取締役を解任する

取締役を解任する

 

所定の株式数が集まれば、役員の解任は
簡単にできます

定足数を満たした株主総会で
解任決議を行うだけです

 

解任なんて、物騒なのでは?

 

何か不祥事を起こした本人に
自主的な辞任を勧めても
言うことを聞いてもらえないときなどは

解任決議をすることによって、強制的に
やめさせることができるわけです

 

かつては

謄本が汚れる、などと言って
解任の事実が登記簿に残ることに
難色を示す古い経営者もいたようでしたが

昨今は、そのようなことは聞きません

 

 

と思いきや、先日
取締役数名が一気に解任されている登記記録を見せられて一瞬身構えました。
何か問題のある会社なのでは?というものです

「解任」の文字が登記簿に残るのはまずいはず!
という先入観にすぎないのかもですが。

 

ですが
会社の意に沿わない取締役であるならば
会社の運営上、解任もやむなし
ということはあり得ます。

会社の利益に反する取締役は
いつでも解任できます

そもそも法がそれを認めている以上
株主総会で解任決議を行うのは
全然問題のないことです

 

会社法第339条(解任)
役員および会計監査人は、いつでも
株主総会の決議によって解任することができる

2 前項の規定により解任された者は
その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる

 

会社法第341条
(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
役員を解任する株主総会の決議は
議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(定款に別の定めがあるときはその割合以上)をもって行わなければならない

 

 

多数決で解任されたのであれば
仕方ないという見方もありますが
それで納得できるかどうかは
また別の問題です。

 

その時の事情はわかりませんが
両者(会社と取締役)の意見が
食い違っただけではなしに

悪行を図る会社に抵抗したがゆえに
解任されるということもあるわけです
(解任された取締役は正義を貫こうと
しただけ)

そのような時は
解任された取締役の側から別件で
会社を訴えることもできます

 

辞任届がもらえない

 

居所不明で連絡が取れない取締役を
どうしたら辞任させられるか
というご相談は時々あります。

ほとんどは、有限会社です。
株式会社と異なり、任期がないので
わりと長期間登記を放っておいても
問題になることがないからだと思われます

こうしたときも
総会で解任決議ができれば
解任の登記が可能だということを
何度か提案しました

 

確かに「辞任」の方が
穏便な印象ではあるのは間違いないです

ですが
当該取締役がその不始末等によって
会社によって任を解かれたという事実を
公示しておく、という意味においては

より正確であるのは、辞任ではなく
解任の登記です

 

あとは
登記簿から抹消する方法としては

解任の訴えという方法もあります

 

株主総会で
解任決議がうまくできなかったときに
選択されるものです

総会の日から30日以内に提訴が可能です
(会社法854条)

 

ところで、権利義務取締役

 

なお
任期の満了した取締役
(権利義務取締役といわれる)に対しては

解任の訴えはできない、という
判例があります

 

権利義務取締役
(役員等に欠員を生じた場合の措置)
会社法346条
役員が欠けた場合または員数が
欠けた場合には、任期の満了または
辞任により退任した役員は
新たに選任された役員が就任するまで
なお役員としての権利義務を有する

 

つまり、後任の取締役が登記されるまでは
(登記は同時であってもOK)
任期満了または辞任によってすでに
取締役ではなくなっていても

役員としての権利も義務も
あるということです
(登記簿を見てもまだ役員のまま)

 

解任の訴えもすることはできませんが
解任決議も同様です

 

任期が切れた取締役に対しての解任決議は
無効です

 

任期切れの取締役(権利義務取締役)を
解任した会社が、その取締役から
損害賠償請求を起こされたという事例を
きいたことがあります
(無効な解任日以降の役員報酬を請求したらしい)

 

ところで

登記簿の記載からその役員が
権利義務役員であることを読み取ることが
可能な場合もありますが、多くの会社は
選任後20年を経過しているなど
極端な例を除いて

権利義務役員なのか未だ任期中であるのかは
その記録からだけではわからないものです

定款を確認できれば
役員の任期は明らかになります

 

 

有限会社に対しては
役員任期が定められていないので
権利義務役員の問題はほぼ生じませんが

株式会社は
定款でイレギュラーな定めをしていたり
補欠での選任だったり
何度も辞任就任が繰り返されたりすると

任期を見極めるのも難しかったりします

当然、定款を確認する必要がありますが
定款を何度確認しても
任期がいつ到来するのかは
よほど気を付けていないと
見誤ることがあります

難しいです