お支払いは同時履行で

 

お金を払うのは、もう少し待ちましょう。

もう少し準備が整ってからにしましょう。

お支払いは同時履行(どうじりこう)で。

つまり

不動産(引渡しおよび登記)と引き換えで
お願いします。

 

不動産売買において、通常は

契約書を交わしたタイミングでは、まだ
双方の書類がそろっていないし
書類だけではなく
もろもろ引渡しの準備も整っていないことが
ほとんどなので

即登記というわけにはいきません。

安価な取引や
引き渡しに問題のない取引の場合は
契約決済を一日で済ますこともあります

ここで登記も引渡しもできないのに
お金を全額支払ってしまうのは
少々、問題があります。

 

同時履行

 

世の慣行としては
代金支払いと引渡しは
同時に履行されることがほとんどです。

不動産の場合も
引渡しや登記と代金支払いは
同時履行とされることがほとんどです

ただし

登記は多くの場合
即時に完了するものではないので
通常は司法書士がその責任において
登記書類一式を受領することをもって
登記に替えます。

つまり、司法書士が書類をチェックして
OKであれば、残金の授受がなされます

 

司法書士は、たとえば

  • この権利証では用が足りない、とか
  • 印鑑証明書の期限が切れている、とか
  • 住所変更の登記が必要である、などの

一般の人には気づきにくい点をチェックして
万が一にも遺漏のないように努めるわけです
(これで報酬を頂戴しています)

書類が足りていなければ
もちろん登記はできません。

しかし書類がそろって登記ができたとしても
それだけで万全というわけではないのです。

抵当権が抹消されていないとか
古い仮登記が付いたままのこともあります

たとえ所有権の名義が変わったとしても
それら抵当権や仮登記が付いたままだと

将来

売却したい、とか
ここを担保に銀行からお金を借りたい

となったときに、すんなりいかない可能性が
大です。
(抵当権や仮登記がついたままでも
所有権移転登記は全く問題なく可能です)

司法書士は、そのような危険性を
可能な限り排除するために存在します。

 

個人間売買

登記書類と引き換えでもないのに
お金を先に払ってしまうのは

仲介業者なしでのいわゆる個人対個人の
取引のことがほとんどです。

業者さんがついていれば、
お金のやりとりだけで登記名義を変えないで
済ませる、ということはあり得ません。

そのことの危険性を熟知しているからです

が、仲介費用を節約したい
という目的のために個人同士
(特に知り合い同士)の取引だとどうしても

業者さんはいれたくない、もったいないし
意味がない、
という方もおいでです。

 

ですがそんなときでも
このあとで登記をする必要がある、と
気が付ける、というかその知識がある人は
まだ良いです。

 

そもそも当方に来てくださるのは

お金の授受は終わったので、
今度は登記を依頼したい。

という流れであって、

おそらくご本人たちは
お金の授受だけが先行していることに
さほどの危機感を覚えなかっただけ
なのでしょう。

でも、登記が必要なことはわかっている
ということです。

 

もしも本当に知らなければ
登記のことなど問題外だと思われます。
知らないというのは、そういうことですから。

 

 

今もどこかに

不動産を買って、お金も払ったから大丈夫。
~登記が必要なことは知らないので、
手続きはそれで終了したと思っている~

という重大な勘違いをしたままの方が
おいでなのかもしれません。

 

たしかに

双方の合意のもとに不動産を売買。
お金払ったらそれで、その土地は
自分のもの。

理論的には、というか法律的には
それで合ってます。

が。

 

 

今は良くても

 

それでは、将来的に
とても危険な状態です。

売買の証拠が残らないことが
なにより大きな問題です。

 

まだお金全部もらってない。
と、あとで難癖をつけられたり

売った覚えはない。貸しただけ。
と、しらを切られたり

Aさんに売ったのではない。B名義では?
とお互いの意思の齟齬が露見したり

何が起こるかわかりません。
時間がたつと
双方の記憶も定かではなくなっていくし

そもそも最初から
細かい所まで詰めてなかった
ということもあります。

 

当事者の合意と金銭の授受があっただけでは
こうした将来のトラブルに
立ち向かうことができません。

さらに紙に書いた証拠
(契約書、領収書など)がなければ

売買の事実を証明することさえも
不可能です。

 

  1. 誰が
  2. 誰に
  3. 何を
  4. いつ
  5. いくらで
  6. 売った

せめて、最低限これらを
きちんと証明できるような書類が
欲しいです。

 

 

売買したことについて当事者間で争いが
ないとしても
登記上の名義を変更しないでいると
次のような危険があります。

 

  • 登記記録が以前の所有者のままだと
    その人の債務のために差押えがされることがあります
  • さらに競売にかけられて
    第三者のものになってしまうかもしれません
  • その売主が(悪い人だった場合)
    第三者に二重売買をするかもしれません
  • その売主に相続が開始したら
    その不動産は相続人の名義にされてしまいます
  • また、買主が死んでしまったら
    相続人は、その土地が自分たちのものだ
    ということを証明する手立てがないかもしれません

  理論的には
  登記が変わっていなくても
  所有者は買主さんです。ただ
  登記がされていないので
  売主以外に対しては
  それを主張することができません

 

登記をしなくても、最低でも

・売買契約書がある

・詳しく書いた領収書がある

この2点は買主の所有権を証明するために
必要です。

これらは、そのために将来
裁判をすることになったときに
売買を証拠立てる強い味方となります。

そこまでいかなくても、

たとえば売主が死亡してしまったあとで
相続人から登記を受けるために
有効な説明材料となり得ます。

 

契約書も領収書もないとしたら、
相続人の方々に、どう説明しますか。

 

Aさんから5年前にこの土地を買ったけど
名義変更がまだだったので、
協力してください。

故人からはそういう話は何も聞いていません
でも確認したいので契約書を見せてください

うっかり、作るのを忘れまして。

そうですか。では、領収書を見せてください

ついうっかり、もらうのを忘れまして。

そうですか。そうですか。
どうにもできないですね。
故人があなたに土地を売ったという証拠を
出してください。
そうしたら、協力できるかもしれません。

 

このような話し合いが想像できます。

どうにもならなくなるわけです。

 

おまとめ

 

不動産を買う時は、可能なら
信頼できる業者さんに
仲介をお願いしましょう

不動産を買う時は、せめて
お近くの司法書士にご相談ください。

そして金銭授受の現場には
司法書士を立ち会わせることを
強くお勧めいたします。