所有権の抹消登記をする

所有権の抹消登記~錯誤と取消の狭間で

 

せっかく所有権登記をしたあとで、
諸般の事情によってその登記を
抹消する必要が生じることがあります

 

抹消の理由は、

 

  • 法定解除
  • 合意解除
  • 錯誤
  • (売買の)不存在

など。

 

法定解除合意解除は、

たとえば売買したけれど、やっぱり
諸般の事情により(相手方が約束を守らないとか要らなくなったとか)売買自体をやめるということ

錯誤は、

ここを売買するつもりではなかったのに
間違って登記してしまったので、
その売買登記を抹消するとか

あるいは

この人が買受人ではなかったのに間違って
登記されてしまったので、登記抹消するなど

不存在は、

たとえば売買の事実がなかったのに
登記がされてしまったので、
その現実に即すべく売買登記を抹消する
というものです。

 

民法改正で

 

このほど、
2020年4月1日から施行された
民法の改正により、これら意思表示についての法律も改正になりました

結果、
これまでは可能だった錯誤による無効
主張することが難しくなりました。

というか

登記申請する際のやり方
書類の作成の仕方として

抹消の登記原因が
「錯誤」ではなく
「年月日取消」という扱いになりました

地番が違うなどそうした誤ってされた登記は実体的権利関係と符合しないので、その登記を抹消することはもちろん、可能です

 

ただ、法改正によってそのやり方がこれまでとは違うものになりました

 

錯誤と取消

 

抹消する原因は、

改正前のように
間違ったから当然無効であるので、
抹消する

 

というのではなく、

 

改正後は、
取り消すという意思表示によって初めて
抹消されることになった、
というわけです

 

改正前は、

錯誤で抹消されるということはその登記が
されたその時点ですでに間違っていたということなので、
「原因 錯誤」というように、
単純に、登記原因は年月日不要の錯誤だけ

登記の時点から間違っていたので当然に登記の瞬間から無効なわけです。

 

ところが、

改正後は、
取り消すまでは、有効 です。

ですから、取り消しの意思表示が必要で
かつ、
その意思表示が相手方に到達する必要もあり
登記原因は意思表示が到達した日付で
「原因 令和2年9月3日取消」
のようになります

 


民法97条(意思表示の効力発生時期)

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなす

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、または行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない


 

この改正によって、司法書士が作成する登記原因証明情報は変更が余儀なくされました

登記原因証明情報とは、
登記をする際に
その登記原因を証明する書類のことです

売買であれば、売買契約書が該当するし
抵当権抹消であれば、弁済証書等がそれにあたります。

ですが、通常、
司法書士が登記を受諾するときは
司法書士が登記原因証明情報を作ります
これは必要最小限の情報量でその登記が
可能となるように作成されるものです

売買契約書などは情報量が多すぎるので登記に供するのは可能ですが不適当です。登記原因証明情報として売買契約書を添付したときは、その原本は登記完了後に依頼人に返却しますがそのコピーは登記申請書の添付書類として登記所に30年間保存される決まりがありますその結果、それを見たい人は基本的に誰でも見ることができてしまうため個人情報保護の観点からも全くおすすめしません

売買契約書に比較すると、登記原因証明情報に記載されるべき情報は当事者の住所氏名物件の所在地番法律行為の内容(売買した、など)くらいに過ぎず、圧倒的に少ない情報量で同じ登記が可能となります

 

 

こんなふうに登記原因証明情報は作る

 

旧民法95条では、
意思表示は法律行為の要素に錯誤があったときは無効とする

とされていたため、

土地の番地の錯誤で違う土地を登記してしまったとき、これまでは、こんなふうに登記原因情報を作成していました

本売買は隣接する〇〇番の土地を目的としたものであり、所有権移転登記は、目的物を誤ってなされたものである。よって本件土地に所有権の移転の事実はなく所有権移転登記は無効なので抹消する
(改正前登記原因証明情報)

 

しかし、2020年4月の改正によって

民法95条(錯誤)

意思表示は、次に掲げる錯誤(後掲)に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる

 

とされたため

本売買は、隣接する〇〇番の土地を目的としたものであり、所有権移転登記は、目的物を誤ってなされたものである
よって、本件土地に所有権移転の事実はないので、買受人は売買意思を取り消し、売渡人はその意思表示を令和2年9月3日受領した
(改正後の登記原因証明情報)

のように書くこととなりました

 

作成上のポイント

 

登記原因証明情報の作成にあたっては、

・錯誤によって当然に無効となるのではないため

・表意者(買受人)が、たとえば
物件を勘違いしていたため売買を取消す
の旨の意思表示をし、

・相手方(売渡人)がその意思表示を受領した

これらの記載が必要です

 

なお、文言としては
錯誤により売買を取り消す、だけでは
足りません

これだと、錯誤を証する情報としては相当ではないとされています

 

法律行為のどの部分に
どのような錯誤が
あったのか
具体的に明らかにすべき、

との登記所の見解があります。

 

というわけで

 

頼んだものと違う登記がされてしまったら
どうしてそんな登記がされてしまったのか
本当のところを包み隠さず教えてください

 

そうすれば、

必要な登記原因証明情報を作成し
所有権の抹消登記をすることが可能です

 

ご心配な方は、どうぞ
お気軽にご相談ください

 

民法第95条(錯誤)意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示錯誤)

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機錯誤)

2前項第2号の規定による意思表示の取り消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消をすることができない

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき(悪意重過失)

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき(共通錯誤)

4 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片岡 えり子

千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。