保険受取人は遺言で変更できる

生命保険金の受取人を遺言で変更することが可能です

ただし、
契約者が亡くなった後で、保険会社に対して
相続人の内の一人から、その旨の手続きをする必要があります

 

そもそも存命中にそのような手続きをしておけば、亡くなった後で争いにまで発展することはないのでしょうが、
生きてる間は、おそらくそのような煩わしいことからは離れていたいというのでしょう
わかります

 

たとえば、

娘Aは、多額の生命保険金の受取人となっていることを父親から聞かされており、それなりの人生計画を立てていました

しかし、年とともに父親は、Aからの言葉の暴力や粗雑な扱いを受けることに我慢ができなくなり、
やはりAには残酷かもしれないけど、もうひとりの娘Bに受取人を変更したい
と思うようになりました。

変更することを保険会社に連絡すべきだろうけど
父親としては、Aにそれが露見してしまうのが怖いのです。

生存中は、せめてAの期待を裏切らず
うわべだけでも仲の良い親子のままでいたいというか、実際これ以上、関係を悪化させたくないという気持ちです

それとなく、娘Bに相談したところ、
Aがある意味その生命保険金を頼みにしているのに、それを裏切るようなことに巻き込まれるのはいやだと、
はっきり、拒まれました。

どうしてもBに変更したいのなら、その話はきちんとAにしてからにしてほしい。とBは主張しました

まあ当たり前です

 

AとBはふつうに仲の良い姉妹だし、
勝手に(!)受取人を変更などしたら、
双方の間に作らなくてもよい溝を作ることになります

 

父親(遺言者)は、

遺言でそのように変更できるのなら、
何も生前にことを荒立てる必要はないと思い

自筆遺言をそのように書き換えたのですが。

 

ここでご注意です

生半可な聞きかじりで、
保険受取人は遺言で変更ができる、と学んだだけでは、
それが実現される可能性は低いです

 

自筆(公正証書であっても事情は同じ)の遺言書で保険受取人は娘Bに変更する、と書いたからと言って、
どう考えても、保険会社がそれを自動的に知るすべはありません。

それに、

保険金を頼みにしているであろうAが、死後いち早く保険金請求などして受け取ってしまったら、
保険会社がさらにBに対して二重に保険金を支払ってくれるということは、
普通に考えてありそうもないことです

自筆遺言を書いたところで、
公正証書遺言にしたところで
保険会社はそのことを知りようがない
ということを忘れないようにしましょう。

 

保険会社は受取人が遺言によって変更されたことを知らないわけです

 

死亡後は一刻も早く連絡をしないと、
娘Aが保険金請求をしたら、全額、Aに支払われることになります

このとき、
遺言で変更される前のAに支払いをした保険会社側に、落ち度は一切ありません
(もしも裁判を起こしても勝ち目は全くないです)

 


保険法第44条
(遺言による保険金受取人の変更)
保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる

2遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人(相続権のある人誰でもよいがその旨を保険者(保険会社のこと)に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない


民法で、
遺言でできることの条文を
目にすることは多いですが、

保険金の受取人を遺言でできるということは
わたしは初耳だったので(!)感動しました

 

保険金のことは門外漢ですが、
相続の登記については、承れます

ご相談はお気軽にどうぞ。