愛情をお金ではかる

神様
教えてください

愛情の分量をお金ではかるのは
いけないことですか

教えてください、神様
私はどうしたらよいのでしょうか

答えはありますか

 

親が残した遺言書から
自分への愛情の多寡を
計るのは

それってどうでしょうか?

 

他人のハナシなら
それは大人気ないよなどと
立派な意見を言うことはできても

いざ自分がおなじ目にあったとしたら
どうでしょうか。

諦めますか

戦いますか

何とかして自分を納得させますか

それとも
一生、恨み通しますか

 

親が、兄と姉に財産を全部譲ってしまって
末っ子の自分には
何も残してもらえなかったとしたら

やはり、親の愛情を
疑いたくなるものではないでしょうか

 

父が遺した遺言

 

母親亡きあと、父親が死去し
その遺言書に書かれていたことが

3人の子どもに対して
公平を欠いているものだとしたら
どう思いますか

この場合は
実際に不公平かどうかというより
不公平と感じたかということです

 

もちろん
子どもはそれぞれ立場も異なり
それぞれの個性があって
父親との相性というものもまた
それぞれでしょう

 

立派な会社で役員をしていて
何不自由なく暮らしていたり

独り立ちのあてのない画家とか
ミュージシャンであるとか

個人事業を立ち上げたばかり

というような
それぞれの事情もあるでしょう

 

または
父親と一緒になって朝から晩まで家業に
精を出したかもしれないし
父親の介護のために仕事をやめて
同居を強いられていたかもしれないし

 

さらには
相続人廃除されても仕方ない程の
悪行の限りを尽くしたかもしれないし

親への虐待の程度が
甚だしかったということも
あるかもしれません

 

ですが、こうしたことは

良いことであっても悪いことであっても
それらを理由に遺言から除かれたとしても

 

言われなければ(言われても)
当の本人はなかなかそれとは
気づかないものです

 

 

相続人の廃除という制度

 

(推定相続人の廃除)
民法第892条

遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をしもしくはこれに重大な侮辱を加えたときまたは推定相続人にその他の著しい非行があったときは被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる

 

このような法律に関わらず、裁判所は
推定相続人の廃除を
カンタンには認めない傾向にあるようです

 

このような判例があります

老齢の尊属親に対し、甚だしい失行が
あったけれども、それが一時の激情に
出たものである場合は、
重大な非違とはいえない
大判大11・7・25

これはどのような事情があったか
わかりませんが、これを読んだだけで
どれほど廃除が認められ難いかは想像が
できるというものです

 

さらに相続人の廃除というのは
家庭裁判所の手続きなので

それなりに面倒だし、時間もかかるわけで
ここで遺言さえ書いておけば
(遺言書の中で相続人廃除もすることができますが
やはり、家裁に申し立てる必要があります)
推定相続人が遺留分の請求をしてこない限り
とりあえずは相続からは
除外できるわけです

 

公平とは

 

そのような個別の事情を考慮した上で
結果として遺産が3分の1ずつでないのは
ある意味むしろ
公平な分け方なのかもしれません

 

充分な財産を既に有している子どもより
未だ定職のない子どもに
ほとんどの財産を分けたいと思うことも
あるかもしれないし

逆に
もう見込みがないから
何も残さないようにしようとすることも
あるでしょう

或いは
定職がなく浪費壁のある子どもは
遺産を分けてもまた無益に
使ってしまうから残しても無駄だろうと
二の足を踏むのも人情かもしれないです

 

親の方も価値観はそれぞれで
お抱え弁護士か
お抱え税理士でもいない限り
公正に分けることは困難です

いえ、もしもいたとしても
この問題に正解はありません。

あるとしても、それは
当事者から見て納得できるとは
限りません。

 

もしもそれが可能だとして
全く等分の愛情を子どもたちに
注げたとしても

子どもはそれぞれ
100パーセントの愛情を
求めるものだという意見を聞いたことが
あります
完全に同意します

大人になった今でこそ
3で割っても10で割ってもいいし
何なら数パーセントでもよい

とまで達観していますが

子ども時代は確かに
100パーセントに近い愛情を
求めていたのかもしれないなと
今になって思います

 

何もいらない、という選択

 

でも、遺産分割協議の場で
このような発言をする人もいます

お父さんの遺産からは何もいらない。
もう、充分すぎる才能と
健康な心と体をもらっているので。

 

まあ、そのような考え方もありますよね

 

または
父親から散々ひどい虐待をされてきたので

遺された財産などこれっぽっちも興味ないし
一円だって欲しくない、ということも
あります

 

このように本人の自由意志で
何ももらわないという選択をし
遺産を拒むことと

遺言で無視された、ということは
全く違うハナシです

 

 

何も相続しないことを自ら選択した場合は
愛情をお金で計るというような
深刻な問いには発展しません

 

ですが

同じように何も取得しないとしても
自分の意思からではなく、父親の遺言書で

Aは何も相続させない。Bも何も相続させない
Cがすべての遺産を相続する 
などと
書かれたら、事情はかなり
違ってくるものでしょう

 

もちろん法的には、遺留分があるので
それぞれ全体の6分の1を請求することが
可能ですが、そういう問題では
ないかもです

父親は、自分のことを
これっぽっちも愛してなかったのか
と思ったりは
・・しないでしょうか

 

 

遺言書をつくる

 

これから遺言をしようとしている親御様へ

もしもこのような極端な遺言書を
遺すつもりでいる方がいたら
ご注意ください

それだけだと、少々マズイかもです

 

たとえば、生前に多額の贈与
(一人だけ家を建ててやったとか一人だけ何年も
海外留学をさせたとか
)をしていたときでも

貰った方は、きちんと覚えているとは
限りません。ましてやそれが
数十年も前のことであるならば、まず
憶えていないことが多いです

指摘されれば思い出すにしても
特に親からの恩はついつい
忘れてしまいがちなものなのです

 

付言事項を書きましょう

 

このような事情
(建築費○○万円の家を建ててあげたので、今回
Aには何も残さない

家族への感謝(これまでずっとありがとう)
詫び(わがままを許してください)
書いた部分のことを付言事項と言いますが

遺言書本文のあとに
法的な効果はありませんが
残された人たちへのいわば
血の通った思いを綴るという意味で
ぜひとも書き残してほしいと思うものです

 

それが面倒だと思うのであれば

一見、不合理というか不公平な遺言だけが
遺されたあとの、相続人たちの気持ちを
考えてみましょう

 

そうした説明書き(付言事項)がなければ
遺言をした人の思いは
ほぼ絶対伝わりません

その結果、不公平な遺言だけがのこされて
独り歩きして

相続人の間に、不毛な争いや
悲しみを残すことになります

 

どうして私にだけ
何も残してくれなかったの

別にお金が欲しいわけではないけど
何も残してもらえなかった・・・
もしかして父親は自分のことを
少しも愛してなかったの?

愛情をモノではかってはいけないことは
重々承知しているが
これはそんな問題ではない。父は、私を
疎んじていたのではないか。
そういえば、あの時も、この時も
父は私に冷たかった

 

あれやこれや考えても答えの出ない疑念が
相続人たちの胸にいつまでも
渦巻くことになります

 

 

愛情は量れない!にしても

 

客観的にみて
あまりにも不公平というか
理不尽な遺言が残されていた時に
できることがいくつかあります

 

※客観的にみる、というのは
ご自分ではまず、無理です

弁護士なり税理士なり専門家に
相談してみることをお進めします

ご自身では、客観的にみることは
非常に難しいですし

法律家ではない一般人(素人さん)である
友人知人も当然、論外です
家族もまた、客観的にはなれません

 

1 遺言書はさておき
相続人全員で遺産分割協議をする

 

全員が合意すれば、遺言書は言葉は悪いですが
無視しても大丈夫です

つまり、相続人全員で遺産分割協議が
できます

ただし、その遺言に、相続人以外の
遺言執行者(弁護士、司法書士、税理士
その他の第三者)
が定められているとしたら

その人の同意があった方がよいです

というか、それがないと
相続人の意思に関わらず
遺言が執行されてしまう可能性が大です

 

2 遺言が執行されてしまったら、または
分割協議をする余地がない状況だったら
遺留分侵害額の請求をします

 

法律で
兄弟姉妹を除く共同相続人には
遺留分が定められています

もしも、遺言で、自分が何も
残してもらえなかったと思うのであれば
侵害された金額を
侵害している相続人に対して請求します

 

たとえば
全てを長男に相続させる、というような
遺言であれば

他の相続人は長男に対して
遺留分侵害額請求ができます

 

全てを愛人A子に贈与する、というような
遺言であれば

相続人(ただし、兄弟姉妹を除く)は
A子に対して同様の請求が可能です

 

ですがこの請求は請求できる期間が
決まっているため、早く行使しないと
請求ができなくなります

 

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
民法第1048条
遺留分侵害額の請求権は遺留分権利者(権利が侵害されている人)が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも同様とする

 

つまり
自分の権利が侵害されていることを
知った時から1年たつと
請求できなくなります

また
侵害されていることを知らなくても
相続開始後10年で
この請求権は消滅します

 

なお、請求の方法については
特に定められていないので
直接相手に請求するだけです

上記の期間制限があるので
請求日付がはっきりするように
通常は内容証明郵便で請求します

が、それで支払ってくれればよいですが
それでもらちが明かないときは
裁判を起こすことになります

 

3 自分で納得できる理由を捜す

人に甘え依存しすぎる私を鍛えるために
わざと父親は
何も残さなかったのかもしれない。

それこそが父親の海よりも深い愛だった
のかもしれない、そのことで
ひょっとしたら、父親はかなり
苦悩さえしたはずだ。むしろ
他の子どもたちと同等に
遺産を遺すことの方が
カンタンだっただろうから。

 

父から、「それでも強く生きろ」という
メッセージを遺されたと思おう

「遺産に頼らず、人に依存しないで
人生を自分の足で強く切り拓いて行け」
という父の遺言だったのかもしれない

 

金銭にだらしのない自分は、もしも
多額の遺産を遺されたなら
それを食いつぶして生きていく
情けない人生を送ることになっただろう

我に返った時には、手元に残るものは
借金だけ、ということに
なっていたかも知れない。だから
これでよかったのだ!
これこそが、正解だったのだ!

神がくださった試練かもしれない

愛の多寡をお金で量るな、ということではないか

~にも関わらず、無条件で愛することが
私に可能か、それを試されている

しょせん、全ては空しい

財産があろうとなかろうと、人生は
あっという間の喜劇に過ぎない

 

 

4 一生、恨み続ける

 

一生恨み続けるという手もあります

ま、それも人生です

 

尺の長さはそれぞれですが
それをどのように使うのか
それぞれの裁量です

傍から見て、それは空しいのでは?とか
もう少し建設的に考えたらどう?などと
言うのは勝手ですが

大きなお世話ではないでしょうか

恨み続ける、それはそれで
ひとつの人生であると思います

 

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