協議書に署名して、実印・印鑑証明書をつけた

特別受益証明書民法903条2項に署名して、実印・印鑑証明書をつけた

・家庭裁判所で相続の放棄をした

原則としてこれらいずれかの手続きなしで、
不動産を単独で相続することはできません

 

なので、本人が思い当たることがないということであっても、おそらく忘れてしまっているだけで、たぶん、上記3つのいずれかをご本人がしたであろうことは間違いないと思われます

 

また、そのご本人亡きあとで、
おじいさんの相続の時に何ももらわなかったのは、なぜ?おかしいんじゃない?
というような話になることも多いようですが
本人の相続権を本人がその自由意思でどのようにしたとしても、それは、他人(孫や子ども)がとやかく口を出す筋合いのものではないです

ないですが、
その本人の自由意思で何も相続しなかったということを子孫に示す材料として、
当時の遺産分割協議書が残されていたら、
それにまさるものはないですね。

遺産相続が済んでも、数十年は保菅しましょう。

ただ、どのような証拠を見せられても、
騙された、偽造だ、裁判で決着をつける、などと納得しない人はいるので、その時は仕方ないとしか言えません。

まあ、最悪の場合実際に騙されたのかもしれないですが。。。

 

  • 人は忘れるもの

 

ですから、それらの書類を保管してあれば
少なくとも偽造であるとか、勝手にやられた
などという誹謗からは逃れられます。
安心です。
書類として証拠があるわけですから。

用が済んだからと言って書類全部を廃棄するのはさっぱりして気持ちがよいものですが、
万が一このような事態になったときに、
書類さえあれば、
物言いをつけてきた相手を非常に明快に納得させることができます。

 

書類がないと、権利を主張してきた側は、
何だか騙されたような印象をずっと持ち続けることになりかねませんが、
書類を見せられたらもう文句のつけようがありません。

ほら、こんな風にちゃんと署名捺印してるでしょう、と。

 

それでも、偽造では?とかいう人はいますがその時はもうしょうがないですね。そういう人もたまにいます
言い争っても無駄なので、しかるべき手段(どのような手段かはわかりませんが)をとってもらいましょう

 

後になって考えて
本人または、その関係者にとってどんなに奇妙な納得できない感じがしたとしても、
その時点では、
納得して署名捺印したということだと思います

全然覚えていないとしても。

もしも、

脅迫されたか、騙されでもしてそうしたということであれば、
それは、なんというか、刑事事件というか、
論外です。

またはそのときすでに認知症であったとか。

ですが、実際問題として、
かなりの時間が経過してからそのように立証できないことをいっても
ほとんどの場合、どうにもなりません。
署名捺印(印鑑証明付き)したものは、本人の意思に基づいて作成されたものと推定されるからです。

 

 

では、どうする?

 

本当に簡単なものは、ご家族で相談してお作りになるのもよいかと思います。

それがご面倒、不安ということならば
当方でも不動産の相続登記の前提として、
遺産分割協議書の作成は承ります

 

ただし、

 

相続税が問題となってくるようなデリケートなものは

ぜひ、税理士にご相談ください

 

税金に関連したことは、あいにくですが
当方でできることではありません

税金・納税のご相談は税理士までどうぞ。