注意喚起は続くよどこまでも

注意喚起は続くよどこまでも

 

相続の登記をお引き受けしたタイミングで
これだけは、と思い、
何度も注意喚起をすることがあります

 

相続登記の際に発見されるもの

 

相続登記の際によくお見かけするのが、

 

・古い抵当権がついている

明治時代に設定された債権額15円の抵当権とか、です

 

・ローン終わってる抵当権が消えてない

早めに抹消したほうがよいです
銀行が抹消してくれると勘違いしている人多いです

 

・買戻登記がついたまま

これも、おそらく、ご自身でしたものではないので、そんなものが付けられてることを知らない(忘れている)人も多いです

 

・仮登記が抹消されていない。

仮登記をそのままにしたままで所有権の登記をすると、仮登記も自動で抹消される、と勘違いなさってる方は多いです
特に、相続でその土地を受け継いだ方は、そのあたりの経緯については、ご存じないことがほとんどです。

 

・建物が登記されていない(未登記)

課税通知の明細には搭載されているのですが、登記簿には記載されていません。課税されているにも関わらず登記がないことを不審がる方は多いですが、課税と登記は連動しているわけではないのです。登記とは関係なしに、しっかり課税はされています。

 

 

そのような本人の意に反した登記
(抵当権とか買い戻し権)がついていたり
建物が登記されていないのは、

ご本人ではなく、
先代がした(しなかった)登記であるものが多いです

自分で選択した登記であってもしばらくすると忘れてしまうことが多いのに、
ましてや、先代、先々代のした登記のことを注意喚起されてもピンと来ないのは、当たり前、でしょう。

 

さらに、これらの登記は、
いますぐに対処しないと大変なことになる
というわけではないので、

こちらとしても

  • 機会があったら、早めに手続したほうがいいですよ。
  • とっくに時効だからといって勝手に消えてくれるわけではないですよ
  • 法務局が職権で自動的に消してくれることはないですよ。

このあたりしか、言えることはないです。

 

しかし、注意喚起の必要はあるので、
相続登記をお引き受けするにあたって、または、
登記完了のタイミングでも、必ず、何度かご説明はします。

 

それというのも、相続登記完了後、
しばらく立ってからかなりの高確率で、

 

  • どうしてこの抵当権は消さなかったのか
  • 知り合いに聞いたら、仮登記が残ったままだ
    司法書士が見逃したんじゃないのか、と言われた
  • 相続登記を頼んだのに、建物の登記がされてないと役所から言われた
  • 責任とってほしい

とか。

 

まあ言いたい放題ですが、
このように好きなように言われてしまうことがあるからです。

 

相続登記の際の
こちら側の説明不足、言葉足らず、と言われれば返す言葉もありません。
ある意味、まさしくそのとおりです。
しかし、当方でも地道な努力は重ねており

 

・登記前とさらに登記後に注意喚起をし、

・その際に、資料の写しをお手渡しする等

の試みをしていました

 

近頃はこれに加えて、
上記事項についての説明を受け、資料を受領しました
という確認書をお書きいただき、それら全部コピーを再度手交するシステムとしました

 

それを見れば、

後日、何かご不審に思われた時に、

 

そういえば、

相続登記完了時に

司法書士から古い抵当権が残っているだとか
建物は登記されていないとか説明されたけど
費用がかかるし今の所必要もないから、と言って
登記をしないことにしたんだった。

 

などと

思い出していただけることになるのではないでしょうか。

 

売買をするなら

 

これが、相続登記の時点ではなくて、
これから売買をする、というタイミングであれば
話は全然違ってきます

抵当権ついたままで売買

 

抵当権ついたままでも名義は変えられると聞いたけど、やってもらえますか

というような依頼をいただくこともあります

 

○ 弁済が済んでいるのに抹消手続きだけが未了というときは、
もちろん、
抹消登記をしてから売買登記をすべきです。

実質上抵当権は消滅しているとはいっても、
所有者が代わってしまったら、手続きが面倒になる可能性があるからです。

金融機関によっては、抹消書類の再発行が必要になった際に手数料を徴収する所もあります

さらには銀行再編によって、銀行の名義も変わり、けっこう大変な手続きになることもあります。

 

また、
さらに大胆不敵な提案として
○ 弁済してなくても売買可能なのでは?
というものもあります

弁済が済んでいないとしても、一応、
所有者の名義は変えられますが、それは、
非常に危険です。

不動産登記上は可能でも、
その道を選択すべきではありません。

おそらく、銀行約款に従い、一括返済を求められるし、
または、
競売で他人のものにされる可能性さえあります。

ということは、

いま、お金を出して土地を買っても将来的に所有権を失う、
つまり、競売になったら
あなたは悪くないのに誰かに取られてしまう危険があります。

こうしたときに、お客様に対して
こちらの説明が稚拙でその危険度が十分に伝わっていないかも、という場合は、
注意喚起の問題どころではなく、
ご依頼そのものをお断りすることもあります

 

休眠抵当権はどうなの

それほどの危険度のないものとしては、たとえば、休眠抵当権などがあります。

明治時代に設定された抵当権が原因で
所有権を失うことは考えられません。

この場合は、当事者双方の納得の上で、
売買による名義変更をすることはあります

現実問題として時効消滅しているでしょうし
よって、
その抵当権に基づいて競売申し立てをされる可能性は限りなくゼロだからです。

しかし、

危険度ほぼゼロとは言っても、
抵当権が先順位で設定されたままであると、
融資をしてくれない金融機関は多いかもしれません

 

また、融資の担保にする土地上に、
登記をしてない建物(未登記建物)があったら、
そのままの状態では融資を受けることは困難でしょう。

建物の登記をするように指導!がされると思います

 

買戻権など

また、30年前に、期間が満了している買戻権は、
これは更新の制度がないので、
権利は完全に消滅しています。

しかし、

買戻権者と所有者の共同で抹消登記をしない限りはずっとついてまわるものなので、売買の前には抹消されてることが望ましいです。

 

これについては、朗報があります

令和3年不動産登記法が改正されて、契約の日から10年経過した買戻権は、所有者のみで抹消登記ができるようになりました。

残念ながらまだ施行されてはいません。間もなくです。
買戻権者に相続が発生してしまって抹消できずに困ってる方、いましばらくのご辛抱です

 

登記簿を見るのだ

 

いずれにしても、登記簿に記載された事項は厳然たる現実です

 

見ないふりをしても、自動的に消滅するものではありません。

古い抵当権や満了した買戻権が、職権で消されるようになる未来も到来する可能性はありますが、
今のところは、それほどの大胆な法改正は予定されていないようです。
近頃の大幅な世の中の変化を思えば、それらも視野に入れておいてもよさそうですが。

現在は、

ほとんどの場合、

当事者が登記を申請しない限りは、

登記事項が自動的に生成されたり、
消滅したり、
ということは

ないのです。

 

当事務所では、

当事者のご依頼による
登記申請の代理を承っております

どうぞお気軽にご相談ください