遺言書だけで名義変更はできますか

Q 遺言書だけで登記はできますか

 

A はい。原則としてOKです。
若干の書類を加えて頂くだけで、相続の登記は大丈夫です。

 具体的なチェックをしましょう

まず。

その遺言書は、家庭裁判所の検認手続きがお済みですか。

 

未だであれば、必要書類を添えて家庭裁判所の窓口で検認の申立をして下さい。

書類が揃っていれば、

  • 家裁の方で相続権のある人を呼び出し、
  • 検認手続きの期日を指定してくれるので、
  • その日に家裁に行って手続きをします。

 

それが終わると遺言書の原本に検認印をくれるので、
それを使って相続登記 の手続きに入ります。

 

このほかに必要な書類をそろえましょう。

 

  • 被相続人の方(遺言をした人)の死亡事項記載のある戸籍謄本又は抄本
  • 相続する方(遺言で相続人に指定された人)の戸籍謄本又は抄本
  • 相続する方の住民票
  • 不動産の評価額証明書
  • 司法書士への相続登記委任状

以上です。

 

委任状以外の書類は司法書士に取り寄せができるので、
登記と併せてご依頼頂くこともできます。

また、よくご心配なさる方がいますが、
相続しなかった人達の印鑑証明書、戸籍、の類などは、
一切不要です。
(通常、遺産分割協議等によって登記をする際には必要です)

 

気をつけたいこと

 

検認を受けた遺言書であっても、相続による名義変更登記ができないことがあります。

検認手続きは、遺言書 の内容に対して裁判所がお墨付きをくれる、というものでは、ありません。

検認期日にその遺言書が存在していた、ということ証明するだけのものに過ぎないのですね。

だから、その内容や、効力の有無等を判定してくれるわけではないのです。

なので、遺言を遺すに当たって、法定の要件を満たすことはほんとうに重要です。

遺言書の法定の要件(これがないと法律上、遺言書として効力がない、ということ)が満たされていなかったり、
書き方がちょっとあやふやだっただけで、せっかく書いたのに相続登記ができない、ということになってしまうわけです。

 

 法定の要件とは

 

  • 全文自書して捺印
  • 日付を明確に
  • 訂正箇所があるときは、心配ならば、全文書き直す(訂正は厳格な要件ありです)

過去にはこんなことが

 

過去に、次のような不幸な事例があります。
ほんの少しの不注意だったと思いますが、取り返しのつかない不注意でした。

自筆遺言証書の場合は、全文を被相続人の自筆で書かなくてはならないのですが、
本文は自筆であったものの、財産目録部分がワープロ文書だったために、すべてが無効とされた裁判例があります

あとは、作成日付が入っていないもの、入っていても「2018年10月吉日」のようなものは、日付とはみなされないため、ダメです。

印鑑を押して無いのもダメです。

実印(役所に登録してある印鑑)である必要もなく、その辺で売ってる100円の印鑑でもよいわけなので、未だに押印が法律要件として残っているのは納得できませんが、決まりは決まりです。ないだけで、無効とされてしまいます。

 

民法が改正されました

 

しかしながら、このほど民法が改正されたために、この全文自書という高いハードルがやや低くなりました。朗報です。

2019年1月13日施行されます

全文自書といっても、「財産全部は妻の〇〇に相続させる」
これくらいなら多少体が弱っていても、無理をすればなんとか書ける分量かなと思います。

ですが、改正前は、たとえば
「数十筆の不動産を各相続人ごとに相続させる遺言」のときなどは、
それこそ、大変でした。

が、今回の改正部分はここです。

財産目録部分についてのみ、自書しなくても有効
になりました。(ワープロ打ちでも印刷物でもOK)
ただし、各ページに本人の署名押印が要求されています。

 

ぜひ、遺言の内容、書き方等については、事前にご相談ください