相続放棄をした(はず)

相続放棄をした(はず)

 

相続放棄をした、と言っても実は
必ずしもそうでないことがあるので
ご注意ください。

単純に
用語、コトバの問題なので
本人(Aさんとします)に
悪意があるわけではないでしょうが

 

正式な相続放棄
(家庭裁判所での手続き)が
されていない場合は

Aさんは放棄をしたつもりでいても
相続人の一人であるままです

相続人としての権利も義務も
引き続き有しています

 

相続分の放棄・相続分の譲渡

 

実際に本人Aさんは
すっかり相続放棄をしたと信じており

もはや本件相続手続きには、まったく
関係なし、と思っています

ところが。

 

実際は、相続放棄をしたのではなく
ただ相続人間で
遺産分割協議をしただけだった
ということがままあります

遺産分割協議等をして、その結果
Aさんは、遺産を何ももらわない
という選択をしました。

この状態から見ると
財産を相続していないので
放棄したようなものなのですが、これは
単に
相続分の譲渡または
相続分の放棄
をしたに過ぎません

 

または、単独で
相続分の譲渡証明書(印鑑証明書付き)
相続分の放棄証明書(印鑑証明書付き)
を作成しただけ、ということもあります

 

本当にしばしば勘違いしがちですが

相続分の譲渡または
相続分の放棄をしたということは

積極財産
(預貯金・不動産・株など)を
何も相続しないということです

ですが
「相続放棄」をしたわけではないので
マイナス財産を相続しないということでは
ありません

相続分の譲渡または
相続分の放棄をしただけでは

相続人の負の遺産(債務・借金など)の
相続人であることに変わりはないです

 

被相続人が債務を遺していたら
その返済義務は
相続人に引き継がれることになります

 

相続発生後、半年くらいしてから
債権者から相続人全員に対して
請求書が送付されてくることは
よくあります

 

このときに
本当に裁判所で相続放棄をしてあれば

その証明書を提出すれば
義務を逃れることができますが

その証明書が提出できないと
弁済義務を負うことになるわけです

 

ちなみに、相続の放棄は
相続人の死亡を知った日から
3か月以内ですが

この3か月という期間は
裁判官がその事情を認めれば
伸ばしてもらうことができます

実際に相続開始後10年くらいたってからの債権者からの請求に対して相続放棄の申述をして受理されたことが何度かあります

 

相続放棄

 

相続放棄というのは

裁判所(被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所)
その旨の意思を申述することによって
なされます。

 

そうすると
放棄が受理されたことの証明を
出してもらえるので
その証明書を相続放棄したことの
(あかし)として
相続手続きの中で使っていくことになります

 

なので
相続放棄者がいるときの相続登記の申請には

家裁から発行された
相続放棄申述受理証明書を
添付することになります

 

相続放棄をしたのなら

 

遠い縁続きの人が相続人となった場合
その方との関係が
あまり良好なものでなかったときなど

「そちらとは関わり合いになりたくないから間違いなく相続放棄をしてあるが協力する気はないからあとはそっちでいいようにやってくれ」

いうようなハナシになっていることが
あります

せめて、放棄受理時の年度番号だけでも
教えてもらえると
手続きがぐんとラクになるのですが
教えてもらえないものはしょうがないです
自分で調査して取り寄せる他ありません

 

相続放棄申述受理証明書の取得

 

相続の登記等には
この相続放棄申述受理証明書が必要なので
まずはこれを取得するのですが

申請するにあたって
相続放棄の受付年度と番号がわからないと
申請できません

まず
放棄をしているのかどうか

しているのであれば
放棄年度と事件番号を
調査する必要があります

本人が放棄した、と主張していても
実はそうでないこともあります

そのあたりがわかってようやく
相続放棄申述受理証明書の申請を
することになります

申請できるのは
放棄をした本人、または相続人
利害関係人です

 

相続放棄そのあとに

 

相続登記をするにあたって
相続放棄をした人がいると
相続人の人数が減るので
遺産分割協議をするにもラクなのですが

 

ところで、3人いる相続人のうち
2人が相続放棄をしていれば
自動的に残りの一人が相続人です

と思いきや、ところがどっこい
そうでないことがあります。
ここは勘違いしやすいので要注意です

 

妻と子ども2人が相続人だった場合

子どもが2人とも放棄してしまったら
第1順位の相続人がいなくなるので

第2順位の相続人である尊属
~両親や祖父母~に
相続権が移ります

その方たちがすでに亡くなっていたら

第3順位である兄弟姉妹に
相続権が移ります

 

ここを間違えて

お母さんだけに相続させようとして
子ども全員が放棄してしまった事例が
あります

行き来のなかったお父さんの兄弟たちに
頭を下げなければならなくなりました

 

被相続人に兄弟姉妹がいなければ
妻一人が相続人となれますが

被相続人に兄弟姉妹がいれば
子どもが全員相続放棄したことによって
その兄弟姉妹にも
相続権の4分の1がいくことになり

遺産分割協議をするときは
この兄弟姉妹全員の同意も必要です

 

もしも妻一人が財産を取得するように
したかったのであれば

A 子ども二人が相続放棄するのでなく
遺産分割協議をして、妻がすべてを相続する
というようにしておくとよかったかも
しれません

または

B 子ども一人だけが放棄して
一人は相続人として残しておくとか
そうすれば、妻と子ども一人で
遺産分割協議ができたことでしょう

 

被相続人の兄弟姉妹と良好な関係が
築けていればよいですが

そうでもなかったり
連絡の取れない人がいたり
果ては亡くなってしまいその子どもが
行方不明だったり収監中だったりしたら

道のりは長いことになります
(方法はあるので、司法書士にご相談ください)

 

相続人が子ども3人だけのときは
2人が相続放棄すれば、自動的に
残りの1人が相続人になるので

遺産分割協議をする必要なしで
被相続人のすべての財産
(プラスの財産もマイナスの財産もすべて)
相続することになります

 

おまとめ

 

相続放棄のご相談は
どうぞお気軽にご連絡ください

 

原則として、相続人の死亡を知ってから
3か月以内に手続きが必要です

 

(相続の承認または放棄をすべき期間)
民法第915条
相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続について単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない

ただし、この期間は、利害関係人または検察官の請求によって家庭裁判所において伸長することができる 

 

自己のために相続の開始があったことを
知った時とは

相続人が被相続人が死亡したことを知り
かつそのために自分が
相続人となったことを知った時を指します
(判例)

 

つまり、たとえば

遠縁のおじさんが亡くなったことは
知っていたが
自分の本当の父親だとは知らなかった場合

数年してから、戸籍をみて
自分が養子に来た身であって
その遠縁のおじさんが実父だったことを
知ったその時が
「自己のために相続の開始があったことを知った時」に該当します

 

相続放棄のご相談は
どうぞお気軽にご連絡ください