リモート決済の落とし穴

リモート決済の落とし穴

 

近年、特にコロナ禍を経て
リモート決済が多くなりました

 

厳密には、リモートというより
郵送での決済と言うべきものです

おそらくそこからイメージするのは
リモートワークとかリモート会議
などのようにzoom等を使っての
やりとりかと思いますが


意思の確認や打ち合わせが
zoomでできたとしても
肝心の書類のやりとりは人の手を介して
つまり
郵送でやらざるを得ないわけなので
100パーセントのリモートはまだ
時期尚早かと。


アナログ司法書士としては、それはむしろ
有難いことではあります

 

仲介業者さんからのご依頼の感じとしては

お客さんが高齢なので郵送で
とか

コロナが心配なんで郵送で
など

つまりは「郵送でなんとかしたい」
依頼されることがほとんどです

 

郵送での決済とは

 

まず

・売主様から
委任状や、権利証、印鑑証明書などの
登記に必要な書類全部を
司法書士が預かり
同時に売却の意思、登記の意思を
確認します

ここで買主様からも書類を預かることもありますが
それは後回しにして次に行きます

 

・買主様に
売主側の書類がすべてそろったことを伝え
振込を促します

・買主様は、代金全額を
売主指定の銀行口座に振り込みます

 

・売主様は代金が入金されたことを確認し
その旨を司法書士に連絡します

・司法書士が登記を申請

 

というような流れです

 

一番大事なこと

 

郵送でやりとりするにあたっては、先方が
司法書士にある程度の信頼感を
持っていてくれることが
ともかく重要です

 

なにしろ
売買代金と引き換えではなく
(これが普通の同時履行)

お金をうけとっていない段階で
司法書士に
登記ができる書類一式全てを
預けるわけです

 

その司法書士が、勝手に誰かに
登記してしまったらどうでしょうか

そのように考えると
司法書士に不信感を持っている人には
この方法は論外です

基本に立ち返って
通常の立会決済をすべきです

 

通常の立会決済とは

 

通常、不動産の決済というのは

ざっくり言うと

 

当事者全員がどこかに集まって
司法書士が
登記書類一式を預かるのと引き換えに
売買代金(残金全額)等の授受をすることです

 

つまり

その売買の件に関しては
これですべて終了させる

といったイメージです

ただし、残務として
登記完了後の登記識別情報通知等の受け渡しとか
何やらがさらにあるのですが。

 

さらに詳細を述べると

当事者全員?

 

ここで当事者というのは

売主・買主・のみならずそれに関わる
それぞれの仲介業者・司法書士・さらに
必要あれば銀行担当者・火災保険担当者など

関係者も全て含みます

さらに必要あれば
税務署、市役所、役場等が参加することも
あって、けっこうな人数になることも
あります

これまでに一番多い時で
15人ちょっとくらいだったでしょうか、
付き添いは除いて

最少だと、司法書士を入れても3人です

 

それら全員が

どこで?

 

銀行など
(お金の出し入れ・やり取りがあるので)
に集まって

これも通常の応接コーナーでは
入りきれなかったりするので、会議室を
お借りすることもあります

ただ、近頃では、時代の流れでしょうか

売買だけの取引の際には、銀行は場所を
貸してはくれないことが多い印象です。

銀行待合席で横一列に並んで決済
というのもあります。

非常に非常に不便ですが仕方がないです。
お金の出し入れがあるので
ここはどうしてもATMが必要なわけです

 

現金を事前に用意しておけるとか
決済金は預金小切手でなど
現金の移動にさほど問題がない時は

銀行でするメリットがありません

そのようなときは

業者さんの会社で、とか
司法書士事務所で、という運びになります

 

具体的には何をする?

 

司法書士が登記書類一式
委任状に署名捺印してもらったりします)を
預かるのと引き換えに

売買代金(残金全額)等の授受が
されることになります

 

このときに、売買代金のみならず
当事者すべてが
お互いこれで貸しも借りも全てなし。
というレベルまでお金書類等の授受を
済ませます。

 

一種の清算という感じです

なので
売買代金(残金全額)のみならず
必要あれば抵当権等の抹消費用、
業者仲介手数料、司法書士登記費用、
土地家屋調査士地目変更費用、測量費用、
水道加入料、リフォーム費用、
廃棄物処理費用、防蟻工事費、などなど
全ての支払いを完了させるものです。

またお金だけではなく、例えば
仲介業者においては引渡確認書とか
水道メーターの名義変更やらその他諸々
何やらの書類のやりとりなど

ともかく後日に積み残しがないように
書類仕事もすべて行うものです

 

積み残し・やり残し

 

ですが
リフォームが一部まだ済んでない

とか残置物が未処理、とか
状況によってはこの日に
完了していないこともあります

ただ、この機会を逃すと

事実上、
当事者全員で集合することはないので

やり残しがあるとその性質によっては
それなりに面倒なことになることを
覚悟しておく必要があります

そこで念のために
絶対この日までには○○をする、という
念書や合意書のようなものを
取り交わすことが多いです

ともかく、実際上

お金のやりとりが終わってしまうと
確約したことが守られないことは
ままあります。

悪気はない、とは思いますが

約束を守らないのは
悪気はなくても悪いことです

 

 

スケジュール・スケジュール

 

当事者全員が一か所に集まり
全てのお金のやりとりを
その場で済ませるそのためにはまず
全員の都合を合わせる必要があります。

そのスケジュール調整部分が
ともかく非常に面倒極まりないもので

大人数になるとそれだけでも大騒ぎで
いっそ郵送でのやりとりの方が楽
なのは間違いないのです。

ただ、それでもなお
万が一のことを考えると

事情が許すのであれば
当事者全員が顔を合わせる方が良いかな
と思います

 

 

登記は、即、終わらないのでは?

 

登記は通常、すぐには完了しないものなので
その代わりに司法書士が
登記の書類登記識別情報通知、権利証、印鑑証明書
そのほか~これで登記の申請ができるというレベルの書類一式
を預かって
それで登記は大丈夫(なはず)という
いわば暗黙の了解のもとに決済を行います

 

ですから

書類はそろいました、これで登記は
大丈夫です。お任せください。
では、どうぞお取引を。

などと
いわゆる実行宣言をした手前、これで
登記ができなかったりしたら、
100パーセント司法書士の責任です。

 

たとえば
印鑑証明書の日付が切れていた、とか
印影が印鑑証明書と異なっているとか

または考えたくないですが、
前提登記である住所変更の登記を
失念したなど。

これらは
司法書士の不注意としか言いようがないので
その責任は常に重大です。

ですがそれでも
これらはほとんどの場合
当事者の協力を得ることが可能ですから
登記完了は少々遅くなるにしても
これらが原因で登記ができない、
ということは通常はありません。

 

ですが、怖いのが、たとえば

印鑑証明書や権利証が
偽造だったりした場合。

登記所での調査でそれらが発覚したら
悲劇です。

 

さらに
近年何度かニュースになったような
地面師たちによる組織的な詐欺が
行われでもしたら

それを見抜く自信は私にはありません。
面談した時点で、その地主がすでに
偽物なわけですから。

 

このような
本人ではない人からの所有権移転は
仮に登記が完了したとしても無効です。

買主はその所有権を取得しません

 

理想の決済

 

理想というか
ほぼ妄想に近いものですが

暑い日の午後などに夢想します

たとえば、こんな感じ。。。

法務局のラウンジのテーブルを借りて

爽やかなピアノ曲などが流れる中
関係者一同和やかに挨拶を交わし
司法書士が書類を集めて
登記の受付窓口に提出。

冷たい紅茶などを飲みつつ
優雅に待つこと数分の後に
さらりと登記完了です。

その場で買主はそれを確認し
代金を支払い、ほかの資金も移動完了。

めでたく決済終了し
労いと感謝の言葉が飛び交う中で
一同解散というものです

 

ところが

これは本当の夢物語でしかありません

法務局にはラウンジもテーブルも
知ってる限りではありません。

飲物の自動販売機はあると思いますが。

 

実際、法務局で
決済をする羽目になったことは
過去何度かありますが
こんな感じで進みます

 

待合席の隅で(なぜか隅)
当事者が集まって

書類を確認し、署名捺印してもらい
買主さんが凝視する中、司法書士が
汗を拭きつつ登記書類を窓口に提出。

登記の受領書をどうにかその場で受取り
それを買主さんが確認する、という

セレモニーといったら語弊がありますが
ようやくそこに至って
買主さんが残金を支払う、というものです

 

郵送決済のメリット?

 

郵送での決済のメリット

 

ですが、コロナ禍にあって

他人と顔を合わせたくないとか

そもそも決済は
銀行等で行われることが多いため
人混みには出たくないという人が続出し

郵送でできるだけなんとかしようという
機運が高まりました

 

また、親の土地をたまたま相続しただけで
当該土地には縁もゆかりもない所有者も多く

こうした人は遠方に住んでいることもまた
多いものです

さらに、
近頃の土地の価格の低落を考えると
わざわざ一日仕事を休んで交通費をかけて
(宿泊費が必要なことも)
電車に揺られてそんな遠くまで行かずに
何とか済ませられないのか

という方々の
ニーズにお応えすることが多くなったわけです。

特に、
不動産価格の低落というのは影響が大きく

バブル期に1000万で買った土地が今では
100万どころか、50万円でも
買い手がつかない、という話は
よく聞くところです。

 

特に売主側としては

多少の面倒や
コロナり患の恐れがあったとしても

親から、棚ぼたのように相続した土地を
1000万で買ってもらえるなら

または、
100万で買った土地に1000万円の
買い手がついたなら

遠路はるばると決済に立ち会う甲斐も
あるというものですが

そのようなおいしいハナシは
近年滅多にないわけで

期待値が高いのに実際の取引値は
その10分の1以下だったりすることも
稀ではありません

その立会に、そんなもろもろの費用を
かける価値があるの?
と思うのは
当たり前です

 

へたをすると、買主側でさえ
もう、契約時に
たっぷり説明をしてもらってるので
決済には立ち会わなくてもよいかな
ということも多いです。

これが何千万円の買い物だったら
そうはいかないだろうと思いますが

何しろ低廉な物件を購入したりするときは
そうそう何度も現地または現地付近の
決済場所に行くのは面倒、という気に
なるのかもしれません。

 

デメリット~司法書士は怪しい

 

まず、売主様から
登記書類一式をお預かりする必要が
あります

面談での決済であれば
お金と引き換えなので

初対面の、海の者とも山の者ともつかない
司法書士風情に
権利証などを預けることに特別の抵抗感は
ないでしょうが

 

これが郵送だと

まず事前に書類一式をお預かりしてから

売買代金振込

それを確認してからの登記申請

という流れになるので

 

大事な権利証その他を
代金ももらってない段階で
知らない司法書士に預ける、ということは

仲介に入った方をよほど信頼していない限り
気分よく応じてくれることは難しいです

それであれば、もう、当然

郵送での取引はできません。

 

デメリット~悪い人もいる

 

司法書士が
登記の仕事を引き受けるにあたって
一番心を砕くのが

ヒト(人)、モノ(物)、イシ(意思)の
確認です

 

なので、司法書士にとっても
これらの確認をリモートでするというのは
けっこう度胸がいりますが

そこは

職務上の要請があればなんとかなるというか
なんとかしないと先には進めません。

 

「電話の相手が売主本人だとどうして
わかりますか(わからないでしょ?)」と

電話した相手から聞かれたことがあります
(な、な、なんと!)

よい質問だと思います
答えは文末に。

 

電話で会話さえできれば
モノの確認もイシの確認もそれほど
困難なことではありません

ヒトの確認については
zoomやスマートフォンの
テレビ電話機能を用いてなんとか
凌ぐこともありますが

このあたりは、まあ
企業秘密と言いましょうか

仕事!ですから

 

ですが、このあたりについては、たとえ
直接面談したとしても、事情はそれほど
変わるものでもなく

もちろん写真付きの証明書で
本人であることの確認はするのですが

写真付きの証明書を持ってない方も
普通にいらっしゃいます
特にご高齢の方など。それはそれで写真なくても
諦めるしかないです。

写真付きではあっても
これがまた、個人番号カードだったりすると
写真が小さいうえに写真なので
まあ写真というものはそもそも
本人と似ていないこともわりとあります

男の人でも、長かった髪を
ショートヘアにして髭などをはやしたら

どう見ても別人にしか見えないことも
あります

あの日の決済のあの売主様。もちろん
ご本人だったことを前提に話していますが
まさかですが、いや、本人だったと
思います

ただ
本人ではないと信じる合理的な理由は
なかったので登記に至りましたが。

 

デメリット~本人ではないかもしれない

 

本人ではないかもしれないと
疑わせるような合理的な理由
というのは

おそらくこのようなことだと思います
まだ遭遇したことはないですが。

 

たとえば、代表的なのが

  • 印鑑証明書によればまだ30代なのに
    写真も本人も60歳くらいにみえる。
    またはその逆パターン。
  • 権利を取得したのが昭和30年位なのに
    年が妙に若いとか。
  • ごく最近に登記したのに権利証を
    紛失していて、おまけに住所変更を
    したばかり。
    権利の取得について問いただしても
    微妙に歯切れが悪い。など。

 

疑えばきりがないのですが
こちらも仕事なので、お察しください

当事者の希望する登記を完了させるのが
仕事であって、すべてはそのために
必要なことなのです

 

司法書士は、

司法書士法第1条 (司法書士の使命)

司法書士は、・・・国民の権利を擁護し
もって自由かつ公正な社会の形成に
寄与することを使命とする。

 

自由かつ公正な社会の形成ですよ!!

 

むしろ
本人に判断能力がないのではないかと
うっすらと心配になったことはあります

絶対にないと確信できればお断りしますが

このあたりは
非常にデリケートな問題なので

この場合も微妙な対応、つまり
個別の、その都度の対応・判断
ということになります

 

デメリット~複雑な決済は不可能

 

立会決済の際に
当事者・関係者が20人近くになることがあります

そうしたときは、郵送での決済は
不可能です

 

  • 抵当権を売買の代金で抹消したり
  • 同じく、
    差押えを売買代金で解除したり
  • さらにその売買代金は
    銀行からの融資を受けて支払われる

 

このようなときは、郵送での決済は
あり得ません。

登記技術的に無理です

 

 

危ない取引を避ける

 

決済時に面談したから大丈夫とか
リモートだから危険というのは

実はそんなことはありません

どちらもそれほどに差異はないのでは?
というのが実感です

 

面談してもダメなときはダメですし
電話確認だから危険ということも
ないです

 

もしも
人が誰かを本当に騙そうとするのであれば

直接面談だろうとリモートだろうと
防ぐことはできないでしょう。

騙す方も必死ですから。

ただ

もちろん被害を最小限に食い止めるための
努力というか

そのような事件に巻き込まれないように
最大限の注意は払うべきです。

 

私が仕事柄、特に気をつけていることは
いくつかありますが、、、

これは面談であろうと郵送であろうと
一緒です

 

  • 妙に急がされる決済は危険度高し
  • 当事者全員が妙にそわそわしているのは
    危ない
  • 妙に安い価格での売買は注意
  • 電話番号を教えてもらえないのは
    オカシイ
  • 司法書士を同席させない
  • ともかく何となく、危ない

 

やっぱり
誰が考えても危ないものは
やはり危ないことが
多いのではないでしょうか

 

ともかく

 

  • 妙に売り急いだ物件取引は裏が
    あることが多い
  • 相場よりも安すぎるまたは高すぎる
  • 仲介業者が、売主と買主を
    直接会わせないようにしている
  • 妙に調子がいい
  • 必要以上に親密感をアピールしてくる
  • 条件がどちらかにとって
    あまりにも不利
  • 買主がお金を持っていないように
    見える
  • 決済に司法書士を同席させない
  • ともかく何となく、危ない

 

 

 

当職は、このように
危ない予感のする取引は
お引き受けしないので
お断りするわけですが

危ない感じがするだけで、実は別に
どうということもない平常通りの売買。
ということもあるとは思います

 

でも、君子危うきに近寄らず。

君子ではないですが

ああやっぱり危ない案件だった。ほら
騙されちゃったよ!  

これでは
何のための危機管理なのか、ということに
なります

 

おまとめ

 

意思確認のために電話した相手の方に

私が売主本人だと、電話だけで
どうしてわかりますか?
(わからないでしょ、電話じゃ)

と聞かれたことがあります。

 

この時私は
決済現場からの架電であって

この返答次第では
この決済が流れることになるという

けっこうな緊張の場でありました

たぶん開業したばかりのまだ三十代
初々しい頃だったと思われます

 

私が売主本人だと、電話だけで
どうしてわかりますか?
(わからないでしょ、電話じゃ)」

 

    一・瞬・の・緊・張

 

私の答え

ええっ? では、
ご本人様ではないのですか?

 

 

 

 

不動産の売買登記のことは
どうぞお気軽にご相談ください

ただし、

あいにくですが
税金のご相談は承れませんので

ご容赦ください