遺言書保管 死亡後の通知

遺言書を法務局で保管するような手続きを
したあと、できればその事実を誰かに
伝えて置けるとよいですが
そうもいかない時でも大丈夫です

法務局から職権で相続人等に対して
通知が行くような仕組み
なっているからです

職権というと法務局がすべての相続人を
調査するのかと思いますが
そういうことではなくて

最初に
遺言書の閲覧希望または
遺言書情報証明書の交付申請をした相続人に
それら情報の提供が義務付けられている

というわけです

 

もちろん、遺言書保管をした証明書は
遺言者の手元に残るので
身近な家族にそれを渡しておくことも
できます。

あそこの法務局に遺言を預けてあるから
そのときはよろしくねと頼んでおくことも
できます

死後の手続きの煩雑さを
少しでも軽減するためにもしも可能であれば
そのように伝えておいた方がよいかもとは
思います

一方

遺言を書いたことが一族に露見したら
内容を事前に知られたら
争いになるかも

というご心配をなさる方も
おいででしょう。

少なくとも自分が生きている間は
それだけは勘弁してほしい

と、お思いかもしれません

 

ですが、遺言書が人に見られることは
絶対に
ありえません。

 

遺言を閲覧できるのは、遺言者の死亡後
に限られます

 

死亡前に遺言書の閲覧ができるのは
遺言者本人のみです

 

遺言書の交付申請等をする

 

遺言者の死亡後に
最寄りの遺言書保管所(法務局)に対して

相続人等から
遺言書の閲覧または

遺言書情報証明書(遺言書のこと)の
交付申請をする際の必要書類として

相続人全員の
連絡先(戸籍・氏名と住所)の情報が
求められています

 

相続人全員??
聞いたこともない相続人がいるらしいけど
住所はもちろん、連絡先も本籍も
全然わからないけど、どうするの?

とお思いになることもおありでしょう

ですが、それを提出しないと
遺言書情報証明書は取得することが
できません

面倒でも、調査して
(ご自身で調査ができないときは
それを業としている司法書士・弁護士に
依頼することになります)
それらの書類を
かき集めて
取得申請することになります

 

具体的には

  • 相続情報一覧図
    (相続人全員の住所が入ったもの・住所が入っていなければ
    全員の住民票も必要)
     

    または

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
    (これがないと相続人が確定できない)
    および
  • 相続人全員の戸籍と住民票
    (または戸籍附票)を提出することが求められています

 

 

つまり、相続人等のうちの誰かが

遺言書の閲覧申請か
遺言書情報証明書の交付申請をすると同時に

相続人全員の存在および住所が保管所に
明らかになるわけです

 

遺言書保管官はその相続人等に対して

被相続人の死亡の事実及び
遺言書保管の事実を

郵送により通知します

遺言書の内容は通知されません

 

遺産相続には関係ない人はどうするの?
相続権はあっても何ももらえない人は
関係なくないですか?

お思いでしょうか

連絡されたくない相続人のところにも
連絡が行くのはどうして? 
という
当然の疑問が浮かぶわけです

また

何十年も会ってない人もいるのに
今さら相続人全員に連絡がいくって
これって理不尽なのでは?
ということです

 

たとえば、ずっと昔に離婚したきり全く交流のない前妻との間にできた子どもとか。
(申し訳ないがその子どもたちには何も遺す余裕がないので。)
(そもそも何十年も付き合いがないので、葬式に来られても他の家族が困惑する)

または
遺留分がないのでできれば知られたくない兄弟たちとか(妻にすべてを遺すという遺言があるのだが必ず口を出してくるので死亡の事実を知られたくない)など
それぞれに当事者としてはまっとうな、事情を抱えている場合があります

 

被相続人(遺言者)としては
最後の意思表示である遺言内容が実現されることが
至上命題でしょうから

その実現を妨害してくる可能性のある人の目には
できるだけ触れさせたくないのが人情でありましょう

3人いる子どものうち
一人だけにしか遺産を遺さなかったときに
あとの二人には、その事実をできれば知られたくない
というのもわがままな願いではありますが
せめて、遺言が執行されるまでは、余分な口出しは
されたくないものです
(子どもであれば、遺留分があるので
口出しされることは想定しておかなければならないでしょうという部分はとりあえず考えないものとして)

または
遺留分のない相続人(兄弟姉妹)に対してまで
連絡が行ってしまうというのは、いかがなものか
という気持ちです

 

おそらくは
相続人としての個々の権利を守るために
一見理不尽としか思えないものですが
そのように定められているのでしょう

相続人であれば
関係性の濃さ薄さに関わらず、等しく
(法定相続分はそれぞれに異なるにしても)
相続人としての権利を有するから
ということかなと思います

身もふたもないことを言えば、
「そのように法律で定められてしまったから
でしょうか。。。