権利証を紛失

権利証を紛失!

 

権利証(登記識別情報通知)を
なくしたからといって、すぐに
致命的な不利益を被ることはないです。

ご安心ください

 

たとえば、マンションを購入して
数千万と引き換えに権利証
(登記識別情報通知)が手元にきた
ということであれば、権利証
(登記識別情報通知)の紛失イコール
数千万の損失!と一瞬
気が動転してしまうかもしれないですが
そんなことはありません。

登記記録(法務局のコンピュータの中にある)
所有者として登記されている限り
原則として
その不動産の所有者は
登記されている人(会社)のままです。

いつの間にか変わってしまうこともないし
勝手に変えることもできません。

 

ただ、実際に
売却手続きなどをするときに
少々面倒があるだけです

 

権利証が必要なとき

 

売却や
不動産に担保を付ける時などの登記には
権利証(登記識別情報)の提供が
求められます。

でも、万が一
紛失・失念等してしまったのであれば
それなりの方法があります

 

そもそも一般論として何かしらの手続きに必要なものを失くしたからといってそれができないのであれば経済活動が立ち行かなくなるので必ず救済措置は設けられているものです

 

多少の面倒はありますが
権利証紛失という理由だけで
それらの売買や
抵当権設定等の登記手続きが
できなくなることはありません。

大丈夫です

また、それ以外に
つまり登記の手続きに使用する以外に
権利証の使い道はありません。

ドラマなどで、借金のかたに
権利証を差し出す、というようなシーンを
見たことがありますが、それはおそらく
ドラマの中だけです

現実の世界では
権利証それだけ、というかそのものには
そのような価値はありません

 

つまり、権利証が必要になるのは
登記手続きをするときだけ、といっても
過言ではありません

 

代替手続き

 

権利証(登記識別情報通知)がない
または提供したくない、ときの
代替手続きには

代表的なものが二つあります

 

司法書士による本人確認情報の作成

 

これは
名義人本人または

会社であればその会社の代表者
(または会社代表者から
業務権限の委任を受けた代理人)と

司法書士が直接面談して
権利証に代わる書面を作成するという
方法です。

 

念のためですが
これはあくまで
その時の登記ができるようにするための
書類(本人確認情報)を作るだけです。

権利証を作り直すわけではありません。

権利証(登記識別情報通知)は
権利を受ける登記をしたときにだけ
発行されるので
再発行は制度上ありません

 

この書類を作成することによって
権利証があるのと全く同じように登記が
進行するという、とても有難い方法です

次に説明する事前通知制度のように
余分な時間や手間がかかることがないので

売買の残金決済時や
抵当権設定登記の時には
非常に便利というか、今や
なくてはならないといってよい程の
実に便利な方法なのです

 

ちなみに
この方法が登記法上出現したのはたしか平成17年登記法が改正施行された後のことでそれまでは現在の事前通知制度に似た保証書制度というものしかなく当時は決済当日に現場で権利証がないことが発覚するとその日の決済は延期の一択でした

さらにこれには保証人(登記を受けたことのある成人2名)が必要でかなり高額な保証書作成費用もかかっていたものです

 

〇 本人確認情報を作成する際の要件

次のようなことが求められています
なので、このように便利なものでは
ありますが、これらの条件を
満たせない方は
この方法を選択することができません

 

  • 必ず司法書士と面談をする
    (テレビ電話は不可)
  • 本人確認書類の提示が必要

    運転免許証・個人番号カード・パスポート等
    有効期限内のもの

    それらがないときは、

    保険証や年金手帳などの

    住所氏名生年月日が記載されている
    公的証明書2種類以上 
    いずれも有効期限内のもの

  • 司法書士報酬が別途かかります

    司法書士や状況によって異なります

    数千円から数十万円まで

 

事前通知制度の利用

 

権利証ない状態で登記を申請した後に
法務局から、名義人本人あてに
登記についての照会が郵送されます

このような登記が申請されましたが

これで間違いないですかな?

というような主旨のものです

それに対して名義人から
OKですこれで間違いありません
(署名捺印つき)

の旨の回答書が
法務局に到達したときに

権利証があるのと同じような進行に戻る
という方法です

この事前通知(照会)は法務局が
職権でするので

この部分についての費用が
徴収されることはありません。

 

これは、言ってみれば
登記名義人が個人であっても法人であっても
同じような手続きではあるのですが

ひとつだけ
会社の方が面倒が少ないことがあります

 

このときの照会状は書留でされるのですが

〇個人に対しては
本人限定受取郵便という
ご本人しか受け取れない、いわば
特別に面倒な書留で郵送されます

本人がたまたま入院してしまったり
旅行に行って不在だったりすると
受け取れません。

しかもその回答書は返送期限付きです
ほぼ2週間以内に法務局に持ち込まないと
期限切れで無効とされるものです。
そうなると登記申請はもう一度
やり直しです

 

ですが

 

〇会社が名義人になっている場合は
会社の本店所在地あてに通常の書留
郵送されるだけです。つまり

代表者が旅行中であっても
入院や収監中(!)であっても
受領することができる、ということです

 

ただ、ひとつだけ
ご注意を。

会社本店だともろもろ面倒になるので
代表者個人の住所あてに
送ってもらいたい、というご要望を
いただくことがあります

これは、可能ですが

(登記申請の際に
代表者の住所あてに送ってほしい旨の
上申をします)

その結果、この事前通知書は
会社あての単なる書留ではなくて
本人限定受取郵便による書留に付されます

名義人が個人であるときと同様の扱いを
されることになるわけです。

 

このような要望さえしなければ、
会社あての単なる書留郵便なので
手続きがぐんと一気に楽になるわけです

本人限定受け取り郵便だと
足が悪くて動けないまたは
急に具合が悪くなった人は
受領することが非常に難しいことになります

 

 

こうしてみてみると
免許証等を所持している人であれば
司法書士による本人確認情報を
作成するのが
もっとも簡便であるという結論ですが

これを作成できるのは
司法書士だけです

なので
セルフ本人申請の時には
この方法は使えません

 

番外 公証人による本人確認制度

 

こちらは

  • 本人 (登記義務者)が
  • 登記に必要な書類(登記用委任状)を
  • 公証役場に持参して
  • 公証人の面前で署名押印し
    それに公証人が
  • 「本職の面前で本人が署名捺印をし
    本職はこれを認証する云々」
    という
    主旨の証明書(認証文)を
    つけてくれるというものです
  • 費用も、司法書士のそれ
    (こちらは幅が大きいようですが)
    に比べて低廉です
    (数千円)

 

この制度ができてはや20年近く。
この中で1度だけ、権利証のない方が
これを持参なさったことがありました

これで本当に登記ができるのか?
おそるおそる登記を出しましたが
何の問題もなく完了して
むしろびっくりでした

おそらくこの方法はあまり一般的に
知られていないからだと思います。

あるいは

単純に公証役場というものが
一般人にとっては敷居が高かったり
するのかもしれません。

この公証人による本人確認制度については
何度かお客様にご案内をしましたが
いずれも
司法書士による本人確認情報の作成の方を
選択なさいました

 

さてと、

 

こうしてみると、最善の策はやはり
権利証(登記識別情報)を
紛失・失念しないことだと思われます。
(当たり前か!)

ですが、これも考え方次第ではあります

最初から
登記識別情報を通知しないことを選択すれば
少なくとも紛失の恐れはないわけです。

保管に気を使う必要がありません。

ましてや、一生
権利証を必要とする機会がない人も
多いでしょう。

登記の申請時に
□登記識別情報の通知を希望しない、の欄に
チェックを入れるだけで済みます

 

不動産を手に入れて、そのあと
転売する予定があったり
銀行の担保に入れるなどであれば
通知を受けておいた方がよいでしょうが

そのような予定がないのであれば
いっそ通知を希望しないのも
アリなのかもです。

必要が生じた際は
簡便な代替手段があるわけなので。

 

 

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