権利証は保管しておくべきか

本当に権利証は捨ててもいいのか

 

現に効力のある権利証であれば、絶対に
保管しておいてほしいと願うものです。
なので、間違っても、
積極的に捨てたほうが良いとは言いません

ただ、

捨てたからといって
それほどの不利益を被るわけでもない人と
非常な不利益を被る人がいます
登記のときの手続きが面倒で余分な費用がかかるとか事情によっては登記自体が不可能となることもあります

なお、登記を一切しないのであれば、
権利証が有ろうがなかろうが、全く関係ありません。

しかし、未来のことを予見するのは不可能なため、絶対に売らないぞと思っていてもどういうように事情が変わっていくかはわからないし、また、どなたかにそこを差し上げたくなるかもしれません。先のことは本当にわかりません。

 

不動産登記はそれぞれが非常に個々の事情に左右されるものです

事情によっていろいろな種類の登記がされます

なので、同じ住宅街の隣の人が、
家族構成も同一だし、同じような不動産を所有していたとしてもすべて同じように登記をしてきたわけではないので、
同じタイミングで売ることになったからといって、
同じような手続きで済むかといったらそうではありません。

だからこそ専門職~司法書士が職業として成り立つ、ということでもあります。

 

 

こんなときにも必要な権利証

 

Aさんは、親から相続した土地に
Aさんの名義で家を建てました。

このほど、売却がきまったためすぐにも
売却の登記ができるはずでしたが、

登記簿の名義はまだ亡親のままでした

親は、昭和の初期に北海道勤務のときに
将来に備えてこの土地を買ったという話です

 

お隣のBさんは、銀行ローンを借りて
土地を買い、そして家を建てました。
Aさんと同じく、売却が決まりましたが
結婚前の古い住所と今の住所がつながりません
姓が変わったこともあってか、
除かれた住民票や戸籍の附票も取り寄せましたが、
「20年前の証明書は出せない」、という
市町村からの廃棄証明書しか取れない状況です

 

これらの手続で、権利証が必要です

 

相続登記なのに

 

Aさん

親からの相続登記をするにあたって
親の本籍地と旧住所地が異なっており、
さらに戸籍附票等をたどっても北海道の住所がでてこないため、
本人同一性を証するために権利証を添付します
(通常、相続登記に権利証はいりません)

 

名変(住所と氏名の変更)登記なのに

 

Bさん 住所の変更登記が未了でしたが
そのための書類がそろわない(何十年か前に数回引っ越しをしたため住民票除票はすでに廃棄されていて入手できない)ので、
本人の同一性を証するため権利証が必要です

さらに姓も登記上と異なっているため
単純に住所だけがつながればよいという訳ではありません。
(通常は、住所・氏名の変更証明書がそろえば、権利証は不要です)

 

売却のときにはもちろんのこと

 

また、売却にあたって、
Aさん、Bさん、ともに
所有権移転登記のために権利証か
登記識別情報が必要です

ちなみに、

Aさんは、親から相続登記したときの権利証
Bさんは、買ったときの権利証

 

では、それらの場合に、もしも
権利証が添付できなかったらどうなるかを
検討してみましょう

 

権利証がなかったらどうするか

 

相続登記をする際

 

登記簿上の住所と、
本籍あるいは戸籍附票の住所地が相違していて
各種証明書を取得してもつながりがわからず
同名異人の可能性が否定できない場合に権利証が求められます

このときに権利証が添付できないときは
当該土地の固定資産評価証明書の所有者欄に
その方の名前が記載されていれば、
だいたいOKです(相続登記可能)

Aさんのように、
土地上に家屋が建っていればその土地に
課税されていないということは考えられないので、
ほとんど大丈夫です。

きびしい登記官だと、さらに何か
本人が所有者であることを証明するものを
要求されることもありますが。

どうにもこうにもならないときは印鑑証明書付きの上申書でやってもらえることもあり。それをやっても何をやってもダメ(相続登記不可能)なこともあり

 

これがもし、単なる山林などで
課税がされていないときだと
所有権を証明する書類がないということで
相続登記ができないこともあります。

これは、経験あります。

 

また万が一、

同名異人の土地を登記所が見逃して
他人へ相続登記してしまった場合は、
国家賠償請求をうける可能性があるらしく
このあたり、登記所はけっこう慎重です

損害賠償請求を受けるのは司法書士も同様ですが。

権利証あればよかったのですが、
ないものはどうにもなりません。

 

所有者の住所変更の証明書が
つながらないとき

 

除かれた住民票等は、
5年で廃棄されてしまうことが多いので
たとえば、30年前の登記の住所地から
すでに5回くらい引っ越しを重ねているなどのときは、
住民票や戸籍附票からその変遷を証明することができなくなります。

そのときに本人同一性の証明として
権利証を添付することがあります。

相続の際と全く同じ理由で、
同名異人である可能性を排除し、
その人の所有権を証明するために
権利証を添付します。

このときも、
評価証明書にその人が所有者として記載
されていれば、だいたいOKです。

もしもその土地が非課税で、
評価証明書も取得できないとなると、
住所変更登記ができないという事態もありえます。

 

ところで、

単純に住所変更登記ができないというのは
さしたる問題とは思われないかもしれません

 

ですが。

このままだと、所有権の移転ができません。

売却はもちろんのこと、
将来、相続が発生したときも、
同名異人の可能性が排除しきれない限り
いずれの登記もできません。

最悪の場合、ぼんやりしている間に
上手に権利証を偽造した人に
権利を乗っ取られてしまう可能性さえもあります。

 

売却の際に権利証がないとき

 

この場合はほとんどの場合どうにかなります

ただし、次のいずれかの手続きが必要です

 

  1. 登記所から郵送される事前照会通知
    (無料)に回答書を提供する
  2. 司法書士による面談を経て、
    その売買でのみの権利証代わりとなる書類(本人確認情報)を作成してもらう(通常は有料。ただし、費用は司法書士によってかなりの幅があり)

 

ご 注 意

ただし、これらの方法による扱いは
本人同一証明として要求される権利証の紛失等に対応するものではありません。

それらはその時(登記がされた過去のある時点)においてその登記がなされたことの証明書(その時点でしか作成されないし再交付は絶対にされない)を所持してることによる本人確認資料として必要なのであって
売買や担保設定の際のような便宜措置は意味をなさないからです

 

事前通知のときの問題

 

事前通知制度とは、具体的には
このようなものです。

  1. 権利証以外の書類をそろえて、普通に
    登記申請をすると、
    登記所から本人の住所あてに
    本人限定受取郵便という
    本人しか受け取れない特別の書留郵便が届きます。
  2. 内容は、
    登記が申請されてるけど間違いないかな?
    という照会です。
  3. この照会状に、
    署名し実印を押して登記所に返送すると
    登記が通常通り進行する、という仕組みです

 

・困ったことその1 受け取れない

住民登録だけで実はそこには住んでいない
施設に入っているとか、
入院しているとか等により、
状況によっては、本人が受け取れない可能性があります。

発送後2週間以内にこの回答書が登記所に到達しないと無効になってしまうこともあり、
ご本人がこの通知を
間違いなく受け取れるのかどうかが
この手続での大事なポイントです。

さらに、この郵便を受領するには、
ご本人であることを証明できる書類
(法定されています)の提示が必須です

 

・困ったことその2 先走る

ほとんどの場合この照会状を受領してから
残金の決済が行われます。

具体的には、
署名捺印後の回答書と引き換えに通常の
残金決済がおこなわれることになります。

ところが、

残金の授受をしないうちに登記所へ返送してしまうと
登記だけが完了するということになり、
取引としてはかなり危険なことになります。

事前に重々説明はするのですが、

登記所からの照会状には、「署名押印後、登記所に届けるか郵送すること」と書かれているので、
その注意書きに則って返送してしまうことがあります。
登記完了後に金銭の授受を行おうとするのは安全ではありません

 

・困ったことその3 渡さない

不動産の売買に慣れていれば、この非定型的な決済は面倒ではあるにしろそれほど特異なものではありません。
しかし、初めてご自分の大事な家を売ることになったというお年寄りの場合など。
特に、仲介業者との信頼関係が万全ではないというときは問題になります

「普通はお金と引き替えに登記書類を渡すはずだが権利証がないからといってお金も受け取らないうちに実印押した委任状や印鑑証明を渡すのはいかがなものか」という主張をなさる方がいるわけです。
ある意味当然の主張です。
心配になるのが当たり前です。

そこを業者さんだけではなく司法書士も一生懸命説明しますが、
この人達怪しい、
業者も代書人(司法書士のこと)もグルかも
と思われてしまったら、その疑いを払拭するのは大変です。

ここで、本人確認情報に切り替えることができれば問題は解決するのですが
どういうものか、このような人たちは
写真付きの身分証明書を持っていることは稀です。
本人確認情報の作成ができないということになります

 

本人確認情報作成の問題

 

問題その1 司法書士との面談が必要。

この面談した日付や場所などを情報の一部と
して登記所に提供します。なので、
面談は必須なのですが、
国内であれば出向くことは可能ですが
海外となるとちょっとむずかしいです。

ちなみにテレビ電話は不可

 

また国内でも、
季節によっては老人施設など、
関係者以外立ち入りが禁じられるところもあります。
病院でガラス窓越しに携帯電話で会話をする
のはありですが。
そこまでたどり着けないこともままあります

面談ができないときは、この手続は
選択できません

また、

司法書士本人が面談することが要件なので
補助者をちょっと海外派遣して
面談してきてもらう、などという手続きも
できないことになります

 

問題その2 本人確認書類が揃わない

運転免許証、マイナンバーカードであれば
写真付きの公的証明書なので、
それだけでOKです

しかし、保険証、などは、
写真がない証明書のため
2種類以上の添付が求められています

保険証しかない人もけっこうおいでです
そのような方は、この方法は使えません。

前述した事前通知制度を使うしかありません

 

 

 

おまとめ

 

というように、権利証があるときに比べて、
面倒ですし、余分な時間や費用もかかります

さらに、

本来ならば簡単に済む登記が
不可能!!という事態になることも
ありえます

なので、少なくとも将来売却の可能性が
あるのであれば、
権利証は大事に保管しておくべきです

 

それなら、用済みの、権利の残ってない、
カラになった権利証なら捨ててもよいのでしょうか?

売却済みの権利証は原則的に不要なものです

売買の決済のあとで、カラ権利証は処分するか返却するか
と必ずお尋ねしますが、半々くらいの印象です。
何度も売却をしているような方は
あとで、かえってわからなくなると困るからいらない、
とおっしゃる方が多い印象ですが、
思い出に手元に残したいという方もおいでです。
見るのも嫌という方も中にはいらっしゃいます

 

申告に必要という話を聞くこともありますが
税金の申告に必要なのは、権利証ではなく、
購入したときの売買契約書ではないでしょうか

税金については、完全に門外漢なのでよくわかりませんが

 

 

ただし、こんなときは

 

☆死者名義の権利証にご注意ください

それは基本的にいらないものなのですが、

名義人が死亡してるのでいわゆる権利証としては使えません
相続登記にも原則として不要です

 

ですが、

相続登記未了で不動産の名義が被相続人の
ままだったとしたら、
捨てるのはちょっとお待ち下さい。

いわゆる権利証としては使えませんが、
登記簿の故人の住所がどうしても最後の
住所地とつながらないときなどに
本人の同一性を証するための証明書として
必要になることがあります。

また、

故人がどこに不動産をもっていたのか
確認したい場合も権利証があれば、
その作業は非常に楽です。

なので、

相続登記が終わってない場合は、
しばらくの間、廃棄なさるのは
お待ちになったほうがよいと思います

 

廃棄と失効申出

 

現に効力のある権利証登記識別情報であっても、盗難の危険をさけるために貸し金庫よりは廃棄することを選ぶという方も稀にいます

 

かつての紙の権利証であれば、
シュレッダーするなり暖炉にくべるなり
廃棄するのは簡単かと思われます
そしたら権利証はこの世から消失します

 

しかし、現在の登記識別情報通知も、
紙で保管してあるのであれば、その紙を
廃棄するは簡単です。

が。

識別情報(12桁の英数字)は、
この世から消失するわけではありません

現実問題として、紙に印刷された
登記識別情報通知を廃棄した時点で
ほとんどこの世から無くなったも同然とは思いますが、
法務局パソコンの登記データとしては残っています

これを消失させるためには、
登記識別情報の失効の申出というものが
あります

1筆の不動産について、1枚の申出書が必要です。
実印で作成し印鑑証明書も必要

8筆の不動産について失効申出をするときは
申出書は8枚必要です
同時に申請するなら印鑑証明書は1通

このときに、登記識別情報通知は
添付する必要はありません
紛失を理由として失効申し出をすることもあるため

 


(登記識別情報の失効の申出)
不動産登記規則65条

登記名義人またはその相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、通知を受けた登記識別情報について失効の申出をすることができる。


 

この失効申出は 通常は、
保管について不安のある方(権利証をわざと廃棄するが如き)がするものではなく、紛失などしたときに不正な登記を事前に防ぐ目的でされるものです

 

詳細は司法書士までお尋ねください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片岡 えり子

千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。