決済が延期になる

決済が延期になるのはどういう時なのか

延期になるとどうなるのか?

 

ここでの決済とは、
不動産売買の残金決済の意味です。

残金決済・・・

残代金の授受と同時に、
登記に必要な書類すべての受け渡しがあり
そのとき所有権が移転します

 

○決済の延期とは?

 

決済の最中に問題が発覚して
当日の決済が無理!となったら、
延期という判断がされます

 

どういう理由で?

 

・必要書類またはお金が揃わない

・約束の履行がされていない

ほとんどの場合、どちらかです

 

・必要書類等の不備とは、

 

・売主側

  • 権利証なし
  • 印鑑証明書なし
  • 実印なし(実印相違)
  • 住所変更書類なし

 

決済が延期されるとしたら、ほとんど売り主側の書類不備が原因です

決済の延期によって少なくない不利益(特に買主側)が生じるため、できるだけそのようなことのないように、仲介業者も司法書士も心を砕きます。それにしても、これら売主側の書類の不備は致命的です

住所変更書類くらいは司法書士が代わって取り寄せることもありますが、あとは、ご本人でなければ準備または取得することができません

 

事前に当方から必要書類をご案内しています

 

ですが、

 

単純に
忘れた、とか。
よく読まなかったとか、、、、

それらによって

ご案内しているのにも関わらず書類が
そろわない、ということは
よくよくよくあります

ご案内したから大丈夫、ということは
絶対にありません。
説明責任は果たしているとはいうものの

実際にその方がわかるように
お伝えできていたのか
といったら、やはり微妙な所があります
当事者は、不動産売買の素人さんなのです。

自分(司法書士)に求められている役割を


国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。

不動産登記法第1条


という観点からみたときに、
書類が揃わないということは結局、

わかるように説明できなかった
司法書士の責任ではないのか、
と思うこともあるからです

 

ですが、司法書士が事前に関わることができるかといったら、微妙ではあります。

たとえば、

印鑑証明書は3ヶ月以内のものを1通ご用意ください
というご案内に対して、
「そんな当たり前のことを言うな!子どもじゃない、馬鹿にするんじゃない」と怒り出す人がいる一方で、印鑑証明書はどこでもらうのか、実印はどこで買えばいいのか、とお尋ねになる方もおいでなのです。

さらに、

権利証の説明をするのは、とても難しいです。こういうものです、ということを説明しにくいので。
全然見たこともないとしたら、イメージしにくいものなのではないでしょうか。
現在は登記識別情報というものになっているので、以前ほど、難度は高くありません。実物を提示することもできますし。

で、権利証と信じて謄本(全部事項証明書)をご持参の方は多いです(これが一番多い)

なぜか、謄本だけ、茶封筒にはいっていることがあります 封筒には土地権利証と書かれていたりするので、かつてはそこに権利証がはいっていたと思われますが、現在入っているのは、登記簿謄本だけ。
ちなみに謄本(登記簿謄本・全部事項証明書)は誰でも料金を払えば最寄りの法務局で取得することができます

 

あとは、分筆登記(1筆の土地を2筆またはそれ以上に分ける登記)地目変更登記(農地を宅地にしたり、雑種地にしたり地目を変える登記)などが完了したときの登記済証とよく間違えられることがあります

このような登記は表紙がついていて立派にみえるため権利証かと勘違いなさる方は多いです。よく読めば書いてあるのですが。(地目変更とか、分筆登記とか)

なにしろ、登記済権利証などというきちんとした表紙がつけられたりしているので、間違えることはままあります。

 

それ以外の書類でそろえるのに困難が
生じやすいものは
住所変更している場合に必要な、
それを証明する書類です。

  • 住民票除票
  • 戸籍附票
  • 改正前の戸籍附票など。

基本、5年間で廃棄されてしまうことがほとんどなので、30年間に10箇所引っ越しをしていてその間登記簿の住所を変えてないというのであれば、少々大変かもしれません。
これで権利証を紛失などしていたら、けっこうたいへんです。
合わせて姓が(婚姻、養子縁組などで)変わっていたら、難易度はさらに上がります

このパターンが予測される場合は、事前にそろえた書類を拝見させていただくことが多いです。ご本人では取得しにくい場合は(本籍地が遠方であるなど)当方でお取り寄せをすることもあります。

決済当日にその場で、
住所変わってるんだけど、これでやって。
と現在の住民票だけを渡されてもどうにもなりません。(以前の住所として登記簿上の住所が記載されていれば大丈夫)各地を転々とした場合、現住所と登記簿上の住所がすんなりつながらないことは多いです

 

あとは、実印と信じて所持している印鑑が印鑑証明書の印影とまるで違う場合など。多くの場合、実印が登場する機会はあまりないので、細心の注意を払って保管してないと、つい、立派な方が実印だと思いこんでしまったりします。

 

中には、自宅にある印鑑はこれ一個。若いときからこれ以外持ったことがない。銀行も実印も認め印としてもこれだけ。故に、印鑑証明の印影と一致しないことは考えられない司法書士が間違っている

というご意見をいただくこともあります。

残念ですとしか言いようがないですが。

この場合は、
その現在お持ちの印鑑を再登録して
新しい印鑑証明書を取得していただく以外に
手はありません。

印鑑の相違が問題というよりも、同じ印影を書類に押印できないことが問題なのです。

 

 

・買主側

  • 決済金をもってこない
  • 住民票なし

 

決済金を忘れたら、すぐに用立てることができるならばともかく、多くの場合は決済を延期せざるを得ません。

 

そんなバカなと思います。

が。

実話です。

2回経験しました。

どちらも、理由は一緒で。

忘れたのではありません。
仲介業者から指示がなかったので、
まだ準備しなくてもいいのか、と勘違いしたとのことです。

業者さんにしてみれば、現金なしでなんの決済か、というところでしょうが、素人さん的には、決済って何?という感じだったでしょう。

 

住民票については、ご依頼あれば、当方でお取り寄せは可能なので、不足しているものが買い主の住民票だけであれば、決済は決行します

一方、売り主の住民票は、これがつながらないと登記が出せないため、それなしでは絶対に決済はできません

 

 

○ 約束事項の未完了

 

たとえば、建物内のゴミを全部片付けることになっていたのにされてないとか、土地の地目変更登記がまだ完了していないとか。

契約書には、決済までに完了しておくこと、として書かれていることが多いので、そこにある条件が未完了であれば、簡単なことならばともかく、決済は延期になると覚悟しましょう。

 

********

 

このようにやむを得ない理由によって決済が延期になった場合、再度の日程調整によってみんなでまた集まるわけですが。それだけでは済まないこともあります。各方面に不利益や不都合が生じるからです

 

○ 決済延期のときの不利益あれこれ

 

・現金決済のときは、現金の運搬に注意が必要となり、また、保管の不安もあるので、そのあたりが面倒というか、想定外の災難ということになります

片道だけなら何とか、と思っていても、帰り道も大金をもって帰る、のは、仕方がないですが非常に困ります 自宅から決済場所まで大金を持って電車とか。金額が大きいととても負担です 運びなれている方にはわからないかもですが、そうした習慣のない方にとっては、非常なストレスであることをご理解ください

・その決済当日に予定していたそれ以後の流れが中断する

電気・ガス・水道の業者との立会
リフォームするなら業者との打ち合わせ
これらができなくなります

その足で転入の手続きをしようと思っていた人はできなくなり火災保険も加入できません 売り主側が火災保険を決済日の3時までとかで解約の通告をしてあったりしたら、これもこのままではまずいでしょう。また、それまでの貸家なりアパートなりの契約打ち切り通告が済んでいた場合は、その延期を申し出るとか。人気のある賃貸物件であれば、延期はだめで別の場所に新規に借りないといけなくなったりします

 

・金融関係(利率の変更など)

でも、さらに困るのが、銀行の融資を受けて土地を買い、そのお金で売り主は不動産に設定されていた抵当権を抹消して、所有権を移転するという流れの場合。

これは、一般的な不動産売買の流れで、よくあることです。

 

が、決済日が延期になることによって、
銀行融資の際の利率が変わってしまうことがあります

売買代金から抵当権の抹消をする予定だったとしたら、弁済日付が延期になることによって、弁済金の再計算が必要になることもあります

 

けっこう、想定外のことが多くあり、結果として、上記費用等に対しても損害賠償とか慰謝料として売買代金の減額を請求したりされたりということになります。

 

ま、権利証を忘れた、とか、家に帰ればある というようなものは当事者の都合さえ合えば数日中に再度の決済ができるわけなので、損害賠償請求という事態まではならないと思いますが、

住所変更の書類がそろわない、印鑑証明書を再登録するに際して顔写真付きの証明書がない、などで1、2週間以上かかってしまうことはあります。

 

延期であれば、再度参集して決済をすすめるわけですが。

 

○延期ではなくて取引中止のこともある

 

司法書士には、書類を確認する以外に
次のような確認義務があります

  • 本人であることの確認 本人確認書類に書かれた人と面前の人が同一であるのかさらに、登記された人と同一であるのか
  • モノ どの不動産の取引なのか の確認
  • 意思 売るのか貸すのか上げるのか等 の確認
  • 犯罪による収益移転法による確認

 

最低でも以上の確認ができないと残念ですが
取引中止または無期限の延期とせざるを得ません。

 

これを、決済を流す、とか流れる、とか言いますが。
けっこうビジネス的には厳しい状況です

 

過去24年あまりの司法書士人生で、決済が流れたことは数度あります。

買主の急病。
売主の急死。

これ以外の理由で流れたことは、なかったような気がします。

司法書士がその判断で決済を流すのは
たぶん、
売り主買い主双方及び仲介業者さんから
非常に恨まれるので、
かなりの覚悟と勇気が必要だと思います
しかし、そうなったら仕方がありません

取引の安全のために必要な処置だと
ご理解ください

 

どうだったのかきちんと覚えていないということは
幸いなことに、シビアな状況での決済流しはしなくてすんだ
ということなのかも知れません。ありがたいことです

 

こうして考えると、
日常ほとんど問題なくこなしている
決済の立ち会い業務ではありますが、
問題なく終了できることが
どれほど奇跡的な幸運の集大成であるのか
まさに実感します。

これまでの幸運と、お世話になった皆様方
おそらく二度と会うこともない方々
過去の決済が上首尾に終わったことに
心から感謝申し上げます