会社代表者の住所の登記

会社の登記記録には会社代表者の住所氏名が記録されています

・・・・・

氏名はともかく
住所はやたらに他人に知られたくないかも
と思います

ところが、今の法律だと
会社の代表者の住所は、もれなく
登記簿に記載されることになっています

なんということでしょうか。

プライバシーはどこに??

 

登記事項

 

代表者とは

株式会社ならば代表取締役
有限会社だと取締役のこともあり
合同会社だと代表社員ということも
ありますが
社会福祉法人などだと理事(理事長)が
その組織の代表権をもつもの、として
登記がされます

 

代表についての登記事項は
資格・住所・氏名です

次のように登記されます

 


代表取締役
千葉県茂原市上の林18番地41
片山りえ
令和6年2月6日就任


 

資格・・代表取締役、代表社員など

住所・・住民登録されている住所地

登記の際に印鑑証明書がいるので
そこに記載の住所が登記されます

氏名・・同じく、住民登録された氏名です

 

これらが
登記事項全部証明書~会社登記簿~に
記載されます

 

 

というように代表者の住所については
知りたいと思った人は誰でも調べることが
可能ということになります

会社の登記簿(登記記録)を
取りさえすれば。

 

会社謄本の取得

 

会社の登記簿謄本(全部事項証明書)は
誰でも、その費用を納めて
取得することが可能です

商号とざっくりした所在地さえわかれば

いまやサイトに本店所在地と正式な商号を
公表している会社は多いので
探し当てることはさほど難しくありません

 

誰であっても利害関係などがなくても
費用さえ支払えば
代表者の住所は簡単に調べられる
ということです

 

これがイヤさに
本来代表者であるべき人ではなく
住所を公表することに
さほどの抵抗感のない人を
代表に据えてしまう、ということも
あるかもしれません

登記した後で、引っ越しをして
本当の現住所が
わからないようにすることさえあります

 

本来は、登記事項に変更が生じたら
代表者には
2週間以内に変更登記をする義務があります  

ちなみに、この義務違反をすると
罰金~過料~に処せられます

 


会社法第976条
(略)100万円以下の過料に処する

1 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき

(以下略)


 

 

住所が公表されるということは
怖いですよ~~~

 

ある日、ノックに応えてドアを開けると
見も知らぬ人が代表者の顔を見たさに
そこに立っている
ということです

質の悪いクレーマーが
会社のサービスについて直に
苦情を言うために
夜中に自宅ドアを叩いてくる
ということです

 

ここまで悪質でなくても

会社にいくよりこっちが近いから
と言って
本来会社あての書類を
休みのリラックスしているときに
手渡しされることがある
ということです

いずれも勘弁してほしいと思うものです

 

ですが、そのような事態は
今や決して荒唐無稽な想像ではありません

どう考えても、とても危険です

 

商業登記法が改正になる

 

これらの不満、危機的状況を踏まえてか
このほど商業登記規則が
改正される運びとなりました

 

施行時期はなんと
今年6月3日を予定。

 

現在のところ
意見募集がなされている段階なので

現在公表されている改正案が
手直しされるのかされないのか
まだわからないですが

すでに、施行まで
4か月を切っているのでどうなるものか
楽しみ。。。

 

改正案を見る

 

第31条の3(概略のみ)

登記をする人は、代表者の住所につき行政区画以外のものを記載しない措置を講ずるよう申し出ることができる(代表取締役等住所非表示措置)

 

 

登記をする人というのは

 

これから、

設立
本店移転
役員の就任、役員の変更
役員の住所変更等を
申請する人
という意味です。

 

つまりは
現在すでに登記されている人は
保護されないというか、対象外のようです

 

さらに、申出をするにあたっては
それぞれの会社の態様によって
提出すべき書類があります

 

たとえば

  • 資格者代理人(司法書士)が会社の本店所在地において実在することを確認した結果を記載した書面
  • その会社本店あての配達証明郵便が送付されたことを証する書面
  • 代表者の氏名住所の記載された証明書
    (住民票?)
     

などです

 

そして
登記官がその申し出を適当と認めたとき
代表取締役等住所非表示措置がされる運びとなります

 

プライバシーだけ守られればよいのか

 

この非表示措置は
単純に住所を公表したくないという代表者に
とっては、とてもよい方法ですが

 

一方
取引先や債権者側にとっては

何らかの事情によって
代表者住所が必要になったときには
はて、どうすればよいのか?という
とても悩ましいものでもあります

つまり、会社の責任を追及するために
代表者の住所氏名が必要なときに

それを知る手段がないとしたら
一体どうしたらよいのでしょうか

 

登記・経済・法曹界には

この改正~住所の非表示措置~は、ある意味
登記の公示機能が害されるので
このままでは
取引の安全が担保されないのではないか
という懸念があります 

 

登記情報を確認しても
代表者
(会社に対して最終的に取引の責任を負う人)
住所が表示されないのであれば

いざというときに、誰に対して
責任追及をすればよいのか!?
ということです

 

また
単に氏名のみが登記事項であるときは
同姓同名者の存在も考慮すべきことに
なるわけで
あの人が代表か、と思いきや
単に同名異人であるという可能性もあります。

 

全てのことがうまく運んでいれば
別に代表者の住所などは知る必要は
ないわけですが

何かがあったときに

本店所在地あてでは
うまく連絡がとれないときは
どうしても
代表者の個人宅に連絡することになります

さらに
登記事項である本店所在地というものも
そこが代表者自宅などであれば
全然問題ないのですが

いまやバーチャルオフィスや
コワーキングスペースなど
失礼ですが私書箱に毛が生えたような
会社実体などかけらもないような
住所だけを借りたような本店であると
どうにもならないわけで、こうなると

やはり頼りは、代表者の住所だけ
ということになります

ま、
住所貸し出しサービスというようなものも
あるようなので

住所が登記されているからといって
必ずしも住所地に
代表者本人の居住実体があるかどうかは
また、微妙なハナシのようですが

 

 

上記の改正案は、まだ
改正(案)にとどまっており
正式に発表されたわけではないので

この先どのように手直しがされるのかを
待ちたいところです。

 

おまとめ

 

商業登記だけではなく
実は不動産の登記も
プライバシーはかなり露わとなります

家の所在がわかれば、その登記簿は
ほとんどの場合、簡単に取得できます

そうすれば、その所有者の氏名住所
担保に入っているとしたら
どこからいくらの借り入れを
しているのか、そのあたりが
公開されています

 

また、近頃は少なくなりつつありますが
私道の共有所有というものがあって

たとえば、その分譲地の
15軒が共有で持っているとしたら
その私道の登記簿さえ確認すれば

15軒全員の
所有者事項(住所・氏名)に加えて
もしも借り入れをしていればその借入先
のみならず借入額までもが
周辺住民(!)に
知られてしまうことになるわけです

つまり、その気がなくても
自分の分だけ必要なときに
その共有地の登記簿を取得すると

それによって

特段、必要もないし
見たくもない他人の情報まで
目に入ってしまうわけです

 

これを初めて知ったお客様は
呆然としていました。

これって
個人情報は保護されないんですか?

と聞かれたことがありますが

登記制度については
個人の利益よりも
公共の利益(登記情報の公開)の方が
優先される、ということでしょうから

仕方がないのかもしれないです

 

代表者の住所非表示措置 はたして
どのように施行されることになるのか

 

今年2024年6月3日が施行予定日です

 

この改正が
悩める会社代表者と、経済界法曹界の
どちらにとってもよい改正であることを
希望するものです