司法書士・他の士業との比較

司法書士とは何か
他の士業と比較してみる

 

法律の条文をつらつら書いてみても
いまいちわかりにくいと思うので

他の似たような業種の士業との
比較を試みます

 

私たち士業からすると
どのように異なっているのかは
歴然としているのですが
(自分たちの仕事なので当たり前ですね)
多くの場合は
非常に間違った理解というか
印象(単なるイメージ)を持たれがちです

 

特に、大新聞でさえ
行政書士と司法書士の区別を
きちんとわかっていないことが多いです

両者とも不動産~土地や建物~に関わる印象が
強いためと思われます

さすがに弁護士は、士業の最上位なので
これを他の士業と混同することは
考えにくいですが

ですが弁護士と行政書士と混同してる方には
何度かお目にかかったことがあります

  • 行政書士
  • 司法書士
  • 税理士

このあたりは混同が頻発します

特に
司法書士と行政書士については
大新聞が間違えるくらいなので
ほぼ
同一視されていると考えても
よいくらいです

 

実際、経験上、何度「司法書士です」と自己紹介しても「行政書士さんは・・・」と言い替えられることもたびたびです。いまやそういうものだと諦めているので何とも思わないですがこの職業の知名度の低さはどうにかならないものかといつも愕然しますうらやましいです 

 

テレビで、行政書士の華やかな活躍が
ドラマになったように

行政書士がそんなに華麗に
活動ができるのかは若干疑問ですが(うらやましいです)
ドラマはノンフィクションではなくて、おハナシですから
展開を楽しめばよいだけなのですが

一般大衆に与える影響としては
かなり大きいものがあります

登録者数も司法書士に比較して
断然多いですし。

特にテレビで流された物語には
私たちは簡単に洗脳されてしまいます

 

さて
一方の司法書士は
テレビドラマには
してもらえないのでしょうか
(もしかしたらドラマとかありますか?
諸々、はなはだ疎いので。。。)

ただし
法律に準拠したシナリオだとしたら
ドラマ化してもおそらくあまり
面白くはないでしょう

でも、上記行政書士のドラマのように
何でもありのフィクションであれば
いけるのではないでしょうか

どうにかして司法書士という職業の
知名度がほしいと切に願うものであります

 

各士業に頼めること

 

司法書士のしごと

 

  • 不動産・会社法人の登記
  • 簡易裁判所手続代理
    (認定司法書士のみ)
  • 裁判所提出書類の作成
  • 供託の代理
  • 以上の付随業務

 

行政書士のしごと

 

  • 許認可の申請
    車庫証明等自動車関連・農業委員会 建設業許可
    産業廃棄物 古物 風俗営業 
  • ビザの取得
    ただし、全部の行政書士ができるわけではないです
  • 文書の作成
    契約書・借用証書・贈与契約書・離婚協議書・
    内容証明郵便など
  • 遺産分割協議書・相続一覧図の作成
  • 弁護士や司法書士等がつくる書類以外
    書類作成(婚姻届けとか)
  • つまり裁判用の書類、登記用の書類等は
    業務外ということになります
  • 以上の付随業務

 

土地家屋調査士のしごと

 

  • 不動産の表題登記
    建物新築 所在地番 地目 面積などの変更 合筆分筆
  • 土地の境界関係

 

※ちなみに、よく似た(ような)資格に
測量士というものがありますが
測量士は登記をすることはできません 

土地家屋調査士は
測量士(補)の資格を持っている人が多いので
混同されることが多いようです

 

社会保険労務士のしごと

 

  • 従業員の労働や
    社会保険全般人事労務管理についての
    専門家です
  • 労働保険関連の申請書や帳簿の作成

 

弁護士のしごと

 

  • 裁判手続きの代理
    (弁護士が付かないと
    絶対にできない裁判もあります)
  • 私人間の交渉の代理

 

税理士のしごと

 

  • 税金申告(書類作成・代理)
  • 税務相談全般

※税金申告にあたって
不動産の売買贈与等がからむことが多いため
税理士も不動産登記をすると
思っている人たちもいます

また、会社の税務申告を担っているため
税理士も商業(法人・会社)登記ができると
思っている人もいます

いずれも間違いで
税理士は、登記はできません

 

弁理士のしごと

 

  • 特許の申請
  • 特許(知的財産権)に関する
    紛争の解決(裁判の代理ができる)

 

 

 

 

このように並べてみると
司法書士は圧倒的に地味ですね

司法書士の仕事 もう少し詳しく

 

寂しいので、もう少し細かく言うと

 


不動産(土地・建物)の登記
とは

  • 相続 売買 贈与などによる
    所有者の名義を変える登記
    (所有権移転)
  • 抵当権の設定・抹消(担保設定・抹消)
  • 名義人表示変更の登記
    (名前や住所の変更)会社法人の登記とは
  • 設立登記 役員変更 業務目的の変更
  • 本店変更 役員の住所変更 解散
  • 清算結了など

あとは

  • 簡易裁判所手続代理
    (認定司法書士のみ)
  • 成年後見人業務
  • 遺言の執行
  • 裁判所提出書類の作成
    (相続放棄 遺言検認申立
    訴状作成)
  • 供託の代理
  • 以上の付随業務

などです

 

自分自身が日々こなしていることなので
項目が多くなる半面、派手さがないなと
思うのかもしれないですが

どうしても行政書士や弁護士の方が
ドラマティックな展開が期待できそうな
業務です

 

去年まで当職も行政書士登録をしていましたが
やはり片手間仕事なので
それほどスリリングな状況には遭遇することは
ありませんでした

そもそも、難しそうな仕事は
本職の行政書士さんにお願いしていましたし。

特に
営業許可証の取得やビザ関連
何よりも迅速さと正確さが求められるわけで

やはり行政書士の専業であり独壇場だと
感じます

素人にできるのは
車庫証明と農地法3条許可申請くらいでしょうか

 

業際問題

 

実は、このような士業間では
職域については微妙なところがあって
どっちの士業がやるのか
デリケートな仕事については
業際(ぎょうさい)問題が頻発します

 

当の士業者には、かなりの部分で
ほぼ明確なことであって
これを勘違いすることは
通常はあまりありません。

ですが、けっこうデリケートで
難しいことなので
よく考えないで
勢いで引き受けてしまうことも
ないとは言えません
もちろん気が付いた時点で、平身低頭陳謝して
他を捜してもらうわけです 申し訳ありませんでした

 

なので、開業時などは(初心者なので)
特に間違えるおそれが大なので

研修の一環として
業際問題についての授業があります

少なくとも
司法書士会や行政書士会では
年に数度行われています

他の士業もおそらく同様だと思われます

 

ほかの士業の業務だと知っていながら
意図的に違法なことをしているとしたら
懲戒処分の対象になる可能性が大です
(意図的でなくても懲戒ですが)

このように
判断が難しい事案もあるくらいなので

一般の方に
このあたりの区別がうまくつけられないのは
当たり前です

 

で、私のところにも
司法書士の業務外の仕事の依頼が
結構あります

  • 地目変更して欲しい
  • 相続税申告をやってほしい
  • 古物の許可をとってほしい
  • 代理で交渉に言ってほしいなど。

そうしたときは

それは司法書士の仕事ではなく
○○士の専業なので
他の士業がやると法律違反になるので
できません

とご説明しています

 

いずれにしても
自分の資格でできない仕事を頼まれたら

ラッキーと思うのではなく
事情を説明すべきでは、と思います

 

 

インターネットで検索すると

 

一般の人が
何かを誰かに依頼しようと思った時には
おそらく、口コミか
インターネットで検索をして
選ぼうとすることが
多いかと思います

 

 

相続登記?

たとえば
相続手続きを依頼しようとしたら

おそらくネットで検索すると

行政書士が先頭に表示されることが
多いと思います

ですが
不動産登記(相続 贈与 売買など)は
実は司法書士の専業です

なお
弁護士が登記をすることは法律には違反しないものの
実は登記は専門ではありません

 

司法書士によく似た資格
(と多くの方が認識している)である
行政書士ですが

たしかに行政書士は
司法書士と比べると

資格者の多さにおいて
圧倒的に勝っています

広告も派手なことが多いです

ですが、行政書士は
相続(登記)をすることはできません。
これをしたら、司法書士法違反となり
懲戒処分の対象となります

 

 

行政書士が登記をするのはNG

 

便法というか、抜け道として
本人申請という手段が使われることが
あります

つまり
Aさんが行政書士に登記を依頼しても
行政書士が登記書類を作成して
申請をするにあたって

申請人の欄には
行政書士の名前を書くことは
(法律違反だから)できないため
Aさんの名前が書かれることになります

Aさんが本来の意味で
本人申請をすることには
全く問題はないのですが

Aさんの依頼によって
行政書士が違法な登記申請をすることは
問題があります

 

または、行政書士事務所で集客をして

行政書士が
相続書類の収集や遺産分割協議書などを
作成して

登記だけを司法書士にいわば外注する
というようなことも行われます

これは違法ではありませんが、おそらく
ダイレクトに司法書士に依頼するよりも
高額な報酬請求がなされるかと思います

 

相続関連でいうと

行政書士は
遺産分割協議書を作成することはできます

その付随業務として
戸籍等の取り寄せや、さらに
法定相続証明書を作成することもできます。

ですが、登記はできません。

 

裁判所提出書類の作成

 

また、間違えやすいと思われるのが
裁判所への相続放棄手続きです

 

裁判所提出の書類作成は
司法書士の専業です

なので、同じような相続関連にも関わらず
行政書士には放棄書類を作成することは
できません。

 

 

誰に頼んでも同じか

 

行政書士と司法書士はこのように
非常に混同されやすい名称であると同時に
仕事内容が近接しているために

一般消費者からすると
どちらに頼んでも同じなのでは?
ということになります

 

その気持ちはようく、わかります

 

なかには
弁護士と行政書士を混同してる方も
おいでですが
こちらはわりと少数です

ただ
弁護士並みの報酬を請求する行政書士は
普通に存在します

 

 

問題なくことが進行している
その限りにおいては

司法書士でも行政書士でも
どちらに頼んでも同じかもしれないです。

法律に違反しているということを
除けば。

 

そして、その法律違反の責任は
士業の側にあるので

依頼者(お客様)が
罪に問われるとか
罰金が課せられる、ということは
ありません

ご安心ください

 

責任の取り方

 

両者の資格の相違が明らかになるのは
万が一の事態、問題が生じたときです

 

勘違いのため書類が足らなくて
今月中にできないとペナルティが来るのに
手遅れになったとか

見当違いのことをしていて、結局は
所期の目的が達せられなかったなど。

要するに
納期までに仕事を完遂できないというのが
最大の問題です。

 

他士業の仕事をして
(この段階で法律違反ですが)
損害を与えた場合
(さらに民事上の賠償責任が発生する)には

その士業資格で加入しているであろう
(これは義務ではないので加入していない人もいます)
損害賠償保険は
使えません。

 

 保 険 ?

 

士業資格の損害賠償保険は
業務の追行に起因して発生した不測の
事故について損害賠償請求を受けたとき
に適用されるものです

なので、法律違反の結果
損害賠償を求められたとしたら
全額自分の責任で弁償です

 

このあたりを一言でいうと

万が一の際に、自分で
責任をとれるか否か
ということに尽きます

 

 

また、弁護士と司法書士間でも
業際問題はあります

 

司法書士の訴訟代理

 

認定司法書士は
簡易裁判所の代理をすることができるので

訴額が140万までであれば
弁護士のように代理人として
裁判に関わることが可能です

140万を越えたり
簡裁管轄ではなかったりすると

司法書士は裁判の代理をすることは
できません。

また、刑事事件の代理をすることも
できません

そもそも司法書士は
裁判での闘い方のトレーニングを
受けているわけではないので
簡単にノックアウトされそうです

 

あと、司法書士は
私人間の交渉に関与することも
できません

これができるのは弁護士だけです

 

行政書士 交渉代理

 

行政書士もよく
私人間の交渉(保険・交通事故・闇金)に
介入して

懲戒処分をうけたりしています
このあたりテレビドラマになりやすいというか
スリリングな展開になるところですね

 

何も知らないお客さまから

交通事故の処理や保険事件をやってほしい
と頼まれたときに

弁護士じゃないからうちではできない
と断わるべきところ

そのまま引き受けてしまう人も
いるということです

 

実際、医師や薬剤師と大きく異なり

資格の有無がイコール
技術知識の有無と
さほど関係しているわけではないので

選ぶのは、その人の自由ではあります

 

ただ
無資格者によるそうした業務については

誰も責任を取ってくれないことについては
予め覚悟が必要です

 

おまとめ

 

依頼者からすれば

どの士業に頼もうが
頼んだ仕事をやってもらえれば
それで良いだけなので

違法であるとか、そのようなことは
関係ないことです。

 

頼んだことさえ問題なくやってくれて
できれば適正価格でやってもらえれば
それで充分!

そんなところだと思います。

 

自分にできないことを誰かに頼むときは
その人がどんな資格を持っているかは
ほとんど考えないものです
(稀に細かい人はいますが)

○○引き受けます、と書かれた
広告看板などを見て、さらには
お店の外観や雰囲気をざっと見て
違和感がなければ
それで依頼してしまうことが多いのでは?

たとえば
看板に偽りなし、という言葉があるように

法的に許容されない事業目的を掲げることを
敢えてする人はいない、と
無意識に看板の力
信用しているのかもしれません

 

電気工事を頼むときには
(どのような資格が要求されるのかはわからないですが)
ウエブサイトを見て
やってもらえそうなところに
お願いしてしまいます

知人か友人で
やってくれそうな人がいなければ
多くの場合はそのような感じで
自分にできないことを誰か
専門家に依頼するものでは
ないでしょうか

それを考えると
士業間の業際問題などは

顧客側からすれば
全くどうでもよいハナシです

 

仕事が問題なく完了して
できれば適正価格で
できれば気分よく
仕事をやってもらいたい

それだけなのです。

 

 

それが一番だと、私も重々承知しています 

 

おそらく、わりと近い将来にこのような規制というか
他士業の仕事に手を出すと懲戒、という法律は
撤廃されてなくなるのではないでしょうか

 

職業的には明らかな危機かも
しれないですが
わたしはそこに
希望を見たいと願うものです

 

 

 

 

 

司法書士は
不動産や法人・会社の登記を
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