相続放棄、もう安心?

相続放棄しましたよ

これで安心?

ちがうの?

 

放棄すれば安心だったはず?

 

さて、相続放棄をした人は、最初(被相続人の死亡のとき)から相続人ではないことになるので、被相続人の持っていたプラスの財産(金銀財宝のすべて)もマイナスの財産(ゼロが数えられないくらいの莫大な借財)もすべて、相続することはできません

たとえ血がつながった親子であっても、相続関係から離脱する結果、財産的には一切関係がなくなります。

「ああ、自由だ!親の庇護からも束縛からも自由だ」というのとは少し違いますが、相続に関してはプラスもマイナスも、権利も義務もなくなります。

 

だったら被相続人の持ち物だった不動産(家や土地)とさっぱり縁が切れるのかと言ったらところがそうでもありません。

初めて知った人は必ず驚愕するものすごい法律があります

 

こんな法律が

 

民法940条 (相続の放棄をした者による管理)相続の放棄をした者はその放棄によって相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない

 

自己の財産におけるのと同一の注意というのは、それほどたいそうな注意義務ではないようです。

善良な管理者の注意義務よりは軽減されている管理義務です。

が、ひょっとして何かあったら、対応が必要になることがあるかもしれません。

つまり、放棄したから私はもう全然関係ないから絶対安心というわけにはいきません

 

相続財産管理人に頼んで管理してもらったらどおなの?

 

相続財産管理人を選任して管理を任せればよいのでは、と安易に考えるむきもあります。しかし、これは勘違い。アパートの管理人か何か、を選任するのとは訳が違います。

そもそも相続財産管理人の選任申立ができるのは、利害関係人か検察官と決められています

民法952条(相続財産の管理人の選任)

前条(相続財産法人の成立)の場合には、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって相続財産の管理人を選任しなければならない

 

よくあるのは、債権者が、被相続人の財産を処分してそこから満足を得たい(貸したお金を返してもらう)ときに、裁判所に申し立てるものです。

民法940条の回避のために選任するものではありません。

ですが、債権者であっても財産管理人の選任費用等を考えた時、その債権額と見合うだけの価値のある不動産であれば、まだしも、そうでないときは、たとえば5千万の債権額に対して、不動産を全部売却してもおそらく100万円くらいにしかならないときとか。わざわざ管理人を選任してまで、となると二の足を踏むかもしれません。

 

いずれにしても、相続放棄をすれば債務からは逃れられるので、民法940条からは逃げられなくても、原則として不動産にかかる固定資産税の納付義務からは逃れられます

 

固定資産税納付義務?

 

ご注意;放棄のタイミングによっては、固定資産税納付義務から逃れられないこともあります。

これもビックリですが、放棄が受理されても課税台帳に登録されてしまったあとだと、納税義務は逃れられないという判例があります

しかし、それもまた市町村によって異なるらしく、課税台帳登録後であっても放棄することで納税義務が免除されることもあるようです

 

 

民法940条を理由に多額の債務にも関わらず相続放棄をためらう、というケースは非常に稀ではないかと思います。が放棄さえすればあとは全く関係ナシ、とばかりはいかないことをお忘れなく。

 

相続放棄の仕方

 

相続放棄は基本、

・被相続人が死亡したことを知ってから
3ヶ月以内に申し立てる必要があります

・申立て先は、
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です

・ちなみに、郵送でも可能です

・その際に申立書の他に
戸籍や住民票などが必要になります

その準備を考えると一日でも早く取り掛かる必要があります

ご自身で収集するのも時間がかかりますが、そうだ司法書士に依頼しよう、と司法書士に依頼しても、そんなに簡単に必要な書類が揃うわけではないことをお忘れなく。

遠方の戸籍等を取得するときは、そこまで出向くわけではなく郵送で取り寄せるので、時間がかかります 取り寄せた戸籍の記載事項を参照して、また次の戸籍を取寄せるという作業を続けていると、あっと言う間に1ヶ月2ヶ月は経過してしまうものなのです

出張してもいいですが、

戸籍の取得のための出張料を請求するのは心苦しいものがあります。
それでも、期限があさって、というような場合は、仕方ないかもしれないです。やりますよ。

 

追完(ついかん)

 

が、一度裁判所の手続きを経験した方はおわかりだと思いますが、申し出の際に全部の書類がそろってなくても受け付けてもらえることをご存知でしょうか

追完(ついかん)と言います。

最初からそのつもりで不足のあるまま書類提出をするのではなく、窓口で見てもらったら「あらまあ、あの分の戸籍が足りません」というときに、「あとで追完してください」と言われるのです。

申立はそれでも受け付けてもらえます

 

相続放棄をお考えの方は、どうぞ
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