知らない間に代表取締役にされていた!?

知らない間に代表取締役にされていた!?

 

このようなことを耳にすることがあります

 

どうしてこんなことが起こるのか

司法書士が関わる登記であれば、必ず
本人の意思確認をします。
なので、
これは、基本的に起こりえない
事態ではあるのですが。

ですが、

本人(会社)申請等で、
司法書士を介在させないで登記を出すと
書類に不備さえなければ
それで通ってしまいます
登記所には書面審査権しかないためです。

つまり、

形式的に書類がそろってさえいれば、
就任承諾書が真正なものであるか、
などということは審査の対象外です。

対象外というか、
書面に実印が押されていればその書類は
真正に作成されたものである、
という判断がされます。

もっとも、多くの場合は、
自分のところの登記を
自分で申請するわけなので、
登記用の書類が真正に成立したもので
あるのは大前提というか当たり前ですが。

 

でも、たまに、
この登記のシステム(書面審査のみ)
を逆手にとって、

知らない間に代表取締役にされていたり、
ハンコを押した覚えもないのに
辞任させられていたり、
とかく役員の就任退任辞任に関しては
スリリングなことが想像以上にあります。

 

一体どんな書類で登記できたのか

代表取締役が新しく就任する場合

  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録
  • 代表取締役の就任承諾書
  • 印鑑証明書

等が必要です。
会社の形態によって多少の差異があります

 

どうしてこんなことに

知らない間に代表取締役に
なっていたというかされていた方は

本当にその事実がないのであれば、

まず、

印鑑証明書を不正に取得されてしまって
いるわけです。

さらに、

就任承諾書が偽造されています。

 

本人の同意のないままに
株主総会が開催されて
就任承諾した覚えのない登記の
申請行為までもされてしまったわけです

登記の申請は代表取締役から
されるものです。

 

そんなことが許されるのか

 

りっぱに刑法上の罪にあたります。

他人を勝手に
代表取締役に選任して就任させ、
その登記をする行為は、

少なくとも

私文書の偽造
刑法159条 
3ヶ月以上5年以下の懲役
公正証書原本不実記載等罪
刑法157条 
5年以下の懲役または50万円以下の罰金

に該当します。

会社を刑事告訴することが出来るということです。

それらの罪を侵さずには、
本人の知らない間に
代表取締役の登記をすることが
不可能だからです。

 

どうしたらよいのか。

そんな刑事告訴するまでもない
(大人げないから)
代表の登記を抹消してくれればいい
(おおごとにしたくないから)
とお思いのあなた!

あ・ぶ・な・い・です

 

一番手っ取り早く正確で
あとの心配がないのは、

弁護士に頼んで会社を相手取り
就任が無効であるという確認訴訟を
起こしてしまうことです。

これが最強です。

次の策としては、

会社に依頼して、
登記事項の不存在による
就任登記の抹消登記

してもらうことです

 

一番怖いのは

勝手に代表取締役にされているのに気づいて
それをそのまま放っておくと、
追認した、とみなされかねません!
追認とは、あとからそれを
正しいものと認めるということです

そうしてさらに、

代表取締役としての就任期間内に、
会社が違法行為をしていたとしたら
その責任を問われます。
(多額の損害賠償義務を負わされるとか)

これが一番怖いです。

この意味でも、
就任が無効であるという確認の訴え
を起こしておくことは最強です

 

辞任すればよいのでは?

また単純に、
辞任すればよし、と考えるのは
最悪の選択です。

たしかに何事も無ければ一番ラクなのは
辞任することなのですが。

ただ、

これが何事もないかどうかは、
しばらくたってからでないと
わからないものなので、
大きな賭けとなります

 

また、辞めたいなら
辞任届を郵送すればOKですか、
とも聞かれたことがありますが、

幾つかの理由からとんでもない選択です

1辞任するというのは、
そもそも就任していた事実を
認めるということです。

2これは、就任の事実を
追認したようなものです

3仮にどうしてもその方法しか
とれないとしても
(弁護士を頼むほどでもないし告訴というような大げさなことをしたくないと思ったなど)
辞任届を会社に送るだけでよいのでは?
とお考えのあなた!

登記は誰かが
申請しなければなされないものです。
(例外はありますが)

会社に辞任届が到達したとして、
それを登記所に登記申請しなければ
その登記がされることはありません。

ついでにいうと、

代表取締役の辞任登記をするためには
基本、新しい代表取締役の就任登記と
併せてしないと
受け付けてもらえません。

単純に辞任の登記だけをする、
というのは実務的にありえません。

そもそも、偽りの就任登記を勝手に
やってしまうような人が、
大人しく言うことを聞いて
辞任の登記に同意してくれる可能性は
どのくらいでしょうか。
簡単に辞任させてくれるくらいなら、
そもそも勝手に
人の名前を使うことはないでしょうし。

また、たとえば、

管轄の法務局に辞任届を送りつけても、
辞任の登記はされません。

都市伝説に惑わされないように。

4さらに怖いのは、
辞任したからこれで一安心、と
思っているうちに
どんどん時間が過ぎていき、さらに
取り返しの付かない事態になる可能性が
増していくことです

全然 大丈夫ところではありません。

責任を問われるとは?

就任期間中の会社の不法行為については、
代表取締役は当然に責任を負います。
しかし、
このように、
勝手に代表取締役にされていたときは、
この責任は回避できます。

 

ただし、

知らない間に就任したことになっていた
という証明が、おそらく非常に困難
なのです

場合によっては
印鑑証明書も実印も
忘れていただけで本人が自ら
提供していたということもあります

そうなると、

就任の承諾をしていないことの証明
非常に難しいです。

さらにその不実の登記を知りながら
放置していた(外形的に)となると
追認したようなもの

せめて直ちに内容証明書などで
代表取締役に就任した事実のないこと等
通告しておくべきです

 

忘れていることもあり

多くの場合は、印鑑証明書を知人に
交付したことを忘れていることが
そもそもの発端だったり、します。

就任承諾書を偽造というか、
「ちょっとここに実印押して形だけだから。ちょっとだけ名前貸しといて。すぐに他の人に変えるから。印鑑証明書もいいかな取ってもらって。大丈夫形式的なものだから法律的にどうこういうもんじゃないから。信用してもらってOKだよ。」
という感じ(かどうかは不明ですが)
だったのではないでしょうか。

 

自分で作成することの多い、
就任承諾書や株主総会議事録を
部分的に改ざんするのは、
易しいというか、
心理的にハードルが低いのでは
ないでしょうか。

その人のふりをして
他人の印鑑証明書の交付を
受けることに比べれば。

印鑑証明書を取得するには、
印鑑を登録する必要がありますが、
このためには、
本人であることの証明書の提供が
求められるからです。
となると
免許証やパスポートの偽造から
始めることになるので、
どう考えても大変なことでは
ないでしょうか。

では、どうするか

ご自分の名前が代表取締役として
登記されているのを発見したら、
まずは、
弁護士に相談してください。

すでに、悪用されてしまっているかも
しれませんが、
善は急げで。

一刻も早い善後策を講じることを
強くおすすめします。