白紙委任状を渡すということ

白紙委任状を渡すということ

 

白紙委任状とは一体なに

白紙委任状というのは、
委任事項(何を依頼するのか)が一切書かれていない委任状のことです

委任する人の名前だけ。というか、
へたをすると
実印を押しただけの委任状もあります

 

単純に見れば、
誰に何を委任するのか
全く書かれていない
ため、
どうもしようのないもので法的に無効なものと思いがちですが

とんでもないことです

 

これは、
白紙を好きに埋めて使っていいよ、
という委任状なのです。

 

いわば、
金額の書かれていない小切手のような
ものです

そのままでは、
金額の不記載ということで無効ですが。
そこに好きな金額を入れることで、
その金額の小切手が出来上がる、と
いうことですね。

 

それと同様のことが
白紙委任状でも行われます。

 

どこの誰かわからない誰かにすべてを委ねるという委任状です。
ご本人はそのようなつもりは少しもないと思いますが外から見るとそのような意味合いになります

白紙委任状にさらに捨印(すていん)
まで押してあるものもあります。

これだと、もう、
どうにでもして、好きにして、
という意味です

 

捨印(すていん)とは

捨印は記載した事項に加筆訂正したいとき
欄外に〇〇字加入〇〇字削除というように
訂正事項を記入する際に必要になります

つまりは将来必要になったときに備えて
念のため、事前に
欄外に押す印のことです。

押し方は、署名のあとに押したハンコ
と同一のものを欄外(ふつうは上部)に
押すだけです。

ですが、

もちろん捨印を押す義務はないです
この捨印がないと登記も含めてもろもろの
法律行為等ができないということは
絶対に、決して、ありません。

もしも、
納得できない捨印を求められたら
断固、拒否して大丈夫です。

ただ、事務を扱う側としては、できれば
押して頂きたい印鑑ではあります。
捨印あるときとないときでは、
空欄を埋めていくときの緊張の度合いが
まるで違うので。

ですが
無理強いをするわけではありません

捨印を押して下さるとしたら、
それはその方の好意ですし、当方を
信用してくれたということなので
ただただ有難く思います。

念の為に付け加えると、日付、とか
些細な住所の誤りを訂正するときに
捨印がないと、もう一度書き直すか
その訂正箇所に訂正印をもらい直す必要が
あります。
訂正のあっけなさに比べて手間がかかるので
(もう一度書類を送り返すとか、もう一度訪問するなど)
捨印ひとつあると精神的に
楽なだけではなく、このように実務上も
益することが多いのです。

 

ただ、これは、諸刃の剣です

単なる些細な訂正にとどまらず、
大胆な、
やってはいけない改竄(かいざん)
をする際にも
使われてしまうことがあります。

 

開業したばかりの頃、もらった白紙委任状に捨印がないのでできないと言った私・弱冠37歳はいきなり仲介業者から怒鳴りつけられました

「司法書士が何ふざけたことを言うか捨印ないのは当たり前だろ、ちゃんと書けよ。もし書き間違えたらそこに訂正印もらってくるから、ちゃんと書け」と叱咤激励(というか叱咤叱咤叱咤)されたことがあります。

なんと、その時まで決済のときにもらえる委任状には、必ず捨印があるものとばかり思っていたのです。恐ろしさのあまり地面に飲み込まれたいと思ったくらいでしたが。(睨まれながら、満座の注目を浴びつつ、それでもちゃんと間違うこと無く書けたのは、偉かったと思う。そのときに叱ってくれた業者さんには今でも感謝!でもあの時はただただ怖しいばかりなりけり)

 

○白紙委任状や捨印 その問題点とは

 

具体的にはこんなふうになります

悪用のされ方

たとえば、

・不動産を1筆しか売るつもりがないのに
10筆売られてしまうとか。
・仮登記のつもりだったのに、
本登記されてしまうとか。
・賃貸の登記と言われていたのに
売買されてしまったとか
・お金を一銭も借りてないのに、
2500万円も借りたという抵当権を
つけられてしまう、とか。

まだまだあります

・友達の名義にするというから
売ることにしたのに
全然知らない人に買われてしまうとか

・司法書士Aに依頼するというから頼んだのに
司法書士Zに勝手に依頼されてしまうとか

どのようにも好き放題やりたい放題に
内容を捏造(ねつぞう)したり
改竄(かいざん)することが可能です。

ですが、
これは紛れもなく言うまでもなく
犯罪行為です。

司法書士はもちろん絶対にやりませんし
信用問題どころではすまされません。

多くの場合も普通はこのような悪事は
働かないものです。

ですが、
捨印がある以上、
このような可能性があるのだということは
ご注意いただきたいところです。

 

○訂正印

 

書き間違いの文字の上に押す印のこと。
これもやはり署名のあとに押したハンコと
同一のものを押すものです。

捨印は誤記がないにも関わらずとりあえず
念のために押しておくものですが、

一方、訂正印は、どの誤記をどのように
訂正するかという書き手の意思
はっきりと基づいているし、

訂正印を押した場所以外の事項について、
訂正することはできないという意味において
安全です。もしもこれさえ認められていないとすると全文を書き直す必要が生じるため実務上、手間がかかりすぎることになります

 

では、委任状には何を書くのか

 

委任状の記載事項というのは、

  • 誰が、
  • 誰に、
  • 何を
  • いつ
  • どのようにするのか

 

基本的には以上です

登記に際しては、どのように、の部分を
詳細に書く必要があることもあります

 

不動産登記においては、

たとえば、
所有権移転登記の委任状はこんな感じです

 


委任状

茂原市上林184番地1
司法書士 片岡えり子

私は後記物件の令和2年3月10日売買
による所有権移転登記に関する
一切の件を上記の者に委任します

登記権利者 堀上貴子

不動産の表示 どこそこ何番の土地

令和2年3月10日

登記義務者  茂原市下林1841番地
       片山りり蔵  実印


白紙委任状は、この場合だと、
末尾の登記義務者の
署名捺印以外すべてを空欄
作成したものです

 

○白紙委任状の書き方

 

委任状

(空欄につき省略)

 委任者 茂原市下林1841番地
     片山りり蔵  実印

 


 

こうしたものは、ほとんどの場合は、
取引の仲介者か
買主に対して、
印鑑証明書と権利証と一緒に渡すことが
多いかなと思われます

 

おそらく売主側(白紙委任状を渡す側)は
買主または仲介業者との間で
すっかり話がついており、しかも、
その人たちとの間に揺るぎない信頼関係が
構築されていると思い込んでいるのでしょう
(たぶん)
または、言葉巧みにそういうものだ、と
思い込まされているのかもしれません
しかし、その信頼が将来、
とんでもない事態を招くことがあるのです

 

実際に、
面倒だから、そういうことで全部頼むよ、
とばかりに、誰かに白紙委任状を
託す場合もあるでしょう。

いつもそうした頼み方をしているとか

そういうものだと思いこんでいるとか

 

実際、それで問題がないことがほとんどだとは思いますがこうしたことは問題が生じてからでは遅すぎます

 

1筆だけ売るつもりだったのに、
全部売られてしまうとか。

 

現在の登記識別情報は基本的に1筆に1通ですが平成18年までの権利証だと同時に登記したすべての不動産が一つの権利証に載っています。
特に相続登記などでできた権利証は、
田舎の大地主さんだと何十枚にも渡って分厚いものになったりします

なので、
白紙委任状に好きなことを書かれてしまい
売る予定ではない物件を取られてしまう
などという事件がかつては、わりとあったようです。

 

現在は白紙委任状は通用しないはず
とは言っても

 

現在の登記実務では
司法書士によって売主買主本人の意思確認
非常に厳格に行われているため、
白紙委任状と権利証だけで、
はいよ!よしきた!と
仲介業者等に言われるがままに
登記をするということは絶対にありません

そもそも平成18年から、
義務者側(売主)は委任状だけでは
登記はできず、
登記原因証明情報という書面も
作成する必要があるため、
このような間違いは、
起こらないシステムだとは思いますが

ですが、かつては、
そうしたことが無きにしもあらず。

一筆のつもりが全部売られた。だから、
司法書士は信用しない、
捨印は絶対押さない!と主張した方が
何人かおいででした。

 

○まとめとして

 

白紙委任状は怖いです

ですが、その怖さに気づいた時は
もう手遅れだったということになります

現在の登記法においても、
白紙の登記原因証明情報に
署名捺印してもらえば、委任状とセットで
登記手続きを行うことは
不可能ではありません。

 

司法書士であれば、
このような依頼を受託することは
ありませんが、登記は、司法書士でなくても
やることが可能です。
本人申請のふりをして第三者が登記をする
などというのは、ざらにある話です。

 

司法書士でない第三者に登記書類を
託すのであれば、
委任状、登記原因証明情報は
自分でしっかり書いてしまえ、くらいの
気概でいてほしいと思います

 

手遅れになりませんように。

 

書類の作成でご不安のときは、どうぞご相談ください

登記関係書類の作成も、お引き受けできます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片岡 えり子

千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。