尊厳死をかなえる

尊厳死を叶える

 

まず、尊厳死は安楽死とは違います

日本では安楽死は期待できません

 

尊厳死

尊厳死は文字通り尊厳ある死ということで
あって、特に病気や事故で苦痛が甚だしく、改善がほぼ見込まれないときに、人為的な
延命措置をしないことです。
苦痛なく楽に死ねるのを待つというイメージです

 

安楽死

一方、安楽死というものは、わが国においては認められていません。

病気等で本人の苦痛が甚だしい時に、
本人の承諾のもとに意図的に死亡させることです。
積極的に苦痛のない死を要求するような感じです

外国ではそれが制度化されているところもあるようですがわが国ではまだそこまで民意というか精神が成熟していません。個人的には安楽死に賛成するものですが、それは、また別の話。

 

尊厳死、どうすれば

 

あらかじめ希望していたからと言って
必ずかなえられるというものでもありませんが、

希望しておかない限り、運が悪ければ、
長期にわたって死ぬまで
苦痛と絶望のただ中に置かれることに
なります。
怖いことです

 

まず、身近な人(同居の家族など)に
その希望をきちんと伝えて置くのは、とても大事なことです

それとなく、とか、何となくにおわせる
という程度では全然だめです。

ことがことだけに、
その話題になるときちんと話し合うことが
できなかったり、
機会を見てゆっくり説明しよう、などと考えているうちに、時期を失ってしまうことに
なります。

さらに、明確に具体的に希望を伝えておくということは、それなりに文書で残す必要が
あるということでもあります。

単なるメモだと、冗談?で片付けられることもあるし、将来、何らかの形で証拠が必要になったときに、それだけだと、弱いです。

 

書面で残す

 

・書類が必要

なので、
きちんとした書類って、どうするのがベストなの?と思った場合は、
尊厳死宣言公正証書を作ることをお進めします

 

または、尊厳死協会に入会して
既成事実を作っておくことも選択肢の一つ
かもしれません。

入会時に本人の意思確認をされるわけではないですが、そこに入会し、
会費を支払っているという事実があれば、
そのあたりが問題になることはないとは思います

 

これらは、法律で認められている文書ではありませんが、医療現場で、尊厳死の希望を
考慮してもらえる可能性が大きいと言われています

 

なお、
尊厳死を法的に認める法律はありません。
ただ、判例で認められている尊厳死の要件というようなものはあります

ここには掲げませんが、
それは誰が聞いてもここまで悪くなったなら仕方ないというようなもので、
私的には、そんなにも悪化する前に
天に召されたい、と思うものではあります

 

・家族の同意

 

文書を作りさえすれば、とりあえずそこで
ひと安心ではありますが、もう一歩その先の仕事があります。
それは、そのことを家族、配偶者や子どもに説明しておくことです。
それは忘れられがちですが非常に重要です。

そうしないと、
書類等を作成してあるにも関わらず、
いざという時に家族の反対によって
本人の希望がかなえられないことがあるからです。

なので尊厳死宣言公正証書の中で
家族に説明して全員からその同意は得てあるという記載がされていることは多いです。

 

・主治医に伝える

また、書類を作った後で入院をすることに
なったときは、さらにその事実
いざというときは、尊厳死を希望している
を担当医師・主治医に
伝えておくのも大事です。

伝えるときのポイントは、
決して感情的にならずに説明することです。
相手にこちらの精神状態が正常だということをアピールする必要があります。

逆に、看護師等に片っ端から感情的に
その希望を垂れ流していたら、
まず正気と思ってもらえません。

きちんと落ち着いて話せる環境で、
主治医に伝えるべきです。

心ある医師は、その希望をきちんと
記録として残しておいてくれるようです。

 

・書類があっても万全ではない

しかしながら、我が国には、
本人が元気なうちに法定書類を作成しさえすれば尊厳死は認められる、
という法律はありません。

なので、
たとえ不備のない書類が作成してあったと
しても、家族の反対にあえば
担当医師としても本人の希望を優先することは非常に難しいです。

そこはもう、下手をすると刑事訴追されて
医師生命さえもが危うくなるわけですから。

・遺言書を遺す

ちなみに、

遺言にその旨、書いておいたらどうか
というような意見がありますが、

論外です。

遺言は、本人死亡後に有効となる文書です。

どんなにひどい苦痛の中にあって寝たきりの状態が長く続いている状態であったとしても
生きている限り、遺言は有効なものには
なりません。
そこにどんなにていねいに熱烈に尊厳死への希望が書き連ねられていたとしても、
全く無意味です。
その時では、遅すぎます。
それがいつになるのかわかりませんが
開封されたときには、すでに、勝負は終わっています

 

 

尊厳死宣言公正証書を作る

 

尊厳死宣言公正証書は、公証人に依頼して
作成します

公証役場に本人が自ら出向いて作成してもらうのが一般的ですが、
体調や都合が悪いなどの場合は、
出張してくれます

また、特に管轄というものはないので、
お住まいの地域ではなくても、日本全国どこの公証役場に依頼することも可能です

 

゜公正証書の文案

公証人はそのHPで、この尊厳死宣言作成を
うたっているので、おそらく、
細かい文案を提示しなくても作ってもらえます

尊厳死に求めるものは、人によってそれほど
違いがあるわけではないでしょう

 

「治らない病気で、苦痛が甚だしいときは、積極的な延命処置をしないでほしい」このあたりが一般的な骨子でしょうか

 

・人工呼吸器は絶対つけないでほしい

とか、

・栄養補給のみの点滴はしないでほしい

・寿命を縮めることになる恐れがあっても
苦痛を取り除く処置は最大限してほしい

おそらく、このような文言が並ぶことになります

 

このあたりは人によって細かい希望があるでしょうからそのあたりは個々の事情に則って作成してもらいましょう

 

結論は、

どうか私が尊厳をもった安らかな死を迎えることができるようにご配慮ください

ということになります

 

日本尊厳死協会に入会する

 

この協会の会員証の提示により、病院が
それなりの配慮をしてくれることが
期待されています。

 

協会に入会すると、
尊厳死宣言を受容している施設の一覧が
見られるので、
その病院であればかなり高い確率で、
希望が通ることでしょう
(ですが残念ながら提携している病院というものはありません)

また、病院自体が対応していなくても、
個人的に対応している医師の一覧も見ることができます

希望がうまく通ったひと、逆に、運悪く
対応してもらえなかった人、そのような
先達の経験談も披露されています

 

会員証のコピーをカルテに貼ってもらえた、
という協会員メンバーの経験談も心強いものです(当職は30年ほど前から会員です)

 

ではどうすればよいのか

 

近頃では尊厳死というものに理解が深まって
単に長生きさせれば(すれば)よいのだ
という主張する人は少なくなってきたようです

あくまで印象ですが。

 

しかし、わが国においては、
健康寿命と平均寿命のあいだに10年もの
開きがあって、特に女性において12年余りもあり、
その差はあまりにも顕著です

12年もベッドで寝たきりで過ごすことを
強いられるのは、ちょっと考えただけでも
苦しいものがあります

もちろん、寝たきりと言っても
様々なグレードがあるわけで、
寝たきりでも元気いっぱいな方から
植物状態の方、果ては、末期の苦痛に
日々喘いでいる人、まで、さまざまでしょう

つい近頃の何かのアンケートでは、
100歳まで生きていたくない人の割合が、
女性のなんと8割を占めたそうです。

 

健康に長命を謳歌するのであればともかく、健康寿命が尽きたあと、20年も30年も
ベッドにつながれているのは少なくとも私にとっては拷問です

経験上たった3日間の入院であってもベッドから動けないのは拷問なのに20年30年しかも治癒して元通りになるという望みさえもほぼないのだとしたら、万が一正気だったとしたらその日々は修行にはなるかもと思いますがその悲惨さは想像するに余りあります

手遅れにならないうちに、尊厳死宣言を。

 

もしも今、書類を作る時間がないという方でも
そうした希望があるのであれば、まずは
身近な方に、ご家族にでもご友人にでも
丁寧に伝えておきましょう

丁寧に、というのは、
相手に真意が伝わるように伝えるということです

さりげなく言っただけでは、おそらく
相手の耳を素通りします。

心の隅に留めて置いてくれるかもしれないですが、いざという時には、
「ああ言ってはいたけれど、そんなつもりじゃなかったと思う」と無難な方向へ流されるものです。

書類を作成しておくのがベストではありますが
時間切れで書類を遺せなかったとしたら、
それはもう、書類は諦めて、
お願いしてみることしか残されていません。

丁寧に真剣にお願いしてみましょう。

 

尊厳ある死というか
身体も心も魂も 最期のときまで
どうか安らかでいられますように