遺言書を見つけたら

遺言書を発見したら、まずすべきことは、

 

それは公正証書遺言なのか

自筆で書かれた遺言なのか、を判断することです

どちらなのかによって、このあとの手続きが変わってくるからです

 

相続手続きにおいては、

遺言書がないとしたら多くの場合は
遺産分割協議が必要です

なので、もしも遺言書があるなら、
遺産分割協議に入る前に発見したいものです

 

公正証書遺言だった

 

遺言公正証書の場合は、ほとんどの場合、
公証役場の封筒に入れられています
そこに、正本、とか、謄本などという赤いスタンプが押されてあることも多いです

それをあけてみて、遺言書が入っていたら
まず、
遺言書が発見されたということを相続人全員に連絡をした方がよいです。

遺言書を発見して黙っていると、
相続人欠格事由とみなされることがあり、そうなると、相続人となることができなくなります

 

自筆遺言書だった

 

・封筒に、「遺言書」と表書きがあれば、一番わかりやすいです

裏に、丁寧に「私の死後、家裁に届けて必ず検認を受けること」と書かれたものを見たこともあります

・封筒に入っていないこともあります

ペラっと1枚の紙に、「すべての遺産を妻の〇〇に継がせる」と乱れた筆致で書かれたものをみたことがあります

これが有効なものなのか、老人の世迷言にすぎないのだろうか、一体どうなのか、と思ったら、
司法書士にでも見てもらうとよいです。

ちなみに、
この文言で広告チラシの裏に書かれたものでも、下記の形式的要件を満たしていれば、有効(執行可能)な遺言書です。
検認をうければこれに基づいて、不動産の相続登記ができます

 

様式として有効なものかどうかは、
それほど難しいものではないので、インターネットで調べるなどしても大丈夫 だと思います

自筆遺言書の形式的要件

 

様式としては、次の要件すべてを満たしていることが必要です

  • 全文自署
  • 日付必要(月日だけではだめ)
  • 氏名と押印
  • 加筆訂正するときは厳重な要件あります
  • 遺産目録の部分はプリントしたものでもOK
  • ただし、各ページに氏名(手書き)と押印が必要(裏があれば裏にも必要)

 

このうち、

手書きでなくても大丈夫とされた部分(財産目録)については、数年前に法改正があったためにこのような取り扱いがされるようになったものです

なので、

法施行前の自筆遺言書については、
この扱いは認められていません

施行は、平成31年1月13日です

つまりこの前に書かれた遺言書は
全文自署である必要があります

 

以上の形式的要件を満たしていれば、あとは
内容にもよりますが、家庭裁判所に遺言の検認を申し立てて、検認をうけることがまず必要です

ちなみに、

形式的要件を明らかに欠いている自筆遺言書だとしても
検認を請求すべき義務があり、

この義務違反においても
過料が課されます
民法第1004条1項・1005条

 

検認申立て

この検認をうけないと、遺言に従って遺産を分けることができません。

 

検認申立ては、

  • 亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います
  • 相続人または遺言保管者から申し立てます必要な書類は
  • 亡くなった人の戸籍と住民票除票
  • 相続人の方全員の戸籍
  • 遺言書のコピー

 

ちなみに、

封筒に入って封をされている遺言書を勝手に開封すると罰せられることがあります。

しかし、開けてみないと何が入っているのかわからないこともあるわけで、
このあたりは、さほど厳格に運用がなされてはいない印象です

民法第1004条
3 封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封することができない

第1005条
(略) 家庭裁判所外においてその開封をした者は5万円以下の過料に処する

 

裁判所に申立てをすると、
検認期日が定められて、裁判所から
相続人全員に対して連絡がされます

相続人は出席することが望ましいですが
全員が出席しなくても検認期日は開かれ、
検認を受けることが可能です

検認を受けた遺言書があれば、
遺言の執行すなわち、不動産の名義を変更したりすることができます

 

つまり、

検認を受けた自筆遺言書は検認を受けて初めて
手続き的に
公正証書遺言と同じ感じで手続きを進めていけるようになるわけです

 

 

 

 

悪いタイミングで発見された遺言書

 

遺言が
公正証書遺言でも、自筆遺言でも
どちらであっても、

財産を取得する人または信用できる人
弁護士事務所などに預けてあれば、
そもそも問題はないのです。

ですが、

誰にも言わずに、そっと、引き出しの中などに格納されていると、とんでもないタイミングで発見されたりして、相続人はびっくりします

最初から、遺言書が絶対あるはず、と思って相続人一同で家探しをしたなどであれば、もちろん心の準備はOKなので、あとは粛々と対応するだけですが、いきなりそんなものが登場すると、一同びっくりです。

たとえば、

古い和ダンスを整理業者に引き渡す前に一応中を改めてみたら、手書きの遺言書(らしきもの)が出てきた。など。

または、個人の布団を整理しようと押し入れから久しぶりに取り出したところ、枕カバーの間から、ぽろっと遺言書(らしきもの)が飛び出した、など。

これが一番困惑させられるパターンではないでしょうか

 

 

相続人間で協議も終わって、とりあえず預金不動産等の遺産すべての処分が決定されてしまってからそんなものが発見されてもどうしようもありません。

すでに遺産は残っていないわけですから。

 

だからといって、
見なかったことにして捨ててしまったりするのは、マズイです 違法です

「遺言書を勝手に破棄または隠匿した者は相続人になれない」という法律があります

 

そこで、

協議した内容と遺言が違うなら、遺言通りに相続をやり直そう、という意見が出ることもあるでしょうし、

せっかくだけど、みんなで決めたことを優先してこれは見なかったことにしよう、と話が穏便にまとまることもあるかもしれません。

 

見聞した限りでは、

一度した相続をやりなおすのは、
手続き的にはできないことではありませんが
特に税金の面などから面倒ではあります

税理士ではないので、
詳細は本職に聞いてもらうとして、ともかく面倒だし、余分な(かどうかは、個々人の価値観に委ねますが)出費が必要になる、ということだけはご了承ください

また、相続登記の名義を抹消して、再度、他の相続人の名義にすることは可能です(ただし、贈与税がからんでくるので、税金の対応については、税理士にご相談を)

 

では、どうするのか

 

が、被相続人も、
生きている間は遺言を遺したことを知られたくない、でも、死後は速やかに発見してもらいたい、とお思いだったのでしょう。

そうでなければ、ナイトテーブルに置いておくとか、必ず枕元に置いておく、などの措置をとったはずです。
まあ、なかなかそのあたりの加減が難しいのだと思われますが

 

遺言が発見されても
相続人のみでの分割方法について書かれているのであれば、全員の合意で、
遺言とは異なる分割をすることは違法ではありません。

ただ、

相続人以外の方や法人等への遺贈についての遺言の場合は、
握りつぶすのはいかにも問題ありでしょう。

また遺言執行者が定められている場合も同様です。

これらの場合に相続人が勝手に握りつぶすと
相続権をはく奪される可能性があります

 

(相続人の欠格事由)
民法891条
次に掲げる者は、相続人となることができない

5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

これに該当する恐れがあるからです

 

逆に言えば、

受贈者や遺言執行者が定められている遺言であっても、その受遺者、遺言執行者の同意があれば、
遺言と異なる遺産分割協議をすることは可能ということになります

 

ですが、

被相続人は、
残していく人たちのために良かれと思って、おそらく多大な労力を費やして、

遺言を作成したのだと思います
故人の遺志、といわれるものです

死んでしまえばそれで終わりなのであとは好きにすればよいのだと
何も後のことを考えず、後顧の憂いなく、全てをあとの人達に託して
遺言の類は一切残さずにさっさと切り上げるのも人生。

ですが、

最後の力を振り絞って遺言を遺し、最後まで遺志を全うさせようとして生きるのもまた人生。

人それぞれ、どちらもかけがえのない切ない人生だと思います

 

遺言の検認申立ての書類作成を承ります

ご相談はどうぞお気軽に。